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106.新素材の実験

 香織は、自分達が寝る用のテントと別に張った錬金術用のテントの中に入った。今日は、実験をするだけなので、大型の錬金釜でなく、手鍋サイズの錬金釜だ。


「さてと、まずは、聖草から確かめていくかな。まずは、回復薬に入れてみよう」


 香織は、いつも通りに回復薬を作る。その過程の途中で、すり潰した聖草を加えて、調合した。


「あれ? いつも通りの回復薬だ。う~ん、回復薬に使うものじゃないのかな?」


 自分の予想通りにいかなかったが、香織に焦りや苛つきは無かった。錬金術に失敗などつきものだからだ。寧ろ、上手く行かない方が楽しいと考えていたりもする。


「……薬草の代わりに聖草を使う?」


 今度は、薬草を使わずに聖草で回復薬を作り始める。聖草をすり潰し、水を加えて抽出していく。抽出された液体は、白くなっていた。その後、濾過したものを火に掛けた錬金釜の中に入れる。二分程反応させていると、透明な液体へと変化した。香織は、すかさず鑑定を行う。


 ────────────────────────


 聖薬(触媒):聖属性を含んだ触媒。調合、錬成時に加えることで、聖属性を付与することが出来る。さらに、聖属性を持っているものを強化する事が出来る。


 ────────────────────────


「触媒になった。う~ん、聖属性の触媒か……取りあえず、回復薬に入れてみるかな」


 香織は、さっきと同じ手順で、聖草の代わりに聖薬を入れて回復薬を作る。すると、白く濁った回復薬が出来上がった。


 ────────────────────────


 回復薬・聖:聖属性の回復薬。大きな傷を治すことが出来る。さらに、一時的に再生を付与する。


 ────────────────────────


「再生の付与か……それに、これだと千切れた四肢までは、元に戻らなさそう。でも、効力が弱まる代わりに付与効果をもたらすって感じかぁ。これは、触媒によっては、かなり重要そう」


 再生の能力が付与されるのは、再生を持っていない人だけだ。香織達は、既に持っているので、あまり重要視していない。玲二達からしたら、喉から手が出る程欲しいと思えるものだ。


「う~ん、金属には、どう反応するかな?」


 香織は、試験管に聖薬を入れてから、鉄片を浸ける。そして、試験管立てに掛けて放置する。


「次は、これかな」


 香織が次に取り出したのは、黒く染まった草だ。


「これって、光を吸い込んでるのかな? それとも、そもそも黒いのかな?」


 これは、聖草の逆の薬草である暗黒草というものだ。


「これも同じように触媒に変えよう。聖草の逆みたいだし」


 ────────────────────────


 暗黒薬(触媒):暗黒属性を含んだ触媒。調合、錬成時に加えることで、暗黒属性を付与することが出来る。さらに、暗黒属性を持っているものを強化する事が出来る。


 ────────────────────────


 香織の考え通り、暗黒草も触媒になった。こちらも透明な液体になっている。


「……これじゃ、見分けが付かない。う~ん、触媒って全部透明だっけ?」


 香織は、自分が今まで作った触媒について思い出していた。


「普通に色付きもあるし、そんな事はないか。この二つの薬草で、色が付かない意味が分からないんだけど……仮に、これが未完成だとしたら……」


 香織は、二つの触媒を手に取る。香織には、鑑定があるので、どっちがどの触媒か見分けが付くが、普通の人には、どちらがどっちか分からないだろう。


「色々試してみよう」


 香織は、暗黒薬にも鉄片を浸けて放置する。そして、一つのビーカーを用意した。そこに、聖薬と暗黒薬を入れて、かき混ぜる。すると、ビーカーの底の方に灰色の結晶が出来た。


「これは……中和した感じ?」


 結晶を手に入れるため、一度濾過をする。その後、濾液を蒸発皿に移して、火に掛ける。


「この結晶は……」


 ────────────────────────


 混合結晶(聖・暗黒):相反する属性を混ぜ合わせることで、生成される結晶。


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「相反するという事は、火・炎と水・氷、風・雷と土・大地、光・聖と闇・暗黒って事かな。でも、何に使えるんだろう?」


 相反する属性を持っている混合結晶。しかし、その利用方法は謎だった。


「てっきり、反発すると思ってたからなぁ。妖精の鱗粉無しでの混合が成功したのは、収穫かな。でも、今まで成功した事は無いから、触媒の薬品に変える事で、成り立つ方式なのかも。今は、一対一で混ぜ合わせたけど、今度は、比率を変えてみよう」


 香織は、聖薬と暗黒薬の混ぜ合わせる比率を変えて、実験を繰り返した。結果、一対一での比率以外では、混合結晶は出来なかった。比率が変わると、多い方の触媒が勝ってしまい、少ない方が打ち消されてしまった。さらに、勝った方の触媒の効力が下がっていた。恐らく、打ち消した分、効力も下がってしまうのだろう。


「比率は、一対一じゃないとダメなのか。完全に拮抗した状態が、混合結晶を作る必須条件になるみたい。この結晶は、水に溶かす事は出来ないみたいだけど、魔力水や魔力油には、溶けるのかな?」


 香織は、混合結晶を入れたビーカーを二つ用意して、魔力水と魔力油を注ぐ。自動攪拌機に設置して、スイッチを入れる。


「えっと、この間に、他のやつの様子を確認しよう」


 香織は、まず、蒸発皿に移して、熱し続けていた濾液の様子を見る。


「蒸発させた方が、混合結晶を全部析出させることが出来るみたいだね。品質に関しても、何も問題なさそう」


 混合結晶を効率よく得るには、濾過だけでなく、蒸発乾固が必要みたいだ。


「鉄片の方はどうかな?」


 香織は、聖薬、暗黒薬に浸けておいた鉄片を確認する。


「おお、変わってる変わってる」


 試験管に入っている鉄片は、それぞれ色が変わっていた。聖薬に浸けていたものは白い鉄に、暗黒薬に浸けていた鉄片は漆黒に染まっていた。


 ────────────────────────


 聖鉄:聖属性を帯びた鉄。


 暗黒鉄:暗黒属性を帯びた鉄。


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「属性武器を作りやすくなりそうだね。暗黒鉄は、星空の黒影に使えるかも。これ、魔鉱石でも出来ないかな?」


 香織は、魔鉱石を、そのまま錬金釜に入れ、錬成を始める。前は、簡単インゴット製造機で作っていたが、香織自身やスキルが進化したことで、錬金釜にそのまま放り込んでも錬成する事が出来るようになった。


「進化すると、こういうところも出来るようになるのは、良いことだね。テキパキと進めていこう」


 魔鉱石をインゴットにしてから、一枚の薄い板に変える。そこから、小さく切り分けた二枚を聖薬と暗黒薬に浸ける。このまま反応するのを待つ。


「次は、攪拌していた方を見てみよ」


 魔力水と魔力油に入れていた混合結晶の様子を見る。魔力水の方は、結晶がそのまま残っており、魔力油の方は完全に溶けていた。


「魔力油には溶け込むみたい。でも、魔力油に、混合結晶の特性が見られない。う~ん、溶かして使うのは厳しいって事みたい。使うなら、インゴットにする時に入れるとかかな?」


 香織は、たった今思いついたことをすぐに実戦する。鉄鉱石を錬金釜に入れ、火に掛ける。鉄鉱石が溶けたところに混合結晶を振りかける。そうして、出来上がったインゴットは、白と黒でマーブル模様が出来上がっていた。


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 鉄インゴット(聖・暗黒):聖属性と暗黒属性が付与されたインゴット


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 二つの属性を持ったインゴットが出来上がった。


「さすがに、このまま武器は作れないよね」


 香織は、そう思いつつ錬金釜でナイフを作り出す。


「うん。無属性になっている。この分だと、このインゴットは、強化専用かな」


 混合結晶の使い方は、主に強化専用となりそうだった。これから、別の使い道が見付かる可能性もあるが。


「これはこのくらいにして、次の素材に移ろう」

「それは明日にしなさい」


 テントの入口が開き、咲が入ってきた。


「もうそんな時間?」

「ええ、明日の探索に響くわよ」

「うん、分かった」


 香織は、テントの中を全部片付けて、テントを畳んだ。そして、明日の探索に備えて、眠りについた。


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 香織の成果

 聖草、暗黒草から触媒を調合することに成功。

 更に、そこから混合結晶を精製。

 使い道に関しては、実験をする必要がある


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