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14.スタンピード

改稿しました(2021年8月3日)

 香織は、久しぶりに帰ってきた咲と一緒に、朝ご飯を食べていた。


「そういえば、静岡の近くまで行く途中でリヴァイアサンを見たわよ」

「えっ? あそこって回遊コースだったかな」


 二年間で分かった事だが、リヴァイアサンは、一定のルートを泳いで廻っているらしい。大体東京湾から、東日本を沿って泳いでいて静岡などでは目撃されないはずだった。


「姿を見せなかっただけで、コース内だったのか。それとも、事情があって変えたのか。どっちだろう?」

「前者の可能性が高いと思うわ。あのリヴァイアサンがルートを変える何かがあるなんて考えたくもないわ」


 そう言って、咲は首を振る。世界屈指の強さを手に入れてもリヴァイアサンの怖さは抜けなかった。結局、黒龍も倒すことは出来ていないので、まだまだ強くなり続けなくてはいけないのだ。


「そういえば、あのカッパは加工できたの? 撥水剤だったかしら、名前だけ聞くとかなり便利だと思うのだけど」

「ほとんど出来たよ。本格的な加工も進めていくところ。まだ、ただの防水布にしかなっていないしね」


 香織と咲が、話をしながら、食事を続けていると、サイレンが聞こえてきた。


「咲、これって……」

「ええ、スタンピードね。どこのダンジョンかしら」

「準備するよ」

「ええ」


 近くのダンジョンでスタンピードが起きた。スタンピードとは、ダンジョン内で現れるモンスターが溢れかえり、ダンジョン外へと出てくる現象を指す。二年前にもダンジョンが初めて出来たときに起こった。


 このスタンピードを知らせるサイレンは、魔力で動く魔道具だ。誰かが、魔力を流すことで、辺りにサイレンを響き渡らせることが出来る。


「香織、準備は出来た?」

「うん、大丈夫」

「じゃあ行くわよ」

「うん」


 香織達は、サイレンが鳴った場所まで急いだ。サイレンが鳴ったのは、香織の家から十分ほどの距離だった。香織達のスピードでだが……


 香織達の強さは以下の通りだ。


 ――――――――――――――――――――――――


 錬金術師 Lv86


 HP:760000/760000 MP:8700000/8700000


 STR:8200 DEF:6900 SPD:9800 DEX:93400 INT:73700 MND:7800 LCK:1000


 スキル:『錬金術Lv10』『刻印魔法Lv10』『魔法式理解Lv10』『魔法言語理解Lv10』『全属性Lv10』『魔力操作Lv10』『無詠唱Lv10』『超集中Lv10』『アイテムボックスLv10』『棒術Lv10』『剣術Lv10』『鞭術Lv10』『嘘看破Lv10』『鑑定眼Lv10』『発見術Lv10』『記憶容量増加Lv10』『教本生成Lv10』『器用さ上昇Lv10』『身体能力強化Lv10』『五感強化Lv10』『威圧Lv10』『鍛冶Lv10』『付与魔法Lv10』『限界突破』『不老不死』『再生』『精神耐性』『環境適応』


 魔剣士 Lv98


 HP:1160000/1160000 MP:86000/86000


 STR:97900 DEF:77800 SPD:78200 DEX:9780 INT:10960 MND:13400 LCK:100


 スキル:『剣術Lv10』『魔剣術Lv10』『魔法言語理解Lv10』『火魔法Lv10』『水魔法Lv10』『風魔法Lv10』『魔法式理解Lv10』『恐怖耐性Lv10』『身体能力強化Lv10』『五感強化Lv10』『腕力上昇Lv10』『走力強化Lv10』『鑑定Lv10』『未来予測Lv10』『軽業Lv10』『弱点看破Lv10』『刀術Lv10』『抜刀術Lv10』『威圧Lv10』『鬼神化』『環境適応』『再生』『限界突破』


 ――――――――――――――――――――――――


 様々な敵と戦いレベルが上がった結果、ステータスが異常なまでに伸びた。これは、限界突破により人間の限界を超えた事が関係している。さらに、環境適応というどんな場所でもいつもと変わらず行動できるスキルも手に入れた。極端に言えば、深海でも宇宙空間でも地上と変わらず行動できるというものである。そのほかにも様々な能力を得ている。

 この他に、武器も新調している。香織は、剣と鞭、棒をアイテムボックスに入れている。全て、香織の手作りである。

 咲は、香織に作ってもらった刀を装備している。これにも香織が能力を付与してある。



 香織達が、サイレンの鳴った場所に着いたときには、多くの人が集まっていた。


「結構、人がいるね」

「スタンピードか起こってるのだもの、当たり前よ」


 香織達は、ここで指揮をしている人を探した。


「香織、あっちにいるわ」

「わかった。行こう」


 香織達は、指揮をとっている人の元へ向かう。


「こんにちは、坂本さん。敵の規模はどのくらい?」


 香織は、指揮をとっている坂本玲二(さかもとれいじ)に話しかけた。


「おう、香織と咲か。大体五千だな」


 玲二は、冒険者ギルドの幹部の一人だ。香織達とは、こうした大規模交戦で何度も共に戦っている。


「どう戦うの? それによって、私達の行動も変わってくるんだけど」

「いつも通りだ。盾で防ぎつつ、魔法で倒す」

「魔法耐性持ちの確認はしたんですか?」

「見た感じだといないな」


 スタンピードなどの規模が大きい戦いでは、魔法による殲滅が一番容易な戦い方だ。しかし、魔法に対して耐性を持つモンスターが混じっていると、そうではなくなる。耐性持ちが混じっていると、周りの耐性がないモンスターを庇うため、敵の殲滅が難しくなるのだ。


「私達は、いつも通りに遊撃でいいんですか?」

「お前達は、その方が活きるだろ。奥の方の敵を任せる。こっちに来るのは俺達に任せろ」

「わかったよ。じゃあ、私達は行ってくるね」

「おう」


 香織達は、玲二と別れ、敵の群れのいる方へ向かおうとする。


「おい! 待て!」

「?」


 香織達は、若い男組に止められた。


「何か?」

「どこ行こうとしてんだ。お前達だけで手柄を横取りするつもりか!」


 周りにいる人達も注目しはじめた。


「私達は私達の仕事をするの。邪魔しないでくれる?」

「うるせえ、女が口答えするんじゃねぇ!」


 世界が変わってから、女性蔑視の考え方をする人が多くなった。冒険者も男性が多いので、その考え方が加速していっているらしい。

 香織達は無視して先を急ぐ事にした。


「なっ、待ちやがれ!」


 男達は、香織達のスピードについて行けず置いていかれた。


「ちくしょう、なめやがって……!」

「おい、あの人達はな……」

「うるせえ! 黙れ!」


 周りにいた人が、香織達の事を教えようとしたが聞く耳を持たなかった。この小さな諍いが大きな波紋を呼ぶ事となる。


 そんな事はつゆ知らずに、香織達は魔物の群れの奥を目指す。咲が先頭になり、敵を切り裂いていく。咲の刀には、斬鉄が付与されている。これは、前の剣に刻印していた鋭利化の強化版だ。斬れ味がより高くなっており、金属も簡単に切断できる。


 咲の前に立つ敵は悉く(ことごとく)切り裂かれていく。魔物には、多少の知性があるが、敵を倒す事が最優先されるため、あまり逃げるという事をしない。


「香織!右から集団!」

「わかった!」


 香織はアイテムボックスから爆弾を取り出す。里中に売った中規模爆弾よりも強力な爆弾だ。そして、爆弾を敵の集団の中に投げつける。


「そりゃ!」


 大きな爆発が起き、その爆炎で集団は全滅。爆破の衝撃でその周りにいる敵も足並みを崩す。

 衝撃は、香織達にも襲いかかるが、二人は、持ち前のステータスでねじ伏せる。


「ナイス! 香織!」


 咲が賞賛しながら、目の前の敵を一刀両断する。そのまま駆け続けると、ダンジョンの入り口が見えた。


「香織! 見えてきた!」

「そのまま突っ込もう!」


 香織の考えに同意して、咲はダンジョンまでの敵を蹴散らしていく。ダンジョンに入り込んだ二人は、溢れ返るモンスターを倒して進んで行く。

 ダンジョンは、狭い洞窟型だったので爆弾などの道具は使えない。そのため、香織も剣を使って戦っている。


「キリがないよ!」

「スタンピードなんだから仕方ないでしょ!」


 香織達は、すでに千を越すモンスターを倒している。


「坂本さんの目算外れてるじゃん!」

「外に出てるのが五千体って事でしょ!」

「咲! 後ろに下がって!」


 咲を下がらせ、香織は風魔法でモンスターを吹き飛ばす。台風よりも強力な暴風は、モンスターを簡単に吹き飛ばし、モンスターを壁やモンスター同士でぶつける。狭い洞窟内での風魔法は、目の前に仲間さえいなければ、かなり有効だ。


「これでも、くらえ!」


 さらに、香織は雷魔法を放つ。高圧電流がモンスター達に流れていく。感電しているモンスターに触り、また感電していく。事前に、風魔法でモンスターを集めておいたので、効率よく感電させることが出来る。


「咲! 足止めお願い!」

「わかったわ!」


 感電せずにこちらに突っ込んでくるモンスターを咲は、居合斬りで一刀両断する。そして、刀に風魔法を纏わせ鎌鼬かまいたちを放つ。そうして、足止めしているうちに、香織は錬金術で大砲を錬成する。

 ダンジョンの床や壁に含まれる鉄を集めて大砲にしていく。そこに、魔力を使って威力増強、電磁誘導を刻印する。弾を入れ、魔力を充填していく。


「咲!」


 その掛け声だけで察した咲は、香織の後ろに下がる。咲が下がったのを確認した香織は、大砲を放つ。いや、大砲というより大口径のレールガンだろうか。電磁誘導により、加速された弾は、周りに衝撃波を撒き散らしながらダンジョンの奥に突き進んでいく。ダンジョンの壁に罅が入っていく。飛んでいった弾は、敵を蹴散らしていき、最終的に溶けてしまった。


 ダンジョンの中は、凄惨な有様だった。香織によって蹴散らされたモンスターの死体が散乱している。


「素材になるものがない……」

「まぁ、あんなのやったらそうでしょ」


 咲は、落ち込んでいる香織にツッコミを入れてから、ダンジョンの外に向かう。その後ろを香織が追う。

 外の戦いは、まだ行われていた。


「まだ、終わってないわね」

「じゃあ、手伝わなきゃ」


 香織は掌を空に向ける。

 空に雲が集まっていき、積乱雲が発生する。


「香織、程々にね」

「うん、素材が残るくらいにはする」


 積乱雲から十数撃の雷が落ちてくる。雷は、人には決して当たらず、モンスターだけを的確に撃ち抜いていく。


「相変わらず、魔法の撃ち分けがうまいわね」

「剣とかよりも魔法の方が使いやすいしね」


 モンスターが殲滅された戦場を歩いて、玲二の元に向かう。


「おっ、香織! 咲! 無事だったか!」

「うん、大丈夫だよ」


 香織は、手を振りながら答える。


「最後のアレって香織か?」

「うん、そうだよ。ちょっとむしゃくしゃしてね」

「まぁ、全部自業自得だけどね」


 香織の言葉にやはり咲がツッコミを入れる。


「まぁ、助かった。今回は新人が多くてな。少し苦戦していたところだ」


 玲二を見るといつもは怪我をしないのに、今回は所々傷を負っている。

 それを見た香織は、


「坂本さん、回復薬要ります?」

「おっ、いいのか?」

「一つ二千円ですよ」

「金取るんかい! まぁ、貰うよ。とりあえず、十万円分でいいか?」

「五十本だね」


 香織は、アイテムボックスから五十本取り出し、玲二に渡す。


「商魂たくましいわね」

「稼げる時に稼がなきゃね!」


 香織達が、玲二と話していると、先程の男組がこちらにやって来た。


「お前ら! 今頃何しに来やがった! 戦闘はもう終わってるんだよ! 役立たずに分け前があると思うなよ!」


 玲二も含めた香織達は、唖然とする。


「お前達、この二人は今回の戦闘の立役者だぞ」

「そ、そんなの嘘です! だって、戦場にこいつらの姿はありませんでした!」


 男達は、玲二の言葉を信じずに喚き続ける。


「この二人はダンジョンに潜って出てくるはずだったモンスターを殲滅して来たんだよ。それに、最後の雷だって、香織の魔法だぞ」

「あんな魔法使えるわけないですよ! 偶然が重なった結果です!」


 男達は尚も喚き続ける。そんな姿を見て、香織達は面倒くさくなったので、


「坂本さん、私達もう行きますね。報酬も結構です」


 と言って、その場を離れた。その姿に対して、男達は親の仇を見るような眼を向けていた。


「何がそんなに気に食わないんだ?」

「あいつらはきっと嘘つきです! 女如きにあんな数のモンスターを倒すことなんて出来ません!」


 この男達は、女性蔑視の姿勢が全く崩れない愚か者の集まりだった。

 玲二は、この男達をどう処分するか考えるが、どう考えても香織達に怒りの矛先が向くと思い、処分する事を諦めた。

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