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仮タイトル ~しっくりくるタイトルが思い付かなかったけど、長いタイトル付けとけば何とかなるに違いない~  作者: イキヌキノイキヌキ
プロローグなどではないが、主人公の人柄だけは分かるかも知れない3つの話
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 ねこ背で帰路を歩いたせいで背中に凝り固まった重さがのしかかり、心労も相まって普段の倍疲れを感じる。背筋を伸ばすと肩甲骨あたりから変なゴキッとヤベェ異音がして肩を擦さすった。

 店の入り口扉に手をかけると、ニスとツヤ消しが塗られた木板の色は闇混じりのオレンジが染めており、夕暮れももう終わる。

 丸一日使った時間と、近日中にあるであろう謁見に感情がこもった大きな溜め息が出る。


「ただいま、戻りましたぁー」

 自分ながらどこから出たと言わんばかりのやる気のない声だ。

 吸い込んだ空気は新築が未だ抜けていない匂いが肺に入って来て、むせそうになるのを耐えた。

 夕暮れる外より少し明るい。


 青髪メイドは立ちあがり一礼し、「おかえりなさいませ。××様」近寄ってきて迎え入れる。

 エプロン部分の白い部分が反射して本日は一段とまぶしい。

 しっかりした格好の上、かしこまられるとボロボロな自分が脳内で対比されて情けなく感じるんだよなぁ。

 ボサついてはいないだろうが、髪の毛を直すように右手でついつい押さえてしまう。

 彼女は日中接客をしていたのに今の時間まで髪や服に毛程の乱れもない。というか、この人が崩れた姿を見せた事がない。

 身なりも風格も怖いほどきちっとしている。

 常日頃から気を張っていてピリつくプレッシャーを発する上に、こちらにプレッシャーを強要してくる錯覚を起こす。

 そんなせいか、好いている人は多くない。もう少し柔和になれば人付合いも円滑になるのだろうけど、なれないだろいなぁ、性格上。

 自分達はまあまあな時間の付き合いのせいか慣れしてしまった。諦め慣れ。そんな馴れた人物でさえ、威圧的に発するからね。今でも気にすれば気にはなるし。

 それに加え、腰に携える使い込まれたモーニングスターのアンバランスさが凶悪さを滲み出すのだから、新規顧客はハードルが高い。これが俗に言う初見殺しである。

 何でそんな奴が店番を? という疑問はごもっとも。普段は店番がいて警備専ですが、いなければ店を回している人も少ないので警備兼です。雇う金はあっても、特殊な個人業は人選は難しい。

 その怖さ気な見た目は警備で丁度いいのだが、マジで単純に戦闘力が高く強いのを目の当たりにしているから二重に怖い。戦闘メイドの血筋を感じる。

 あの時の一件もあるから増して怖いさ。

 自分の中の敵にしてはならないランキングの三本指に入る。


「お疲れ様です、××さん。店主さんは?」


 ぱっと見、店先には姿は無い。

 性格上店の前でうろうろしていてもおかしくないのだが、珍しいこともあるものだ。ここにもいない。

 ××の肩越しに奥を覗き見ると、従業員室まで同じ程度明るさが続いている。


「お嬢様は奥でお待ちになっておられます」


 武器が並べられたショーケースと乱雑に入った箱の間を進む。

 壁に飾られていたはずの大斧が無いのに気が付き、普段なら売った売れたと一喜一憂するのだが、疲労が勝っていた。

 レジカウンターを横切り、奥を隠す暖簾を手で避けて従業員室を見ると三人がテーブルを囲んでいた。


「戻りましたー」

 疲労を隠すように、少しだけ覇気を入れた、覇気の無い普段通りの声量で挨拶をした。


「無事でなによりです。……それで、どうでしたか?」

 顔を見て早々に尋ねる店主は、今朝の見送り程ではないが不安そうな顔をしていた。

 非戦闘能力に加え、送り出した本人だからそういう感情は持って然るべきなのだろうが、無駄な謙虚さが鬱陶しかった。

 様々なにしても変わらないだろう感が混在して全部が面倒になったので、何も答えずに重かった荷物を置く。重量に似合ったドスンと音が鳴る。

 店主はその麻袋の紐を解き、二人はその姿を固唾を飲んで見守る。

 袋の中身は黄金の七ポンドのボーリング玉では無い、丸く加工されたオリハルコンである。

 魔力を帯びているのが手に取らずとも感じ取れるその凄さは、初めて見た時は感動もした。

 希少であるそのお値段なんと、店頭価格金貨198枚。立派な家買える。

 先日はす向かいの店で見のだけどね。見てしまったんだよなぁ。見たら欲しくなるのは属性能力者の心理。皆の同意を得て買おうとえいえいおー的に一致団結した訳ですよ。

 店長のお貴族お家パワーを使えば、新進の自分達でもポンと手に入るが、自分達の力だけ欲しいという俺のワガママを口八丁で提案した。

 すぐに手に入れたいという欲より、時間は掛かろうと自分達の力で手に入る達成感が欲しかった。

 自分ら新規創業はそういう段階を踏むというシンデレラストーリーの見映え大事に、事の迅速さではなく長期戦を重視していた。

 手始めに自分は小銭稼ぎのクエストを受ける。――クエストに憧れていた訳ではないですよ? 確かに冒険に出られない事は少ーしだけ心残りですが、あくまでも正当な一般的稼ぎ手段です。

 受付の勧める貴族の匂いがするクエストを回避し、初心者クエストを受付嬢たじたじ気味に押し通した。

 慎重に進めたつもりでしたが、初クエストにやや舞い上がっていたんです。自分の見立て詰めが甘かった。

 相手が一歩上手で例の少女のお礼でオリハルコンを受け取る結果になったのだ。

 ものすごーく欲しながらも断ったのですが、少女のアグレッシブさに完敗しました。咄嗟に思い浮かんだであろう舌を噛もうとする最終手段は反則でしょ。そこまで冷徹になれませんよ。

 帰り道の売り切れも見てしまった。


「よくやってくれました! これで新な武器の製造にかかれます!」


 興奮気味におっしゃる店主は立ち上がり胸の前で拳まで握る。

 二人分のおーという歓声に拍手が足さる。

 ……ああ、拍手。何拍か遅れて、拍手をしてみましたが、雰囲気おーけー? このアクションで大丈夫そうですね。空気読みました。ぱちぱち。

 意味わかんなかった内輪ノリも九分九厘は読めるようになっている。そう考えると慣れって怖い。


 やっぱり、現品調達を不思議に思わないですよねー。

 現金支給でなく現品支給。壊れたらしき荷車の瓦礫に埋まっていたのですが、盗人に取られなくて良かったですね。きっと気配は消していたのだろうけど、見張りとか居たんでしょうね。

 考えるのが疲れる。


「××の本日の功労をねぎらいまして、(ささ)やかながら豪勢な食事を用意しました。湯も張ってありますので、どうぞ本日の疲れを落として下さい」

もっと早く気付くべきでしたが、読み返し抜けていた本来の四話になります

以降一つずつずれるのでご注意を

一時的にタイトルは『抜けていたので追加』としときます

引き続きお楽しみください。


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