120.ニューヨーク探索初日
香織達は、ケネディ国際空港からブルックリンを抜けて行っていた。
「ここら辺って、住宅街と何か発展してる場所と色々あるよね?」
「横浜だって似たようなものよ。大通り近くや、路線近くにお店を多くしているのもね。国道沿いに行けば、また違った光景になると思うわよ?」
「そういうものかな?」
「そういうものよ」
香織達は、住宅街や大通りなど、色々な寄り道をしながら進んで行く。
「マスター、こんなものがありますが」
そんな中、焔が道端で何かを見つけた。そこには、くねくねと動く草があった。
「何これ? キモい」
星空が、ストレートにそう言った。香織達は、思わず苦笑いになる。
「マンドラゴラだね。私達の家でも栽培しているよ」
「え!? そうなの!?」
星空は、驚いて香織を見る。畑には、作物を取りに行く関係で、何度も行っているのに見たことがないからだ。
「家から離れた場所で、栽培しているからね。いつも使う野菜は、近くで栽培しているから、そっちは、あまり見に行かないでしょ?」
「確かに、そうですね。でも、何故離れた場所に?」
「マンドラゴラは、そのまま引き抜くと、ものすごくうるさいんだ。場合によっては、引き抜いた人が気絶する事もあるからね。無理に引っこ抜かないで、ナイフとかを、その茎が集中している場所に根元まで突き刺してから引っこ抜くと、叫ばないから」
焔は、早速ナイフを突き刺して採取してみた。引っこ抜いても叫ばすに沈黙している。焔の手には、人の顔のようなものが付いた人参のような大根のようなものが握られている。
「キモい」
星空は、マンドラゴラをお気に召さないようだ。確かに、普通に考えて少しキモいと言える見た目だ。
『何に使われるの?』
白雪が、香織の服の裾を引っ張って訊く。
「う~ん、簡単に言えば、栄養ドリンクかな。疲れたときに活力を得る飲み物だよ。一番使われるのは、それだね」
「家には置いていないわよね?」
「そうだね。必要ないし。私達、疲れるって事が、ほとんどないじゃん? 激しい運動しても疲れる事もなくなったし、戦闘中でも疲労が溜まるって事も減ったし」
「そうね。基本的に、ボスクラスのモンスターとの戦闘以外に疲労を感じる事はないわね」
「まぁ、飲んでみたいなら、今度作ってあげるけど。かなり苦いよ」
香織がそう言うと、三人は首を横に振った。
「でも、焔は、良いものを見つけてくれたよ。これで、ここら辺の素材分布が、横浜に近いっていう仮説が立てられる。ここで、別の何かを見つけられたら、アメリカ独自か、日本の北側に生息する可能性があるって考えられるはず」
「そうね。ニューヨークと同じ緯度の県は、東北ら辺だったと思うわ。ここら辺に世界地図があったら、大まかな部分は確認出来ると思うわ」
「大体東北なら、北海道に行けば、手に入れられる可能性が高くなるって事だからね。仮に、日本で手に入らなかったら、アメリカ限定になるしね」
「そういうことを調べるための調査って事ですね」
「そういうこと。星空と白雪も変なものや気になったものを見つけたら、教えてね」
香織の言葉に星空と白雪が頷く。そうして、周辺の素材の調査を進めていき、ブルックリンの西端まで来た。ここまでで、めぼしい素材は無かった。基本的に日本で取れるものだけしかなかったのだ。
「う~ん、大体日本と同じだなぁ。ラスベガスで、見つけたものもなかった。あの地域は、大気魔力が高いって事かな? 大気魔力を測定するものでも開発しようか。でも、なんで、大気魔力が高いんだろう……ベヒモスが関係している? ベヒモスの移動ルートも、それで判明する可能性もある? ベヒモスの居た場所が、新しい素材が生まれる場所? じゃあ、黒龍が居た場所は? あのダンジョンは消えたから、富士山の上が怪しいかな……」
香織は、ガバナーズ島を見ながら、考察をしていた。咲は、香織の考察を邪魔しないように、焔達と少し離れた場所で話をしている。
「香織の悪い癖が始まったわね。ああやって、考察し出すと、少し止まらなくなるのよね。でも、今は邪魔しないであげて」
「はい、分かりました」
「今日は、これからどうするの?」
「後は、家に帰るだけね。お義母さん達も帰ってきてって言ってたから」
咲達が話ながら待っていると、香織が四人の傍に寄っていく。
「これからどうする?」
「さっき、もう帰るって話していたところよ。お義母さん達も言っていたでしょ?」
「それもそうか。でも、少し寄り道してもいい?」
「寄り道?」
「うん!」
咲達は、首を傾げた。香織達は、ブルックリン橋を通って、バッテリーパークまで赴いた。
「香織が見たかったのは、あれね」
「うん。アメリカに来たら、一度は見てみたいじゃん? 大体の場所は覚えていたけど、ここからだとあんなに遠いんだね」
香織が見てみたかったものとは、自由の女神像だった。
「あれは何ですか?」
「自由の女神像よ。簡単に言えば、自由を象徴する像ね。ここら辺を代表するものの一つって感じかしら」
「そうだね。三年前は、かなり有名なものだったんだ。焔達は、知らないと思うけどね」
「もっと近くで見たみたい」
星空が、遠くに見える自由の女神を見てそう言った。
「そうだね。じゃあ、明日は、あれを見に行こうか。探索ついでに、観光してもいいよね?」
香織は、咲に確認を取る。
「そうね。星空が見たいと言うのなら、いいんじゃないかしら。焔達も見てみたい?」
「はい。気になります」
『見たい』
焔と白雪も見てみたいようだ。香織と咲は、互いに見合って微笑み合う。これで、明日の予定が決まった。香織達は、当初の予定通り、家に戻る。
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家に帰った香織達は、真夜達と夕飯を食べていた。そこで、香織は、明日の予定を話す。
「そう。自由の女神を見に行くの。いいんじゃないかしら。あそこは、被害に遭っていないから」
「あそこら辺って、危険なモンスターとか出る?」
「いないわ。基本的な恐竜みたいなモンスターくらいよ。それも小型の草食恐竜しか出てこないわ。対処は出来るはずよ」
「あそこは、まだ舗装がされていないから、でこぼこになっているよ。歩くときは気を付けて。後、海のモンスターにも気を付ける事。だから、海を渡るなんて事はしないようにね」
悟が注意事項を教えていく。
「じゃあ、空からは? 私達全員、空を飛べるよ」
「そうなのかい!? う~ん、なら、十分な高度を取っていく事。いいね?」
「うん。分かった。じゃあ、明日は、自由の女神を見に行くって事で、決定!」
真夜達からの許可も得た事で、予定が確定した。そこで、香織は、別の事を思い出す。
「そうだ。ここら辺で変わった素材が取れる場所ってない?」
「変わった素材? ハーリーマン州立公園に、ここら辺とは違った素材があったはずだわ。それがどうかした?」
「ちょっと気になる事があるんだ。そのハーリーマン州立公園って、ベヒモスが通ったりしなかった?」
「……通ったわね。確か、二年前くらいに」
「やっぱり。もしかしたら、ベヒモスが通った場所に、新しい素材が生まれている可能性があるんだ。私の予想では、大気魔力の濃度で変わるんだと思う」
香織は、自分の仮説が正しい可能性が高いと判断した。
「大気魔力の濃度で変わる……なるほどね。明日、本部に行ったら、ベヒモスの進行ルートと素材の分布を確認してみるわ」
「うん。後、ここの部屋の一つを借りてもいい?」
「良いけど、どうするの?」
「ちょっと、工房にしようと思ってね。少し作りたいものがあって」
「なるほどね。危険なものを作るのはダメよ。後、家を吹っ飛ばすようなものもね。もし、あれなら部屋の強度を上げるように、手配しておくけど」
「それくらいなら、私でも出来るから大丈夫だよ。私がやってもいい?」
「ええ、構わないわよ」
こうして、真夜達の家の一室が、香織の工房へと変わっていく事になった。その日は、夜も遅くなってしまったので、作業はしないことになった。というよりも、真夜から夜中に作業をするなと言われてしまったのだ。香織は、それでも食い下がっていたのだが、真夜から一喝されると渋々従った。
この時、咲は、「これが親の為せる業か」と感心していた。同時に、自分がかなり香織に甘かったということも自覚した。
その日の夜、香織は、咲に甘えるようにして眠りについた。




