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110.精油の量産

 次の日の朝、香織は、赤くなった顔を手で覆っていた。その横では、ニコニコと笑った咲がいる。


「何か申し開きはあるかしら?」

「……気持ちよかったです」

「そっちじゃ・な・い・で・しょ!」


 咲は、香織の顔にアイアンクローをお見舞いする。咲の握力でやれば、かなりの痛みになるだろう。


「すみません! 予測してない副作用がありました!!」

「全く、沈静草の精油なのに、なんで催淫作用なんてあるのよ」

「全然分からない。鎮静させた結果、興奮作用が大きくなる感じかな? 鎮静剤には、そんな作用はないから、精油にしたときにしか起こらないのかも」

「はぁ……おかげで、いつも以上に付き合わされる私の身にもなりなさい。ただでさえ、香織は……」

「ああ~~!! もう! そんな事を口にしないで! 恥ずかしくなるでしょ!」


 香織は、顔を真っ赤しながら訴えた。


「まぁ、これくらいで、許してあげるわ。取りあえず、その精油は、封印よ。そんな副作用があるものをおいそれと外に出せないわ。早く服を着て、回収してきちゃいなさい」

「ガスマスクしていけばいいかな」

「とにかく吸入しなければ良いんじゃないかしら」


 香織は、服を着てガスマスクを付けてから工房用のテントに行き、精油を回収した。


「う~ん、上手く催淫作用だけ分離出来ないかな? 鎮静作用というよりも睡眠作用?は良い感じなんだよね」


 香織は、何とか、この精油を上手く使う事は出来ないかと考えていた。実際、副作用さえなければ、かなり良い品だと言える。眠れない人からしたら、一瞬で寝られるこの精油は、喉から手が出る程欲しいもののはず。そう、副作用さえなければ。


「分解……分離……普通の道具じゃダメだろうし……そもそもなんで催淫? 本当に、鎮静作用の反動? 元々二つの作用を持っていた? そうしたら、沈静草の時点で混じっているはず。でも、そんな事なかったんだよね」


 香織は、沈静草を鑑定する。


 ────────────────────────


 沈静草:鎮静作用のある草


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 香織が前に確認したとおり、鎮静作用があるだけの草だった。ただ、鑑定で、全ての事柄が分かるというわけではないので、香織の予想通りの可能性もある。


「これは、栽培してみて色々と調べた方が良さそう。メモ帳に書いておこう」


 香織は、今後やるべき事リストに、沈静草の研究を追加する。ついでに、魔霊草の加工についても追加した。


「はぁ……完全にやらかしたなぁ。こればかりは、やってみないとわからないとはいえ、咲に迷惑掛けちゃった」


 香織は、改めて反省する。完全に油断していたので、香織の責任になるからだ。


「冒険者の皆が集まるまで、時間があるはずだし、今日も別の研究を進めよう」


 香織は、何の研究をするか考えつつ、テントを出る。すると、焔、星空、白雪が駆け寄ってくる。


「マスター、もう大丈夫なのですか?」

「大丈夫だよ。寝ちゃってただけだから。ごめんね、心配掛けちゃって」

「無事なら良いけど」

『びっくりした』


 香織は、三人を安心させるために頭を撫でていく。


「ちゃんと、謝ったみたいね。じゃあ、朝ご飯にしましょう」

「そうだね。皆で、準備しちゃおう」


 香織達は、全員で朝ご飯の支度をしていく。そして、いつも通り、皆で朝ご飯を食べた。


「今日は、どうするの?」


 星空が首を傾げて訊く。


「取りあえず、冒険者の皆が、集まってくるまでは、待つだけになるかな。私は、色々と研究するから、テントに引きこもるし、星空達は、咲と戦いの修行をしておくと良いかも。これから、人と戦う事が増えると思うから」

「そうね。対人戦に慣れるために、模擬戦をしましょう」


 こうして、香織は研究を、咲達は対人戦の練習をする事になった。


 ────────────────────────


 朝ご飯を食べ終えた香織達は、工房用のテントに入る。中は、消臭剤を焚いていたため、沈静草の精油の匂いはしなくなっている。


「さてと、まずは、白雪のアクセサリーを作ろうかな」


 香織は、魔鉱石を取り出して、大型の錬金釜に入れていく。


「取りあえず、水耐草を入れてみようかな。水属性になったら、万々歳と考えよう」


 錬金釜に水耐草を加えて、加熱していく。その間は、均一に混ざるようにかき混ぜ続ける。


「う~ん、欲しいものじゃないけど、何か新しいものが出来た」


 ────────────────────────


 魔鋼のインゴット(水耐性):水に対する耐性を付与された魔鋼のインゴット


 ────────────────────────


 香織は、水属性を強化したかったのだが、耐性の方が付与されてしまった。


「聖草とか暗黒草とかの氷バージョンを探した方がいいね。じゃあ、普通に魔力削減に特化したものにしよう」


 香織は、魔鉱石を錬金釜に入れて、加工していく。そうして出来上がったのは、雪の結晶の模様が入った六角形のペンダントだった。そこに、刻印を施して、『使用魔力削減』『魔力効率上昇』『耐久度上昇』の三つを付けた。


「何かしら付与しても良いと思ったけど、これだけで一杯一杯になっているなぁ。仕方ない、取りあえず、これで完成!」


 白雪に渡すようのアクセサリーが完成した。


「次は……蠱毒草の研究かな。ガスマスクを付けて、空気浄化機を点けて、後は……大丈夫かな」


 ────────────────────────


 蠱毒草:複数の毒草が互いに殺し合って、生き残った毒草


 ────────────────────────


 蠱毒草は、毒草の中でも最上位に位置するかもしれないくらい、強い毒と予想される。この毒草があった場所は、草木が枯れていた程だ。回収は、ガスマスクを付けた香織が行っていた。


「さてと、まずは毒薬にするところからかな」


 香織は、蠱毒草をすり潰し、魔力水と混ぜていく。そして、錬金釜で加熱すれば、蠱毒薬の出来上がりだ。


 ────────────────────────


 蠱毒薬:蠱毒草から作られた毒薬。手足の痺れから始まり、やがて、臓器の動きも止める


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「えげつない毒だなぁ。あんまり使いたくないかも」


 香織は、取りあえず、持っている分の蠱毒薬のほとんどを毒薬に変えていった。


「さてと、後は、色々なものから精油を作り出してみようかな。私の知らない効能があるかもだし……一応、ガスマスクと空気浄化機は、そのままにしておこう」


 香織は、昨日の反省を活かして、対策は万全のまま研究を進める。前と同じく、植物と魔力油を合わせて錬金釜に火を掛ける。複数口の魔力コンロを使って、複数の小鍋型の錬金釜を使い、同時に抽出する。


「うん。どれも問題なく抽出出来ているっぽい。問題となるのは、副作用だけど、こればかりは、鑑定でも効果が出てこないんだよね。身をもって確かめる必要があるんだよね」


 鑑定を使っても、通常の効能は出て来るのだが、副作用の方は一切出てこない。これは、自分で確かめないといけない。


「う~ん、これは、咲がいて、やっても問題ないときにしてみようかな。副作用が何になるか分からないし。でも、さすがに、あんな副作用は、もうないよね?」


 昨日の出来事は、香織としても、すごく恥ずかしいことだった。正直、出来る事なら、忘れたいと思っていた。


「さてと、これは、瓶に保存して、次の精油を抽出しよう」


 香織は、今までに手に入れた薬草などから精油を抽出していく。こうして、新しいものを作り出していくことは、楽しいと香織は感じていた。

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