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12.ダンジョン

改稿しました(2021年8月1日)

 リヴァイアサンを目撃した次の日、香織と咲は、リビングで向き合いながら朝食をとっていた。


「咲、少し行きたい所があるんだけど」

「ん? どこに行きたいの?」

「ダンジョン」

「ごふっ!」


 香織が行きたい場所を言うと、咲はちょうどお茶を飲んでいたので、思いっきりむせた。


「ダ、ダンジョン!?」

「うん、多分そこなら鉄鉱石とが採れるかもしれないから」

「鉄鉱石? 何か作るの?」

「うん、錬金釜を作る!」

「ん? 今のは、違うの?」


 咲には、錬金術の知識がないので、今の小鍋で十分ではないのかが分からない。


「今のはまだ小型だから、小さいものの錬成には便利なんだけど、これから作る大きな物や複雑な物は大型の錬金釜が必要なの」


 今のサイズでは、剣などの武器や、大掛かりな錬金術が出来ない。そのためには、大きな釜を作る必要がある。その材料として鉄鉱石が必要になるのだ。


「でも、どうやって作るの?」


 今あるのは、小さな錬金釜だけなので、これ以上の大きさの錬金釜がどう出来るのか、咲には予想も付かない。


「錬金釜を一つ犠牲にしたら出来るんだ。錬金釜の中に鉄鉱石と錬成炭を入れて、錬成炭で加熱するの。それを一時間続けると出来上がり」

「どういう理論なの…?」

「これも異常反応の一つだよ。まぁ、錬金釜に細工する必要もあるけど」


 大きな錬金釜を錬成するには、錬金釜に刻印魔法で、様々な刻印を施す必要がある。そのため、材料となる錬金釜はそれなりの大きさがいる。今使っている鍋なら、ギリギリサイズが足りるので、鉄鉱石を採りに行きたいのだった。


 ただ、鉄鉱石が採れる場所が付近にないので、ダンジョンならあるいはと思ったのだ。


「ダンジョンの場所は? 見当はついてるの?」

「うん、モンスターの歩みから、予測しただけなんだけど」


 香織は予測される場所を、スマホで見せる。


「意外と近いじゃない」

「うん、だから行ってみよう」


 香織は、咲に詰め寄る。咲は、少しの間考える。


「はぁ~、わかった。行くわ。でも、危険だと感じたらすぐに帰るからね」

「やった! 早速準備しよう!」


 咲の許しが出ると、香織はせっせと準備を進める。


(この様子を見るに、私がついて行かなくても、絶対ダンジョンに行っていたわね)


 咲は、苦笑いしながら、心の中で呟く。そんなこんなで、二人は、ダンジョンに行く準備を終えた。


「じゃあ、行こう!」


 香織のかけ声で、ダンジョンがあると思われる場所まで進む。やはり、途中途中で採取やモンスターの撃退などをして、素材を手に入れる。三時間ほど歩いたところで、目的地に着いた。


「ここら辺に、あるのよね」

「うん、そうだと思うんだけど……」


 周りを見回してもそれらしきものを見つけられない。


「やっぱり無いんじゃないの?」


 咲は、香織に声をかけると、香織は地面に手をつけていた。


「何をしているの?」

「魔力の流れを見てるの。さっき気づいたんだけど、眼に魔力を込めると、魔力の流れがわかるんだ」


 香織は魔力操作で身体能力を強化できるなら、視力などの五感はどうかとやってみると魔力らしきものが見えたのだ。その魔力が地面に流れているのを見つけた。流れの向きをきちんと見るために地面に手をつけて凝視していた。


「う~ん……多分こっち!」


 香織は、魔力の流れに逆らう方向に向かう。三十分ほど歩くと、土の塊が三メートル程せり上がっていた。その塊には、二メートルの穴が開いている。


「見つけた。周りには人もモンスターもいない」

「あれが、ダンジョン……想像以上に脆そうね」


 ダンジョンを見つけた二人はそれぞれ異なる反応を示す。香織は周りの警戒をし、咲はダンジョンの状態を見ていた。


「よし、中に入ろう」

「改めて言うけど、危険だと感じたらすぐに帰るからね」


 咲は香織に念を押し、香織の後に続く。ダンジョンの入り口は見た目よりも頑丈だった。


「はぁ、杞憂に終わってよかったわ」


 咲は、入ってすぐに崩壊するかもしれないと考えていたが、無用の心配だった。入り口から一歩進むと、すぐに下り階段があった。二人は、警戒しつつ降りていく。

 一分ほど下ると、目の前には大きめの部屋があった。大きな部屋には、モンスターはいない。その先には通路が見える。


「ここにあるといいんだけど、どう香織?」

「ええっと、あった!」


 香織は、鑑定眼を使い、大きな部屋の隅々まで調べる。すると、あっちこっちに鉄鉱石が埋まっているのがわかった。


「よし、さっそく採っていくよ」


 香織は、土魔法を使用する。壁を崩して中にある鉄鉱石を取り出す。土魔法は、土や石を操る魔法だ。そのため、採掘や建築をするのに便利だ。一応攻撃魔法としても使えるが、土や石を圧縮する必要があるため他の魔法よりも溜める時間が長くなる。

 時間を掛けて、大きな部屋の中にある鉄鉱石をすべて取り出した。実際には、鉄鉱石の他にもいろいろと採れた。宝石や銅である。どちらも鉄鉱石に対して、数は少なかった。


「咲、採れたよ!」

「おめでとう、香織。それで足りるの?」

「うん、釜にする量よりも多く採れたよ」


 ここにあった鉄鉱石はかなりの量だった。重さにして二トンはあっただろう。すべて、アイテムボックスに入れているため重さは感じない。


「どうするの? このまま進む? それとも帰る?」

「先に行ってみよう。ダンジョンがどんなものか知っておきたいし」


 咲は、香織の言葉に頷き、通路を進む。前衛は咲で、後衛が香織だ。通路は一本道なので迷わずに進める。あるかもしれない罠にだけは、気をつけて進む。しかし、最後の最後まで罠はなかった。


「結局、最後まで何もなかったね」

「そうね、でも、この先の部屋は、何があるかわからないわ」


 通路の終わりには、これまた大きな部屋があった。二人でその中に踏み込む。部屋は中央に向けてへこんでいるへやだった。そして、中央には黒い影があった。


「あれって……」


 黒い影は、香織達に気づき通路の方へ顔を向ける。香織達は影と目があった。

 影には翼があり、たくましい脚が四本あり、立派な尻尾も生えていた。その顔は、厳めしい顔だった。


 それは、俗にドラゴンと呼ばれる怪物だった。


 ドラゴンは、いきなり自分のテリトリーに進入した香織達を敵と認め、口を開ける。口の中が赤熱していくのを見て、香織達は、元来た道を全速力で走る。


「やばい! あれはやばい!」

「急いで、香織!」


 香織達が、走りはじめた数秒後に炎が吐き出された。その炎は通路を走り、香織達の元まで追いつこうとしていた。


「咲! 私の前を走って!」


 咲に前を走らせ、香織は通路の壁に手を当て、土魔法を行使する。後ろから来る炎の前にいくつもの壁を作り出す。最初の一つは、瞬時に破壊され、二つ、三つと壊され続ける。十まできてようやく威力が落ちてきた。そのまま、三十もの壁を壊した所で、炎が消えた。


「もう、大丈夫!?」

「わからない! 炎は消えたけど、またやってくるかもしれない!!」


 香織達は走るのをやめなかった。そのまま出口まで駆け抜けた。


 地上に出た所で、香織達は、地面に座り込んで、休憩をしていた。


「はぁはぁ、昨日今日とやばい奴ばっかに会うわね」

「本当に、肉体的にも精神的にも負担が大きすぎる」


 香織達は、昨日会ったリヴァイアサンと同じくらい精神的に疲れ、今全力で走り続けたため肉体的にも疲れたのだ。


「あれはなんだったの?」


 咲が香織が見ているであろう情報を訊く。


「えっと、確か、黒龍ネロ・ベルニアだって」

「やっぱり、ドラゴンよね。あの見た目だし」


 香織達は、そのまま十分ほど休んだ。後はそのまま帰るだけだったが、咲から香織にお願いがあった。


「香織、帰る前に私の家に寄ってもいいかしら?」

「咲……大丈夫なの?」


 あの事件があってから咲は、一度も家に帰っていない。事件の時の恐怖がフラッシュバックしてしまうからだ。恐らく今も恐怖を感じている。その証拠に、咲の身体は小さく震えている。


「大丈夫じゃないと思うけど、やっぱり一度帰っておくべきだと思うの。この程度の恐怖も克服できなかったら、あんな怪物なんて、一生勝てなくなるもの」


 咲は、リヴァイアサンやネロ・ベルニアとも戦う可能性を考えているらしい。今、自分を支配している恐怖に打ち勝つ事が、咲が先に進むために必要な事だと考えているらしい。


「わかった、行こう。でも、私も中までついて行くよ」

「ええ、ありがとう」


 香織は、咲の側に最後までいる事を誓い、咲の家までいく。二時間ほどで、咲の家に着いた。香織は、近くに放置してしまった男の死体が残っていないかを確認した。しかし、男は存在しなかった。あるのは、血の跡のみだ。若干引きずった跡が付いていた。


「……」


 香織達は、それを無視して、咲の家に入る。中は、香織がこの前来た時より荒れていた。どうやら、モンスターが侵入したらしい。警戒しながら進んだが、侵入したモンスターは、すでにいなかった。そして、中にあったはずの死体もなかった。


「皆連れ去られたのね」

「咲……」

「大丈夫よ。覚悟はしていたもの」

「帰ろう。私達の家に」

「ええ……」


 香織は、咲の背を押しつつ咲の家を後にする。咲は、終始震えていた。しかし、その眼だけは、死んでいなかった。


「付き合ってくれてありがとう、香織。お陰で少し吹っ切れたわ」

「そう? 咲がそう言うならよかった」


 二人は自宅への帰路に着く。家に着くと真っ先にお風呂に入り、疲れを取った。その後、夕食を食べる。節制しているとはいえ、大分、食料も少なくなってきている。


「作物はどうなの?」

「芽が出てきたよ。ここからは、かなり早く成長するから、明後日には、収穫できるはずだよ」

「取り敢えずはまだ平気そうね。後は肉かしら」


 食糧について話しつつ食事を進める。二人とも食べ終えると、咲は、早々に就寝した。やはり、色々と疲れているのだろう。


 香織は、早速、錬金釜を錬成する。まず、現在使っている錬金釜が埋まるくらいに、鉄鉱石と錬成炭を、五対一の割合で入れる。その鍋を外に持っていき、錬成炭で火を起こした所に置く。少しすると、錬成炭の火がオレンジから青、青から白に変わる。加熱していくと、錬金釜に施した細工が反応し始める。

 錬金釜には、刻印魔法で、異常反応を複数刻印している。さらに、魔力増幅の刻印も施している。これらの刻印を施すと、錬金釜は許容限界を迎えてしまい、すぐに使えなくなる。しかし、これを施す事で大型の錬金釜へと変える準備が完了する。

 そのまま火力を維持するために、錬成炭を追加する。そのまま、三十分程で反応が終わる。

 バキッバキッという音を立てて釜が割れていく。大きな煙と光が辺りを包み見えなくなる。煙がはれ、光が収まるとそこにあったのは、縦横一メートル、高さが香織の腰程ある釜があった。


「完成……!」


 念願の大きな錬金釜が完成した。家の中に置く場所がないので、取り敢えず、外に置いておく。


「ふぅ~、流石に少し疲れたし、私も寝よう」


 錬金釜に布を被せて、部屋に戻り就寝した。


 ――――――――――――――――――――――――


 香織の成果

 大きな錬金釜を錬成した

 作れるレシピが増えた

 以上


 ――――――――――――――――――――――――

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