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変わってしまった現代で錬金術師になった  作者: 月輪林檎
最終章 私が世界を錬成する
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129.戦いの相性

 フェニックスと戦っている焔は、中々決定打を出せずに困っていた。いや、実際には、何度もフェニックスの息の根を止めている。しかし、その度に蘇ってくるので、倒しきれずにいるのだ。今も、フェニックスの頭を噛み千切っているのに、その頭が生えてきているのだ。そこに、十二の首を持つズメイが吹き飛んできた。


『焔、手伝って。あの首が一杯なの、意外と面倒くさい』


 ズメイの顔には、黒い炎によって焼かれた跡があるのだが、それでも完全に倒しきれていないのだ。


『それは、こっちも一緒。何度倒しても復活するから、キリが無いんだよ』

『じゃあ、白雪に頼む?』

『凍らせるのは有りかも。あっちに移動しつつ、白雪と合流しよう』


 焔と星空は、フェニックス、ズメイと戦いながら、白雪達とヨルムンガンドの戦場に移動する。


 ────────────────────────


 白雪と玲二達は、ヨルムンガンドとの戦いに苦戦していた。玄武、ヒュドラまでは良かったのだが、ヨルムンガンドの巨体に為す術がない。白雪の冷気がヨルムンガンドを倒すところまで浸透出来ないのだ。玲二達の攻撃で出来ている傷も致命傷までに至れていない。あと少しというところで、足踏みをしている。


「白雪の消耗も限界に近くなってきているはずだ。早く決めないと……」


 玲二にも焦りが生まれる。このままでは、白雪が限界に達してしまう可能性が高くなってしまう。どうにかしなければと、玲二が考えていると、空からフェニックスが地面に叩きつけられた。


「な、なんだ!?」


 玲二達が空を見ると、そこには、焔と星空の姿があった。


『白雪! そいつ任せた! こいつは、任せて!』


 星空が、ヨルムンガンドに黒い炎を吐きかける。星空の黒い炎にヨルムンガンドが怯んでいく。そして、巨大化した焔は、ズメイを押し潰している。星空と戦っていた時のズメイは、星空の身体に噛み付いていたが、巨大化した焔では脚までしか首が届かない。そこに、炎を吐いて焼いていっている。白雪は、星空の意図を察して、フェニックスに飛びつき、凍らせていく。フェニックスは、凍らされまいと藻掻いている。しかし、白雪の最後の一押しで、フェニックスが完全に凍り付き砕ける。


『フェニックスを倒したことで領空権が委譲します。アフリカとオセアニアの領空権がフェニックスから人造人間・白雪に委譲。フェニックス討伐の功労者である、人造人間・白雪に報酬として、進化の権利と武具を授与します。

 支配者の討伐を確認しましたので、一部の情報を解禁します。最初の権利所有者は、ランダムで選ばれます。ですが、一つだけ例外があります。北極と南極の両方を統治している二体の獣と一体の竜は、変わらないままとなっています。開示する情報は、これで以上となります』


 フェニックスの不死の秘密は、特殊な炎にあったらしい。それを凍らせられたため、再生出来ず死んだのだ。一体の権利所有モンスターを倒したが、白雪も限界になってしまった。氷雪龍の姿から、人の姿に戻ってしまう。白雪は、地面に横たわっている。気絶してしまっているようだ。


「白雪の保護を優先しろ! 後は、焔と星空の援護だ! 急げ!!」


 玲二達は、白雪の元に駆けつける。龍化してしまった際に、服も千切れてしまったので、上からローブを羽織らせる。その後、部隊を分けて焔と星空の援護を行う。焔は、巨大化したままズメイを掴み、何度も地面に叩きつける。ぐったりとしたズメイに、冒険者と解放軍が魔法をぶつけ続ける。最後に、焔が放った集束した炎で貫かれた。


『ズメイを倒したことで統治権が委譲します。ロシアの統治権がズメイから人造人間・焔に委譲。ズメイ討伐の功労者である、人造人間・焔に報酬として、進化の権利と武具を授与します』


 ズメイを倒す事が出来た。だが、星空の方は一筋縄ではいかないようだ。黒い炎を使って焼いていっているが、でかすぎるので、焼き尽くすことが出来ない。


「星空! 大きな一撃を撃つ事は出来るか!?」

『出来る。でも、溜めが必要』

「焔! 俺達とあいつを足止めだ! 星空! すぐに溜めを始めろ!」


 玲二の指示に従い、星空は空高く舞い上がる。そして、焔と玲二達は、ヨルムンガンドに攻撃を続ける。巨大化した焔がヨルムンガンドの頭を上空から押さえつける。そして、身体を玲二達が攻撃し続ける。身体を捩っている。玲二達を攻撃しようともしているようだが、巨体が災いして細かい動きが出来ない様で、上手く攻撃出来ていない。


「魔法部隊! 拘束系の魔法を使え! 焔! そのまま抑えておけ!」


 火、水、土、様々な属性の魔法で、ヨルムンガンドを拘束していく。しかし、それも一時しのぎにしかならない。


「地面からの固定だ! 土の杭でも何でも、下から突き刺せ!!」


 様々な杭が地面から生え、ヨルムンガンドに突き刺さっていく。ヨルムンガンドは、さすがに苦しいのか、口から毒を吐き始めた。


「焔! 上に上がって火を吐け!! お前達は、風の魔法で、毒を戦場から離せ! 星空、まだか……」


 玲二は、頭上を見上げる。そこには、口に純黒の炎を溜めている。紫竜を倒した時よりも遙かに長く溜めている。


「さすがに、剣の消耗が高すぎる。これ以上、近接戦は無理だぞ」


 玲二達の剣は、刃こぼれをしてしまっている。ヨルムンガンド相手に何度も攻撃していた結果がこれだ。


「近接部隊は、魔法部隊の盾になれ! 魔法部隊は、全力攻撃! 最大限時間を稼げ!!」


 玲二達と焔によって、ヨルムンガンドは翻弄されていく。


『星空の準備が終わりました』

「撤退! 離れて衝撃に備えろ!!」


 焔の言葉に、素早く反応した玲二が、全員に撤退の指示を下す。


「やれ! 星空!!」


 空から星空が黒い熱線を放つ。それは、ヨルムンガンドの皮膚を易々と突き破り、縦に両断していく。星空は、熱線を動かしてヨルムンガンドを完全に両断した。


『ヨルムンガンドを倒したことで領海権が委譲します。アメリカとオセアニアとアフリカの領海権がヨルムンガンドから人造人間・星空に委譲。ヨルムンガンド討伐の功労者である、人造人間・星空に報酬として、進化の権利と武具を授与します』


 ヨルムンガンドを倒したと同時に、星空の姿が黒龍から人に変わった。羽を出す力もないためか、そのまま落ちていく。そのまま地面に墜落することはなく、焔が受け止めた。そして、玲二の元まで降りて行く。


『星空の治療をお願いします。私はマスターの元へ行きます』

「分かった。任せろ。だが、油断するな。空の声が本当の事を言っているなら、敵はベヒモスだけとは限らない」


 玲二は、これまで得た情報から、最後の敵はベヒモスでは無いであろうと判断していた。実際、まだ戦っていない三体が生き残っている。


「星空の治療も進めてくれ! 俺達自身の治療も簡単にするぞ。それが終わり次第、香織の援護に向かう! すぐに動け!」

『『おう!!』』


 玲二達は、自分達の治療を進める。同時に、星空と白雪の治療も施す。優先順位は後者が高い。自分達よりも戦力になる可能性が高いからだ。


 ベヒモスとの交渉決裂から始まった戦いが、終わりに近づいていく。

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