15.襲撃
改稿しました(2021年8月4日)
スタンピードの殲滅が終わり、家に戻ると、店前に三人の人影があった。
「誰?」
咲が、声を低くし、刀に手を添えて問いかける。
「わ、私達だよ」
「あ、怪しくないです」
人影の内、小さい二人は、万里と恵里だった。咲の声に、二人は完全に怯えてしまっている。
「咲、二人が怯えているぞ」
大きな人影が口を開いた。大きな人影は、この前爆弾を注文していた重吉だった。
「里中さん、こんな夜分にどうしたんですか?」
咲は、警戒を解かなかった。先程の男達の一件があったためだ。こういう時、香織は全くと言ってもいいほど警戒をしない。知り合いだから大丈夫と判断しているのだろう。なので、こういう時は咲が警戒をするのだ。
「スタンピードの時、若い男達に絡まれていただろう」
「見ていたんですか?」
香織が、重吉に聞き返す。
「遠目にだったがな。あいつらは、いい噂を聞かない。男尊女卑が激しくてな。一時は強姦などを行っていたとも言う。お前達が、標的となっている可能性があると思ってな」
重吉は、香織達を心配してきてくれたようだ。万里達も同じような理由で来たらしく、首を縦に振っている。
「なるほど、でも大丈夫ですよ。何かあれば、返り討ちにするので」
「そこが心配なんだ。あいつらは、国の上層部の馬鹿息子達なんだ。あいつらに何かしたら国が出張ってくるぞ」
香織達に絡んできたのは、国の上層部という上流階級と呼ばれる者の家族だった。今の国のトップは、ギルドへの出資の多さで決まっている。何でそうなったのかは、その人達しか知らないことだ。
「国が相手でも構わないけど」
香織は、そんな事を言った。香織は、冗談でそんな事を言っているわけではなかった。香織と咲なら、国が相手でも十分に戦える。むしろ、国の方が危ないとも言える。
「指名手配になってしまうぞ。まぁ、俺の用事はこれだけだ。とにかく気をつけてくれ」
「分かりました。ご忠告ありがとうございます」
咲が礼を言うと、重吉は、帰っていった。
「それで、万里と恵里はどうしたの?」
さっきまでのピリピリした咲ではなく、いつもの咲に戻って、万里と恵里に声をかけた。
「は、はい、あのお二人が心配だったので、来てみたのですが……」
「全くの杞憂だった!」
恵里と万里が答えると、香織達は互いに見合わせて笑った。
「私達を誰だと思ってるの、あんなのに負けないよ」
「そうね。そこまで信用されてないと、ちょっと悲しいわね」
二人は、万里と恵里をからかってみると、慌てだしたので思わず吹き出してしまった。
「冗談だよ。ありがとう二人とも。ところで、まだ時間ある? 少しの中に入って話そう」
香織は笑顔でそう言った。
「は、はい」
香織は、二人を家の中に入れる。咲は、最後尾で家の外を睨みつけてから中に入った。咲が睨んだ先には、いくつかの人影があった。
「……なんだ、あいつこっちを見ていたのか?」
「そんな馬鹿な、あそこからここまで二キロあるんだぞ」
「だが、相手は狂剣士だろ、その可能性はあるぞ」
「まったく、こんな寿命が縮む仕事はこりごりだぞ」
「だが、あの馬鹿どもは金の羽振りだけはいいからな」
「おい、中に入ったんだ。仕事を開始するぞ」
人影が動き出した香織達の家に向かって……
家の中に入った香織は、二人を奥まで連れて行く。
「ねぇ、どうしたの?」
万里が不安そうな顔で香織を見る
「ちょっとね。咲、どう思う?」
「多分、こっちに来るわ。絶縁結界があるから大丈夫かもだけど、攻撃をしてくるかもね」
香織と咲の会話に、万里と恵里は顔を強張らせる。
「攻撃?」
恵里は、思わず口に出てしまった。
「ごめんね。巻き込んで、多分あの男達が、雇ったんだと思うんだけど、こっちを見ている視線があってね。敵意があったから、絶縁結界で防げるんだけど。このまま二人を帰したら、二人が危険な目に合う可能性があるんだ。だから、中に入ってもらったの」
と香織が言い終わるや否や轟音が響いた。
ドォォンッ!!!!
ダァンッ!!!!
家の外からの音だ。
「「きゃああ!」」
万里と恵里は互いに抱き合って叫ぶ。
「やっぱり来たわね。絶縁結界は?」
「問題ないよ。きちんと防いでる」
魔法攻撃による轟音はなおも続く。
「嫌がらせがメインかな?」
「あり得るわね」
ずっと続く轟音に万里と恵里が慣れた頃、外から叫び声が聞こえた。
「お…、怖じ気…たの……。さっさと…出て……い」
こっちは家にいるので、途切れ途切れでしか聞こえなかったが。
「風魔法で声を大きく出来るのを知らないのかしら」
「里中さんも馬鹿だって言っていたし、そうなんじゃない?」
そのまま、去って行くまで待つことにした。なおも叫び声は聞こえるが、拡声しようとしないので本当に知らないのだろう。
無視を続けると、再び轟音が鳴り響いた。
「はぁ、本当に迷惑だわ」
「二人とも、今日は家に泊まって」
「「はい」」
「まぁ、寝れるとは、限らないけど」
轟音はなおも続く。鳴り止んだと思ったら、今度は叫び声だ。その繰り返しが一時間も続いた。
「まだ、やるの?」
「元気ね」
二人は、完全に呆れ顔だ。
「何で二人ともそんなに冷静なの……」
「修羅場をくぐり抜けてきたかも」
そんな二人の様子を、万里と恵里は苦笑いで見ていた。嫌がらせが二時間に到達する時に、それは起きた。
ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!
魔法による轟音や叫び声とは違う音だった。
「香織! これって!」
「うん、これドラゴンだ」
さすがの香織達が青ざめていた。香織達は、ダンジョン内で会った黒龍の姿が脳裏に過ぎった。黒龍の咆哮を聞いたことは無いが、赤い龍のものは、テレビでの音声を聞いた事がある。その声と酷似してた。
「黒龍じゃないと思うわ。あれは、ダンジョンからは出てこれないと思うもの」
「そうかも。だったら、あの赤い龍かな」
ドラゴンの姿は遠目になら見ることがある。遠くの空を飛んでいるのだ。しかし、人間を襲っているところはあまり見ない。ドラゴンが人を襲うのは空を飛ぼうとしているのを見つけたときだけだった。
「でも、なんでドラゴンがこんなところに?」
そんな事を言っていると、外からたくさんの悲鳴が聞こえて来た。
「ぎゃあああああ!!」
「た、助けてくれえええええ!」
「死にたくないっ!」
「嫌だ!!!!」
香織は万里と恵里に耳栓を渡す。
「これを付けてて、私達は行ってくる」
咲は。自分の刀の調子を見ている。万里と恵里は涙目になって香織にすがりつく。
「危ないですよ!」
「そうだよ! ここにいた方がいいよ!」
二人は、香織達が危険なところに行こうとしているのを止めたいらしい。
「確かに、ここにいた方が安全だよ。でも、私達が行かないと戦力が不足しているかもしれない。いや、こんな時に謙遜なんかしてられない。私達が行かなきゃ、ドラゴンは止められない。だから行ってくるね」
「二人はここにいなさい。耳栓は付けておいて。聞かない方がいいこともあるのよ」
香織達は、そう言うと外に駆けだした。そして、万が一にも、二人が出てこないように内側から出られない結界を張る。
「咲! ドラゴンは!?」
「あっちね! でも、あの方向って……」
「ギルド本部!」
ドラゴンが向かった先は、ギルドの本部がある場所だった。そして、そこは今の国の上層部が集まる場所でもあった。
二人が本部に向かうと、冒険者や奪還者がドラゴンと戦っているところだった。
「香織、どう?」
「うん、まだ、私達でも倒せる強さかな。ギリギリだけど……」
ドラゴンの名前は赤龍ロッサ・ラギトアという名前だった。強さは、咲と同じか少し上くらいだ。
「じゃあ、行くわよ!」
「うん」
香織と咲は互いに得物を構えて、走り出そうとすると、
「待ちやがれ!」
止められた。二人が声のした方を見ると、この前の男達がいた。
「獲物を奪おうたってそうはいかないぞ!」
「そこから動くんじゃねえ! てめぇらみたいな雑魚なんていらねえんだよ!」
そう言うと、香織達に魔法で攻撃してきた。その攻撃を咲が刀で切り裂くと男達は狼狽た。
「剣で魔法を斬っただと……、意味がわからん! あいつらをギルドに近づけちゃダメだ! きっと、あのドラゴンもこいつらがけしかけたんだ!」
そんな事を言いながら、男達は武器を構えた。
「そんな事をしてる場合じゃないでしょ……」
咲は小声で言う。ちらりと香織の方を見ると、咲は背筋に寒気が走った。香織は咲が見たことが無いような冷めた眼をしていた。
「馬鹿なの? あんた達がこんな事をしているから、今、沢山の人が亡くなっているよ」
「うるせぇ! てめぇ達が死ねば全部終わりだろうが!」
「どう考えたらそうなるの? 頭大丈夫?」
香織は、話しながら武器を剣から鞭に持ち替えた。
「お前ら! やっちまえ!」
男達は、香織に襲いかかる。
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