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93.調査の報告

 昔ながらの娯楽を復活させて、暇つぶしをしていた香織達の元に、綾子がやってきた。


「こんにちは、香織さん、咲さん」

「中根さん? どうしたんですか?」

「代表から、報告書を渡すように言われまして」


 綾子は、香織達に紙の束を一つ渡す。


「報告って言うと、調査のやつですか?」

「はい。とは言っても、東北の方の報告のみですが」


 沖縄の方は、まだ船が完成していないので、調査を済ませることが出来ていない。


「そうですか。えっと……」


 香織と咲は、並んで報告書を見ていく。書いてあるのは、通った大体のルートとモンスターの分布、そして、住人の有無だった。


「意外と、住人の方々はいたんですね」

「はい。交流をした住人の方々からは、理解を得て、我々に協力して貰えることになっています。主に、食糧関係での支援を頼みました」

「モンスターに関しては、それほど強いモンスターはいないみたいですね?」

「冒険者の実力が上がっているということもありますが、危険なモンスターは発見されていません。それに、フィールドダンジョンなども見付かっていないので、比較的平和といえるでしょう」


 まだ、東北地方を全て探したわけではないが、フィールドダンジョンを発見することはなかった。


「でも、ダンジョンは、結構あったみたいだね。そう考えると、日本にも沢山のダンジョンがあるんだね」

「そうね。ここら辺でも、かなりの数があるものね」

「ダンジョン自体の難易度もそれほどではないらしいです。周辺住人でも対応出来るくらいと言われています」


 他に書いてある事はなかった。だが、東北地方にも、繋がりを作る事が出来たみたいだ。


「今は、関西の方にも人員を派遣しています。香織さんからの許可をもらったおかげで、沖縄だけでなく、四国や九州とも繋がりを得られそうです」

「なるほど。そういえば、四国や九州も海に隔たれていますもんね」

「はい。唯一繋がっていた橋は、どちらも壊されてしまいましたので、海を渡るしかありませんから」


 本州と四国、九州を繋げる橋は、既に壊れている。歩いて渡れないこともないみたいだが、いつ完全に崩れてもおかしくないのだった。


「色々と問題も山積みになっていそうですね」

「はい。今度は、北陸などにも向かう事になりそうです。何かあれば、また報告させていただきます」


 綾子は、そう言って立ち上がる。


「ありがとうございました。坂本さんにもよろしくお伝え下さい」

「はい。沖縄の方でも進展があれば、報告に来ますから」


 綾子はそう言って、帰って行った。


「さすがに、どこも危ないってわけではないんだね」

「そうね。私も少し遠くまで行ったことがあるけど、そこまで危ない土地って感じはしなかったわ。寧ろ、この周辺のダンジョンの方が危険だったもの」

「もしかしたら、人が多くいた都市の方が、危険なモンスターが出現しやすくなっているのかもしれないわね」

「まぁ、確証はないけどね」


 香織達がそんな事を話していると、空から声が降り注いできた。


『白龍を倒したことで領空権が委譲します。ロシアの領空権がビアンカ・スヴァーロからアクリーナ・アダモフに委譲。白龍討伐の功労者である、アクリーナ・アダモフに報酬として進化の権利と武具を授与します。

 支配者の討伐を確認しましたので、一部の情報を解禁します。モンスターは、澱んだ魔力が集まって出現します。それは、荒廃した場所や森の中に溜まりやすくなっています。さらに、死体や人の悪意などが原因で出現することもあります。現在開示出来る情報は以上となります』


 今回開示された内容は、モンスターの出現する原因だった。


「死体とかからって事は、きちんと火葬しないといけないって事かな?」

「そうね。後は、香織みたいに材料にしてしまうかね。後は、人の悪意っていうのが、よくわからないわね」


 香織達は、人の悪意というものをどう判断すればいいのか迷っていた。


「悪意を持ったからって、すぐにモンスターが出現するわけではないみたいよね?」

「うん。悪意も魔力と一緒で集まるとダメみたいなのがあるのかもね。悪意がどのくらいのものか分からないけど、複数の悪意が集まったら、モンスターが生まれるんじゃないかな?」

「これは、全てが解決した後に、響いてきそうだね」


 今のところ、全員の意思が一つにまとまっているが、全てが終わり、皆の考え方がバラバラになれば、この問題が表面化してきそうだ。


「それにしても、結構、解放されてきたね」

「そうね。日本は全権利。後は、アメリカ、ヨーロッパ、アジア、中東、ロシアの領空権が解放されたわね。空を飛ぶだけなら、結構遠くまで行けそうだわ」

「後は、南アメリカとアフリカ、オーストラリアだね」

「空の解放はね。後は、領海権と統治権よね。全部、解放すれば、世界が元に戻るのかしら?」

「どうだろう?」


 これに関しては、正直、香織も答えを出すことは出来なかった。


 ────────────────────────


 それから、三ヶ月の時が過ぎていった。その間に、特にこれといった事件は、起きなかった。


 だが、いくつか、進展したことがあった。それは、沖縄の周辺諸島の調査だ。冒険者達が全力で調べていった結果、周辺諸島にも住人は存在しなかった。周辺諸島の家々も全てが湿っていたらしい。つまり、本島で水位が上がった影響が、周辺諸島にも及んでいたということになる。その結果が、これなのだろう。


 他にも、アメリカに行くための準備などが進んでいった。玲二達ギルドは、新たな飛行機の製造と船の製造が進んで行った。パイロットの育成も順調に進んだ結果、パイロットが一人増えることになった。おかげで、北海道や沖縄を繋ぐルートが、完全に完成したことになる。


 玲二達が、このような事をしている間に、香織は、様々な発明をしていた。そのほとんどは、形になってはいないが、設計図として紙に残っている。この三ヶ月で、香織は、自身が発明した道具などを全て設計図として紙に書き記していた。


 何か重要な意味があってのことでは無く、ただ単に、紙に書いておいた方が、後で手直しなどをする際に、考えをまとめやすいと感じたからだった。



 この三ヶ月を、香織達は、このように過ごしていった。


 そして、雪が溶けていく頃、アメリカ遠征のための部隊選考が始まろうとしていた。

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