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112.今後の予定

 香織達が、それぞれのやることをして、三日が経った。続々と冒険者が帰還してくる。香織は、その中に万里と恵里を見つけた。


「おかえり、万里ちゃん、恵里ちゃん」

「ただいま!」

「お疲れ様です」


 声を掛けられて、香織に気が付いた二人は、すぐに駆け寄ってきた。


「二人とも、大丈夫?」

「怪我は無いよ! ここら辺のモンスターは、そこまで強くなかったから!」

「皆さんと一緒に戦ったら、余裕をもって戦えました。香織さん達との修行の成果も出たと思います」


 二人は興奮したようにそう言った。香織達の教えが実を結んだという事は、香織にとっても嬉しい事だ。


「頑張っているみたいだね。その調子でって言いたいところだけど、敢えてこう言わせて貰うね。調子に乗らないこと。自分の強さを過信して、無謀な戦いをしている事に気が付かないことだってあるんだから」

「強くなった事に驕るなって事?」

「そういうこと。慢心は人間の最大の敵だって言うしね」

「何かのことわざ?」

「いや、有名な劇の台詞だよ。もしかしたら、正確な意味は違うかもだけど、まぁ、言葉の通りに受け取って」

「「はい!」」


 万里と恵里は、素直に、そして元気に返事をした。


「あっ! 坂本さんのところに報告に行かないと!」

「そうだった!」

「ごめんね。呼び止めちゃって。坂本さんなら、いつもの場所にいると思うよ」

「うん。ありがとう!」

「じゃあ、失礼します!」


 万里と恵里は、玲二の元に向かっていった。


「万里ちゃんと恵里ちゃんは、もう大丈夫かな。慢心せずに成長出来れば、今以上に強くなることも出来るはず」


 香織は、万里達の成長を心から喜んだ。


 ────────────────────────


 万里達が帰ってきた次の日に、冒険者が全員戻ってきた。全員が集まったことで、集会が行われる。


「全員帰ってきたな。今から、緊急招集を掛けた理由を話す」


 冒険者達は、真剣に話を聞いている。


「実は、香織達が、ラスベガスの人間に遭遇した。香織達の話では、奴隷を集めるために行動しているらしい。何のための奴隷かは正確には分からない。だが、そいつらの言葉から推察すると、女性を求めていたようだ。お前達の中に、香織達同様にラスベガスの人間と遭遇した者はいるか?」


 玲二が問いかけると、冒険者達は、誰も発言をしなかった。


「つまり、お前達が探索した場所に来ていないということだな? 何かしら、情報はないか?」


 この問いかけには、冒険者達も返事をする。最初に声にしたのは、万里達と一緒に行動していた女性冒険者だ。


「私達は、南側に行きましたが、現地の人達くらいしかいませんでした。その現地の人達に話を聞きいたところ、解放軍に所属はしていないものの庇護下にいるとのことでした」

「なるほど、南が解放軍の影響下にあるということは、ラスベガスもそっちに行く事はないのかもしれないな。他には?」


 次に、男性冒険者が答える。


「俺達は、南東に向かったが、特に怪しい人には会っていない。そもそも、人自体と会っていないんだ。出会ったのは、モンスターだけだ。少し違和感があったのは、モンスターの量が多かったというところだ」

「モンスターが多いから、そこには人が住んでいないのかもしれないな。次!」

「俺達は、東から北東に向かって進んでいきました。ですが、ラスベガスの人間には、会っていません。解放軍の人達には多く出会いました。あの天文台が近いからかもしれません」


 その他の報告は、今話したのと同じものばかりだった。


「今までの話と香織達の話を総合すると、解放軍の支部である天文台以南が、解放軍の支配下にあると考えて良いだろう。ラスベガスにいる奴等は、その領域に入ってこないようだな。だから、香織達の行った北にある街に来ていたんだな。そもそも壊滅している状態だから、人がいないはずだが、探索に来た奴を狙っていたのかもしれない。探索を行う奴等は、基本的に戦闘が出来るはずだ。つまり、奴等は、そこそこ強いとみて良いだろう」


 玲二は、そこで話を切って少し考え込む。


「今後について、少し考える。明日、もう一度集まってくれ。今日は、解散だ!」


 考えがまとまらなかったからか、玲二は、ここで集会を終えた。


「香織達は、いつもの天幕に来てくれ」

「うん。分かった」


 香織達は、玲二と重吉と共に、いつもの会議をしている天幕に向かう。焔達は、万里達と話をしに向かった。


「今後の予定だが、探索を完全に取りやめ、ニューヨークに急ごうと思う。香織達はどう思う」

「私は、賛成だけど。良いの? まだ、完全に探索は出来ていないでしょ?」

「ラスベガスの奴等が気になるんだろう。香織達に何も出来ないとはいえ、本当に何もしてこないとは限らない。俺も、玲二に聞いたが、香織の契約には抜け穴がある」

「奴隷ですね?」


 その抜け穴を、咲が的確に当てる。


「ああ、香織達に攻撃出来ないのは、レイモンドという奴の部下だけなのだろう? 俺がレイモンドなら、奴隷を使って攻撃を企むところだ」

「あの人達が、レイモンドに報告していたらですよね?」

「そうだな。そもそも報告するかどうかというのが、問題か。だが、可能性があるなら、やめるべきだろう?」

「そうですね。坂本さんと里中さんが納得しているなら、これで、ニューヨークに向かっても良いけど」

「よし。明日一日休みをとって、明後日に出発することにしよう」

「なら、整備をしておいた方がいいな。行って来る」


 重吉は、天幕を出て行った。


「香織達は、十分休んでいると思うが、もう一日しっかりと休んでくれ」

「うん。分かった。坂本さんも休みなよ」

「ああ、分かってるよ」


 香織と咲は、天幕から出て行く。


「もうニューヨークに行くのね」

「まぁ、そうだろうとは思っていたけどね。あのラスベガスの人達がいると、安心して探索なんて出来ないから」

「そうね。少し不安なことがあるけどね」

「そこら辺は考えても、仕方のないことだよ。状況に応じて臨機応変に対応しないとね」


 香織達が話しているのは、ニューヨークへの移動中に攻撃される可能性があるのでは無いかということだ。かなり上空にいるので、当たる事などないと思われるが、万が一ということもある。


「そういえば、香織って、空間魔法を持っていたわよね? 結局、アイテムボックスくらいしか使っていないけど、他には何かないの?」


 香織は、空間魔法を得ているが、その魔法をアイテムボックス以外使ったことがない。咲は、そのことを不思議に思っていた。


「あるにはあるんだけど、使い勝手が悪すぎるんだよ。空間転移とかあるけど、自分の座標と転移先の座標を正確に知らないといけないし、空間断裂は、下手したら、空間の延長線を全て断裂させちゃうし」


 自分の座標を知る事自体が難しいので、そもそも空間転移は使えない。空間断裂は、制御が上手くいかなければ、空間の延長線、下手すれば地球ごと断裂させてしまう恐れがある。


「だから、使わないのね。使えたら、かなり強いと思うのだけど」

「私も制御出来る自信が無いからね。最近は、魔法よりも道具の方を使ったり、錬金術を使ったりしているから、あんまり気にしていないけど」

「まぁ、香織が良いなら良いけど。さて、あと一日休みが出来たけど、香織はどうする?」

「う~ん、精油の効果が知りたい」

「却下」

「いいじゃん! あと一日休みがあるんだから、せめて、今日の夜くらいは!」


 にべもなく断られた香織は、必死に食い下がった。


「また、あんな副作用が出たら、どうするの?」

「それは、勿論、咲に頼むよ!」

「自分で済ませるなら、やっても良いわよ?」

「…………」


 香織は、上目遣いになって咲を見つめる。咲は、香織の眼を無視する。だが、やがて、


「はぁ……分かったわよ。もし、そうなったら、どうにかしてあげる。ただし、細心の注意を払うこと。良いわね?」

「うん! ありがとう、咲! 大好き!」


 香織は、咲に抱きつく。咲は、仕方ないという風にため息をつきながら、香織を軽く抱きしめる。そして、自分達のテントに向かっていった。


 結局、この前のような副作用もなく、咲は、無事に夜を過ごすことが出来た。香織は、少しだけ不満そうだったが……

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