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13.二年後(3)

改稿しました(2021年8月2日)

 万里と恵里を見送り、店のカウンターで作業をしていると、店の呼び鈴が鳴った。


「はーい」


 香織は、作業を中断して、顔を上げる。カウンター前にいたのは屈強な男だった。


「いつものを受け取りに来た」

「わかりました。少し待っていてください」


 香織は、カウンターの後ろにある棚から爆弾を取り出す。十個を一袋に詰めて手渡す。


「はい、中規模爆破の爆弾が十個ですね。二万円になります」


 男は、無言で二万円を出す。


「丁度ですね。それにしても、いつも中規模の威力ですよね。大威力の物も作れますよ? 里中さん」


 男は、里中重吉さとなかしげよしという。

 香織は、重吉に今よりも強力な爆弾の宣伝をする。


「いや、トンネルの掘削や鉱石の採掘なんかだとこのくらいが丁度いいんだ」


 里中は、インフラ整備や材料集めに爆弾を用いているらしい。下手したら鉱石ごと吹っ飛ばす可能性もあるが、置き場所をうまく調整しているようだった。


「そうですか? 入りようになったら言って下さいね。今日は注文して行きますか?」

「ああ、同じように爆弾を頼む。量も一緒だ」

「かしこまりました」


 重吉は、爆弾の注文をしてから、店を出て行った。


「ありがとうございました。さて、商品の補充も終わったし、研究でもするかな」


 香織は、店の奥にある工房に向かう。その前に、裏で作業している旨を書いた立て札を、カウンターに置く。


 この工房も家を改造して作ったものだ。


「今日は、撥水剤と撥水布かな。上手くできれば、濡れない服や汚れない服とか濡れないテントが出来るね。撥水剤の使い道は……傘とかかな」


 今日も今日とで、独り言を呟きながら考え事をする。咲が来てからは、独り言は減ったが、一人でいると自然としてしまう。


 香織は、カッパもどきを机に置く。カッパもどきは名前の通りカッパのような見た目をしている。しかし、一般的に想像するカッパと違い、四足歩行をする。


「まずは、撥水剤だね。カッパもどきの粘液を抽出してから、調整かな」


 内臓をとったカッパもどきを、錬金釜に突っ込み、魔力を含ませた水である魔力水を入れ加熱する。香織は、大きな釜を錬成してすぐに、専用の魔道コンロを作った。魔道コンロは魔力に反応して着火するコンロである。魔力の量で火力を調整する事が出来るので、錬成炭による火力調整も必要が無くなっている。


 カッパもどきを熱し続けると、カッパもどきから段々粘液が出てくる。粘液が出尽くしたら、カッパもどきを取り出し、加熱を続ける。


「抽出が終わったカッパもどきの皮も撥水効果があるのはいいことだね」


 水気がとれるまで加熱を続ける。その間に、カッパもどきの皮を丁寧に剥ぐ。剥いだ皮を、前もって用意しておいた鞣液なめしえきに漬ける。


 後は、どちらも時間をおかないと完成しない。


 この鞣液は、庭で育てている薬草から作ったものだ。現在、香織の家の周りには家がない。そこに住んでいた人は、皆出て行った。香織は、その人達と交渉して土地を譲り受けた。そして、家を取り壊し周りを畑にしたのだ。もちろん、この畑のほとんども絶縁結界の中に入っている。畑には、香織のオリジナル魔道具、自動水やり機が設置されている。この自動水やり機は、時間指定で、水魔法が発動するようになっている。


 香織は、一度、畑に向かって水やり機の様子を確認する。


「これの調子も良さそうだね。さて、そろそろかな」


 香織は、工房に戻り、先に作っていた撥水剤の様子をみる。水気がほとんどなくなり粘液性が増している。


「うん、出来上がりだね」


 瓶に撥水剤を入れていく。カッパもどき一匹で瓶五本分出来上がった。


「さて、こっちはどうかな」


 鞣液に漬けていた皮を取り出すと、綺麗に鞣されていた。


「うん、きちんと撥水もされてる。これを材料にバッグとかを作ろうかな」


 香織は、革の使い方を考えつつ、次の準備をする。


「この撥水剤を布に染みこませれば、撥水布になる!」


 香織は、大きめの布を錬金釜に入れ、先程作った撥水剤を一瓶入れる。撥水剤を布に揉み込んでいく。大体染みこんだところで錬金釜に火をかける。


「これで、五分間待ってから、外に干す!」


 五分後、火を止めて、布を取り出し外の物干し竿にかける。


「今日の作業は終わり!」


 使った材料を棚に仕舞い、鞣した革を机の上に置いておく。革の方は、明日加工するのでわかりやすい所に置いた。

 香織が、時計を見ると既に午後五時を指していた。


「こんな時間か、今日もお客さんあまり来なかったなぁ。うーん、ギルドに入るのは嫌だし、仕方がないかな」


 香織は頑なにギルドに入る事をしなかった。一般的に見ればギルドに入るとメリットが大きい。しかし、香織からすればいいように使われるだけになってしまう。

 香織は、それだけ大きな力を持っている。それは、咲も同じだ。咲も冒険者ギルドや奪還者ギルドに勧誘を受けている。しかし、その全てを断っている。そのため、二人は、色々な人に目をつけられている。


「さて、ご飯作ろう」


 香織は、店を閉めて、夕食の支度をする。肉は、咲が狩って来てくれた獣型の魔物で代用する。そのまま使えば毒となるが、一度、錬金釜に入れて錬成すれば無毒となる。これも、異常反応の効果だろう。

 香織が、ご飯を作っていると玄関が開いた。


「ただいま」


 玄関を開けて、入って来たのは咲だった。


「咲、遠くに行ってたんじゃなかった?」

「そうよ、でも予想以上に早く終わったの」

「そうなんだ、お風呂入って来たら? 一応沸かしてあるよ」

「ありがとう、そうさせてもらうわ」


 咲が遠くに行っていたのは、その場所に現れた特異モンスターを狩るためだった。特異モンスターは、普通のモンスターより凶暴で危険な存在だ。その場所がわかったので狩ったのだ。特異モンスターが現れる確率は、かなり低い。


 咲がお風呂に入っている間に料理を仕上げ、リビングに並べる。並べ終わると、タイミングよく咲が上がって来た。

 二人で食卓につき、ご飯を食べ始める。


「結局、何を討伐したの?」


 香織は、咲が帰って来たら訊こうと思っていた事の一つを訊く。


「キングオーガだったわ。もう少しで鬼になってたかもね」

「うわっ、危ないね。素材は?」

「もちろん、持って帰って来たわ。少し大きいから明日出すわね」

「やったね! 特異モンスターの素材は貴重だからね。楽しみ!」


 香織は、満面の笑みになった。その様子を見て、咲も顔を綻ばせる。


「喜んでくれて、私も嬉しいわ。それと、レーションだけど、前よりはマシだけど食べづらいのは変わらなかったわ」

「うっ、そう…。うーん、何が足りないんだろう?」

「美味しさね」

「むむむ、わかってるよ。また、試行錯誤しなきゃ」

「頑張って」


 その後は、他愛のない話をして、久しぶりに二人並んで就寝をした。

 この二年間は、こんな日々を過ごし続けていた。

 しかし、その日々も終わりが近づいている。日本の将来を左右する戦いに巻き込まれつつあるのだ。


 ――――――――――――――――――――――――


 香織の成果

 撥水剤、撥水布を錬成した。

 撥水効果を持つ革を作った。

 以上


 ――――――――――――――――――――――――

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