表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
変わってしまった現代で錬金術師になった  作者: 月輪林檎
第二章 繋がり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

106/146

94.選考

 香織達は、玲二に呼ばれて、ギルド本部に来ていた。


「急に来てもらって、悪いな」

「ううん。それで、何の用なの?」


 香織は、玲二に呼ばれた理由が分からず、首を傾げる。


「そろそろアメリカへの遠征をするからな。その選考を手伝ってもらおうと思ったんだ」

「選考っていうと、戦闘能力で決める形ですか?」

「ああ、それと協調性でも判断したいと思っている。だから、今回するのは、個人戦とグループ戦をする事になったんだ」


 今回のアメリカ遠征は、北海道や沖縄以上に未知のものだ。そもそも、アメリカに無事に辿り着ける保証すらない。そんな中、戦闘能力や協調性に欠ける仲間を連れて行く事は出来ないのだった。


「それって、私達で判断してもいいものなの?」

「むしろ、香織達の意見を聞かせて欲しいくらいだ。ここら辺で、一番強いのは、香織達だからな。お前達の意見が、一番参考になると思ったんだ」

「う~ん、まぁ、ちゃんと判断出来る分からないけど、私は、良いよ」

「私も問題ありません。焔と星空は、どうする?」


 咲は、後ろにいた焔と星空に話を振る。


「私も問題ありません」

「私も大丈夫」


 焔と星空も了承した。


「よし、じゃあ、あそこの席に座ってくれ」


 玲二が指さす方向には、机と椅子が並べられた天幕があった。香織達は、そこに移動する。


「トーナメント制?」

「ああ、組み合わせは、完全ランダムだ。遠征メンバー希望者をごちゃまぜにしている」

「なるほど。もし、格上に当たっても、どうやって切り抜けるかが見れるということですね?」

「ああ。為す術もなくやられるのなら、資格無しだ。だが、上手く切り抜ける、あるいは、食らいつくことが出来るなら、一考の余地はある」


 ランダムなトーナメントだと、戦力に差が出来そうだったが、そこはきちんと考えてやっているようだ。


「後、三十分で始まる。少しの間待っていてくれ」

「分かった」


 玲二は、香織達から離れて、希望者達の元に向かった。


「意外と、アメリカ遠征に希望する人がいるんだね」

「そうね。未知の場所っていうのが、魅力的なのかしら?」

「それでしたら、日本の中にも行った事が無い場所が多いのでは?」

「万里達のいうとおり、外国ってだけで、憧れるから?」


 希望者が、何を持って希望してきたのか、香織達には見当も付かない。


「外国の憧れか……私は、特に無いなぁ」

「おばさん達が、いつも行っているのに?」

「うん。何か、お母さん達が仕事をしている場所って認識しかないや」

「そんなものなのかしらね。私は、少し憧れがあるけどね」

「そうなの!?」


 香織も知らなかった事実が明らかになる。


「憧れっていうよりも行ってみたいって感じかしら。アメリカじゃなくて、イタリアだけどね」

「イタリア? 何かあったっけ? ピザとかパスタとか、コロッセオのイメージしかないや」

「香織は、食べ物中心ね。私が行きたいのは、ヴェネチアよ」


 咲は、少し呆れながらそう言った。香織は、咲の言葉に、少しだけ頭を捻る。


「ああ、水の都って言われてるところ?」

「そうよ。あそこの景観が好きなのよ」

「ふぅん、じゃあ、色々と解決したら、皆で一緒に行こうよ」

「そうね。全部が解決したら、皆でゆっくりと出来ればいいわね」


 香織達がそんな事を話していると、玲二が帰ってきた。


「向こうにも説明してきた。そろそろ始める」

「分かったよ。私達は、ここで見ていれば良いんだよね?」

「ああ。試合の場には、結界を張るから、ここまで被害が来ることは無いはずだ。安全に観戦しつつ、判断してくれ」

「オッケー」


 香織達の席の近くに、玲二も座る。玲二は、魔道具であるメガホンを手に取る。


『これより、アメリカ遠征メンバー選考を行う! 第一試合に出る二人は、結界内に入れ!』


 玲二の言葉に、二人の冒険者が結界の中に入った。これより、アメリカ遠征の選考が行われる。


 ────────────────────────


 試合は、順調に進んでいった。ランダムという条件の中で、冒険者達は、白熱する試合を見せていった。どの冒険者も自分より強い相手とぶつかっても、諦めるということをしなかった。


 そんな中、万里と恵里は、なんと決勝まで残ったのだった。つまり、今から行われるのは、万里と恵里の姉妹対決だ。


「まさか、万里と恵里が残るとはな」

「そうだね。正直、他にも強い人達はいたけど、二人とも機転を利かせて、何とか勝利を捥ぎ取ってたね。これなら、二人とも問題なく合格になりそう」

「後は、協調性がどうなるかね。まぁ、二人なら大丈夫だとは思うけど」


 そんな事を言っている内に、二人の試合が始まった。


 万里は、魔法使いの恵里相手に、正面から突っ込んでいった。それに対して、恵里は、水の槍を生成して、万里に向かって飛ばしていく。


「やああああああああああ!!」


 万里は、腰に付けたマジックバッグから、盾を取り出して構えながら走る。恵里の放った水の槍の全てを盾で防いでいく。咲のように剣で魔法を斬るような離れ技を使う事が出来ないので、こうして対策をしているのだ。


「じゃあ、こっち!」


 恵里は、杖を地面に向けて、魔法を発動する。万里の進路から、土の槍が万里に向かって飛び出してくる。


「やあああああああああああ!!」


 万里は、剣と盾を使って、土の槍を防いで先に進んで行く。このままでは、万里の間合いまで詰められてしまうのではないかと思われたその時、恵里が新たな行動に移った。恵里に防がれ、壊された土の槍の破片が、ひとりでに浮き上がって、万里に襲い掛かったのだ。


「!?」


 万里は、全方位からの攻撃に対応せざるを得なくなり、進む速度が格段に落ちた。その間に、恵里が水の槍を大量に作り出して、万里に向かって放っていく。


「これじゃあ、進めない……」


 万里の顔に焦りが浮かぶ。恵里の怒濤の攻撃に対応することで精一杯だからだ。


「これで終わり!!」


 恵里は、地面に電気を流す。万里の周りは、恵里が放っていた水の槍で水浸しだ。つまり、電気が流れやすい状況だということだ。


「やばっ……! あああああああああああああ!!」


 万里は、感電して、倒れた。


『そこまで! 優勝者は、恵里だ!』

『『おおおおおおおおおお!!』』


 観客達の歓声が上がる。その中を、香織が駆け抜けていき、万里の元に駆けつける。すぐに、アイテムボックスから回復薬を取り出して、万里に掛ける。香織の回復薬のおかげで、万里の傷は完全に回復した。


「香織さん、ありがとうございます」

「ううん。私が、勝手にやっている事だから気にしないで」


 万里達が、全力で戦う事が出来た理由は、香織の回復があった事が大きい。この選考戦で、怪我を負った人達は、もれなく香織による治療を受けている。次の試合にも響くであろうと考えた香織の気配りだった。


 この後に、グループ戦も執り行われた。その中でも、万里と恵里は大きな活躍を見せた。そうこうして、選考のための試合が全て終わる。


 この結果と、香織、咲、焔、星空、玲二の意見を踏まえて、アメリカ遠征のメンバーが決まった。その中には、万里と恵里の名前もあった。

読んで頂きありがとうございます

面白い

続きが気になる

と感じましたら、評価や感想をお願いします

評価や感想を頂けると励みになりますので何卒よろしくお願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=312541910&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ