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変わってしまった現代で錬金術師になった  作者: 月輪林檎
最終章 私が世界を錬成する
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127.怪獣大決戦

 星空は、目の前にいる紫竜に向かって、黒い炎に包まれた前脚を叩きつける。黒い炎が、紫竜の身体を焼いていく。


 ガアアアアアア!!


 紫竜は、身体を蝕む黒い炎に悲鳴を上げる。そんな紫竜に星空は、身体を横に一回転させて尻尾での薙ぎ払いを行う。星空の一撃を受けて、紫竜は大きく吹き飛ばされる。紫竜は、羽で姿勢を立て直して、星空に向かって紫色のブレスを吐いてきた。紫竜の特性である毒のブレスだ。星空は、本能的に危険なものと察して、黒い炎のブレスを吐く。二つのブレスは、せめぎ合うことはなかった。星空のブレスが、紫竜のブレスを焼き尽くしたのだ。紫竜の身体が、ブレスに飲み込まれる。その中から、焦げた紫竜が飛び出す。紫竜は、息も絶え絶えだった。


 黒龍となった星空は、香織達が戦った時の黒龍よりも遙かに強くなっていた。これが、成体となった黒龍の強さなのかもしれない。そう考えれば、香織達が、まだ成長段階で倒せた事はかなりの幸運と言えるだろう。だが、紫竜もここまで生き残った龍だ。これで、終わりとはいかない。紫竜は、身体に紫色の靄を纏った。どう考えても毒を含んだものだろう。


 それを見た星空は、口を大きく開いた。その中に黒い炎が集中していく。それは、黒を濃縮した純黒の炎に変わる。


 ガアアアアアアアアアアアアア!!!!


 毒を纏った紫竜は、星空に向かって突っ込んでいく。それに対して、星空は純黒の炎を放つ。黒い炎を濃縮した純黒の純黒の一撃は、相手を包み込むようなものではなく、一条の矢となりて紫竜の頭を貫いた。香織の指示では、なるべく倒さないようにとの事だったが、星空は、紫竜の毒はかなり危険なものと感じ、倒す事にしたのだ。戦闘中に毒を撒かれれば、香織達も困ることになるからだ。紫竜が、地面に墜落していく。


『紫竜を倒したことで統治権が委譲します。アフリカの統治権がヴィオラ・ヤトウリから人造人間・星空に委譲。紫竜討伐の功労者である、人造人間・星空に報酬として、進化の権利と武具を授与します。

 支配者の討伐を確認しましたので、一部の情報を解禁します。世界の歴史は同じ事の繰り返しです。これらの事は、何度も繰り返されてきた事なのです。現在開示できる情報は以上となります』


 初めて要領の得ない情報が開示された。だが、これも何か重要な事なのかもしれない。


 ────────────────────────


 星空が紫竜と戦っている頃、焔もフェニックス、ヴクブ・カキシュと戦っていた。フェニックスが炎で焔を焼いているが、焔の耐性と超再生によって全く効いていない。焔は、フェニックスの首に噛み付きつつ、尻尾でヴクブ・カキシュを薙ぎ払う。そして、噛み付いたフェニックスの首をへし折る。


 クェァ……


 フェニックスは、そのまま墜落していく。しかし、倒した時の情報の開示が無い。つまり、フェニックスはまだ生きているということだ。墜落していたフェニックスを炎が包み込んでいき、中から無傷のフェニックスが飛び出してきた。やはり、フェニックスは不死という可能性が高い。二体の敵から離れた焔は、身体を巨大化させる。赤龍がやっていた事と同じだ。巨大化した焔は、飛び上がってくるフェニックスを、前脚で地面に叩きつける。同時に、尻尾でヴクブ・カキシュを殴る。そして、墜落していくヴクブ・カキシュに、ブレスで追い打ちを掛ける。焦げたヴクブ・カキシュが地面に叩きつけられる。まだ辛うじて生きている。


『マスター、弱らせました』

「ナイス! でも、ちょっと待って! こいつ結構厄介で!」


 赤龍状態のまま焔が香織に報告する。ズメイと戦っているのだが、香織との相性が悪いのか、互いに攻撃が効かないでいた。そこに、紫竜を倒した星空が突っ込んでくる。竜巻を纏っているズメイの身体を掴んで、地面に叩きつける。


『任せて』

「ありがとう!」


 香織は、ヴクブ・カキシュの傍に降り立つ。


「材料は……星空が倒した紫竜を使おう」


 香織は、魔法で紫竜を傍まで引き寄せる。


「うげっ、これでも足りない。赤龍、黒龍、氷雪龍の素材も使って……リヴァイアサンも使えるかな。それでも、少し足りないや」

「これで足りるかしら?」


 香織が、賢者の石の材料が足りずに少し困っていると、空から黄龍が降ってきた。その身体は、ボロボロになっており、尻尾と手足は斬り落とされていた。


『黄龍を倒したことで統治権が委譲します。オセアニアの統治権がジャッロ・マギトワから高山咲に委譲。黄龍討伐の功労者である、高山咲に報酬として、進化の権利と武具を授与します。

 支配者の討伐を確認しましたので、一部の情報を解禁します。この世界の変貌には、神が関わっています。神々は人々に試練を与え、進化を促すという理由で世界を変えます。人々が全ての権利を取り戻した時、神は人々に選択を迫ります。現在開示できる情報は以上となります』


 黄龍を倒した証拠に、天からの声が降り注いだ。それと同時に咲も香織の傍に降りてくる。


「ありがとう、咲。良く倒せたね」

「剣に変化した手足と尻尾以外は、意外と柔らかかったのよ。それより、なるべく早く作っちゃいなさい。敵は待ってくれないわよ」


 咲は、そう言って地上すれすれを駆けていく。その方向には、馬に乗った首の無い騎士デュラハンが駆けてきていた。咲は、デュラハンの剣と打ち合った後に、アイテムボックスから取り出した炎月を別の方向に投げる。そこには、銀色の狼フェンリルが走ってきていた。フェンリルは、炎月をすれすれで避ける。その攻撃で、フェンリルの攻撃目標が咲になる。


 その間に、香織は材料を揃える。


 ────────────────────────


 一方で、玲二達も戦闘に入った。白雪が氷雪龍の姿になり、ヨルムンガンドに向かっていく。冷気のブレスを吐き、身体を凍り付かせるが、巨体過ぎて大した効力を発揮する事が出来ていない。玄武やヒュドラもヨルムンガンドと争っているが、大したダメージを与えられていない。だが、傷を付けることは出来ているので、攻撃を無効にしている訳ではなさそうだ。


「あのでかい蛇に潰される可能性がある。そこは気を付けろ! 基本は魔法による重点攻撃だ。同じ箇所を狙い続けろ!」


 玲二の指示による攻撃で、ヨルムンガンドの一部に大きな傷が出来てはいる。ヨルムンガンドは、玲二達のちまちまとした攻撃よりも氷雪龍となった白雪の攻撃を疎ましく思っているようで、頭上を飛んでいる白雪に攻撃をしている。


「あの大きさ……北欧神話のヨルムンガンドか……? 白雪! 毒攻撃に気を付けろ!」


 玲二は、鑑定のスキルを持っていないので、実際に相手がヨルムンガンドか分からない。だが、その巨体と蛇という点から、自身の知識にあったヨルムンガンドを出した。実際、この世界に現れたモンスターの中には、酒呑童子などの話の中でしか出てこない生物がいた。ヨルムンガンドがいても不思議では無いと考えたのだろう。白雪は、この状態でも声を発する事が出来ないので、こくりと頷いた。


「ヒュドラの範囲毒攻撃が来るぞ!! 風魔法で押し返せ!」


 敵の攻撃にも玲二がすぐに察知をして、的確な指示を出す。ここまで、二人の死者が出た。だが、ある意味で言えば、まだ二人の死者しか出ていない。それもこれも玲二の指示によるものだ。


「このままだと、じり貧だな……何か良い方法はないか……」


 玲二達の戦闘では、怪我人も少なく順調に進められているように見えるが、実際のところは、決め手に欠けるというのが真実だ。玲二が悩んでいると、玲二の傍に白雪が着地した。そして、素早く地面に文字を書く。


『広範囲攻撃で一気に凍らせる。皆は、火魔法で自分達の周囲だけを温めておいて』

「それを使って、白雪は大丈夫なのか?」

『分からない。でも、やった方がいい。こっちは気にしないでいい。倒せると判断したら倒して』

「……分かった。こっちでも出来る限りのサポートをしよう」


 白雪の提案に玲二がそう返すと、白雪は、一瞬待ってから頷いた。そして、再び上空まで飛んでいく。


「白雪の広範囲攻撃が来るぞ! 火魔法で自分達の周囲二メートルだけを温めろ!」


 玲二の指示に、冒険者と解放軍が素早く従う。白雪は、身体の周りに異常なまでの冷気を纏って、一気に解き放つ。周囲数十キロが完全に凍結する。流れていた川も凍り付き、木々も氷に飲み込まれた。さらに、空から雪も降ってくる。


 ヨルムンガンド、玄武、ヒュドラも完全に凍り付いた。


『玄武を倒したことで領海権が委譲します。アジア・中東の領海権が玄武から人造人間・白雪に委譲。玄武討伐の功労者である、人造人間・白雪に報酬として、進化の権利と武具を授与します。

 支配者の討伐を確認しましたので、一部の情報を解禁します。迫られる選択は、世界の命運です。このままの世界を続けるか。もう一度、元の世界に戻すか。元の世界に戻した場合、これまでに得た技能の全てを失います。ただし、世界の状態は現在のままになります。さらに、それまでの記憶も引き継ぐ事になります。現在開示できる情報は以上となります』


 玄武を倒した証拠に声が降り注いだ。だが、続く声はない。つまり、ヒュドラとヨルムンガンドは生きているということだ。


「まだ二体残っている……あれは、見た目通りヒュドラのはずだ。ヒュドラの倒し方は、確か傷口を焼くんだったか……?」


 玲二は、ジッとヒュドラを見る。


「考えていても仕方ない! ヒュドラの首を切断! その後、傷口を焼け! 完全に凍り付いている今がチャンスだ!」


 近接組が、一気に八つの首を斬り落とす。その傷口に、魔法部隊の炎が放たれて完全に焼いて塞がれた。そこに、白雪が降りてきて、真上から落ちてきた白雪が拳を叩きつける。最後の一つが、白雪に噛み付こうとするが、その前に白雪が放つ極低温の冷気によって凍り付き、砕けた。


『ヒュドラを倒したことで統治権及び領海権が委譲します。南アメリカの統治権及び領海権がヒュドラから人造人間・白雪に委譲。ヒュドラ討伐の功労者である、人造人間・白雪に報酬として、進化の権利と武具を授与します。

 支配者の討伐を確認しましたので、一部の情報を解禁します。世界を元に戻しても死んだ人間は生き返りません。進んだ時も戻されません。ただただ、ステータスなどの技能が消え去ります。現在開示できる情報は以上となります』


 ヒュドラを倒す事に成功した。ヒュドラが二つの権利を持っていた事から、南アメリカもしくは、この場で権利所有モンスターの一体が倒されていたということだろう。倒すべき敵が減っていることに、玲二は心の中で安堵した。


 だが、まだ、この戦場で最大の敵が残っている。凍ったままだったヨルムンガンドが、氷を砕いて動き出す。

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