1.何これ?(2)
改稿しました。(2021年7月28日)
朝、香織は、いつも通り六時に起きてシャワーを浴びる。その際に、洗濯機も回すのも忘れない。
そして、今日はゴミ出しの日なので、ゴミをまとめて収集場に持っていこうと玄関まで行く。すると、三和土に宝箱があった。ゲームなどで、よく見る木で出来た宝箱だ。昨日までは、無かったものだ。
「…………」
香織は、取り敢えず、それを無視して、収集場にゴミを出しに行くために、玄関を開ける。すると……
「草木が生い茂ってる。……なんで?」
隣の家の草木が伸びている。それだけでなく道路のアスファルトすら突き破って、出てきている草木などもあった。三和土にある宝箱と同じで、昨日までは、そんな事になっていなかった。
香織は少し呆けながらも、収集場にゴミを置き、網を被せ、家に帰る。家に帰ると、やっぱり三和土に宝箱がある。
「思考回路がショートしそう。何? どうなってるの? 鍵は閉まってたから、いたずらではないだろうし、そもそも、外の様子が変なのがよく分からない……」
香織は、うんうん唸りながら、考え込む。いきなり、色々な事があり、状況に追いつけていないのだ。
「誰かが、栄養剤でも撒いたのかな。でも、こっちは、本当によく分からないよね。中を確認してみよう」
香織は、少し落ち着いた後、玄関で開けると、何かあったときに危ないかもしれないと思い、外に持ち出そうとする。しかし、宝箱は、見た目通り、重いので持ち上がらない。
「はぁ、ここで開けよう」
観念して玄関で開ける事にした。恐る恐る宝箱を開けると、中には十冊以上もある本と長めの棒、一枚の紙が入っていた。よくみると宝箱の体積と中に入っているものの量が合わない。
「何これ……? 色々とおかしいでしょ……」
確認しないと、何も分からないので、まず、一番上に置かれている紙を拾い上げ、何が書いてあるのか見てみようとする。すると、文字が見えた瞬間、紙が燃え尽きた。
「えっ? 痛っ!」
頭の中にさっき見た紙の内容が流れ込んできた。その際に、頭に鋭い痛みが走る。
「錬…金…術師?」
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錬金術師 Lv1
HP:1000/1000 MP10000/10000
STR:100 DEF:100 SPD:150 DEX:500 INT:300 MND:100 LCK:1000
スキル:『錬金術Lv10』『刻印魔法Lv10』『魔法式理解Lv10』『魔法言語理解Lv10』『全属性Lv10』『魔力操作Lv10』『無詠唱Lv10』『超集中Lv10』『アイテムボックスLv10』『棒術Lv10』『剣術Lv10』『鞭術Lv10』『嘘看破Lv10』『鑑定眼Lv10』『発見術Lv10』『記憶容量増加Lv10』『教本生成Lv10』『不老不死』『再生』
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頭の中にある内容は、こんな感じになっていた。
「何これ……不老不死ってなに? 私は死ななくなっちゃったの!? それに、錬金術? 科学文明が栄えたこの世界に錬金術なんて役に立つの? 金を錬成したって、色々な罪に問われるでしょ!?」
香織が、色々と混乱しているとメールが届いた。
「こんな変な状況でも、電波とかは届くんだ。えっと、今日は休校か、そりゃこんな状況じゃそうか。安全が分かったら、行くのかな? それとも、状況を整理出来たらかな? まぁ、そんな事いいや。今は、このステータスみたいなのを解決しないと……」
香織は、なんとなく、アイテムボックスを使ってみた。適当に使おうと思ってみると、宝箱が消えた。
「わっ!? えっと……これで収納できたのかな?」
と考えていると、頭の中にアイテムボックスに入っている物の一覧が出てきた。一覧にあるのは、本、棒、鞭だった。
「鞭なんて入ってたっけ? 本に埋もれてたのかな? そういえば、私のスキル? に鞭術があったけ? 鞭なんて使ったことないのになんでだろう?」
更なる疑問が増えた。しかし、それを解決する方法は、今のところ存在しない。
「まぁ、いいや。取りあえず、テレビを見てみよ。他にも何か情報があるかもしれないし」
リビングに行き、テレビを点ける。こんな状況下でも、問題なく点いた。
「シャワーも出るし、テレビも映る。色々おかしいけど、今まで通りに生活出来るのかな?」
そんな疑問を思いつつ、テレビを見る。テレビのニュースは、街が草木で覆われた現象についてやっている。
『――ただ今、街は、突如生えてきた植物に覆われています。電気などライフラインは、ほとんどが生きていますが、一部地域では停電などが起こっております。復旧の目処は立っていません。さらに――』
魔法についての言及は、その後もなかった。
「みんなは魔法が使えないのかな? それとも、まだ発覚してないのかも?」
香織のスキルには、魔法に関するものが多々あった。だが、ニュースでは、魔法に関することは一切報道されていない。そうとなれば、まだ、魔法については知られていないと考えるのが普通だろう。
「アイテムボックスが使えるわけだし、スキルは本物のはず……情報が入るまでは、自力でどうにか調べようかな」
香織は、ソファの背もたれに寄りかかる。
「まぁ、今日は学校もないし、さっきの本でも読んでみよう」
宝箱に入っていた本を、全部取り出すと大体100冊程あった。
「多過ぎ……う~んと……あっ! これ錬金術についてだ」
香織は、本の山から一冊の本を手に取る。そこには、日本語でも英語でもどこの言語でもない言語が書かれていた。
「なんで読めるんだろう? そういえば、スキルの中に魔法言語理解ってあったっけ? じゃあ、これが魔法言語って事なのかな?」
本を開くと中も、同じ言語で埋め尽くされていた。
「まぁ、読めるからいいか」
錬金術についての本を読むと、その中身は教科書のような感じだった。
錬金術は、基本的に複数の材料を混ぜ合わせて、何かを作る術のようだ。材料が完全に固定されているものもあれば、ジャンルが合っていれば出来るものもある。ジャンルで作る方は使う材料によって、細かな効果が異なるらしい。
そして、錬金術を使うには釜が必要とのことだ。
「釜は小さくてもいいけど、大きくないと作れないものもあるんだ。そんな大きな釜うちにはないな」
錬金釜には特殊な細工が必要となる。
この細工には、刻印魔法というものをを使うらしい。刻印の模様? は書いてあるが、刻印の方法は載っていなかった。
「錬金術についての本だから、刻印魔法については、載ってないのかな。じゃあ、刻印魔法についての本を探してみればいいか」
香織が、本の山を見てみると、刻印魔法についての本も見つけた。
「あった、あった。これを読んだら、分かるはず」
刻印魔法の本も同じ言語だったので、問題なく読める。
「ふむふむ、やり方はわかった。後は、この模様の理解か」
香織が、模様をよく見ると、何故か、それが魔法式であることがわかった。これは、香織の持つスキルの一つである魔法式理解の効果だった。
「これを理解するのに、今度は、魔法式についての本が必要なんだ。面倒くさいなぁ」
魔法式についての本がないか探すと、すぐに見つかった。 魔法式は魔法言語の単語を線で繋いで作る物のようだ。魔法を使う時は、これを描かなければならない。
例えば、『火』、『矢』、『一』、『前方』、『射出』を繋ぐと『火の矢を一本生成し、前方へ射出する魔法』を使うことができる。
そして、この魔法式は円の形に整えないといけない。これは、力の循環を表しているらしい。
「魔法式を施すことで錬金釜にできるんだ。家の小鍋でも出来るっぽい」
香織は、あまり使っていない小鍋を錬金釜にしてみることにした。さっそく用意しようとすると、点けていたテレビから、ピコンっと音が鳴った。
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