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焦がれる刀のシャルーア  作者: ろーくん
女達の強さ

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第49話 天然な美人局



 彼女一人で町を歩かせたら、また良からぬ連中が寄ってたかってくるのが目に見えている。そのままにしておけないが、オキューヌにしてもシャルーアにいつまでも関わっているわけにもいかない。



 結局、オキューヌは何人かの兵士を新たに呼び寄せ、シャルーアの用事が済むまで彼女の護衛につくよう命じ、自分の職務へと戻っていった。


『いいかい、お前達……彼女はでっかい “ 釣り餌 ” だと思いな。怪しい輩(バカ)が簡単に引っかかる上等な餌だってね。……そうでも思わないとやってらんないよ』


 最低限しか聞かされていない兵士達は、10mほど先を行く美少女の背中を眺めつつも上司の言葉を思い出していた。


「あの少女は要人? どこぞのお偉いさんの御息女か?」

「ありえるな。どことなくお嬢様っぽい雰囲気がある……オキューヌ隊長が多くを説明されなかったのはそういう事なのかもな」

「確かに。少女ながら、この色香と美貌はそんじょそこらにないレベルだ、いいとこのお嬢様なのは違いないんだろう……っと、どうやら早速お仕事のようだぞ」



 ・


 ・


 ・


「ねーねー、お嬢ちゃん一人かい? 暇ならオレたちと遊―――」

「よし、そこまでだお前達。ちょっとあっちで我々とお話をしようか?」

「ゲッ、ぐ、軍の兵――――むぐぐぐっ!?」

 チンピラめいた若者達は、あっという間に鎧の兵士達に羽交い締めにされて連れていかれる。


「あ、あの……お助けしていただき、ありがとうございます?」

 声をかけられたと思ったら声をかけてきた相手が数秒でいなくなった。シャルーアは何が何やら分からず困惑しながらも、兵士に頭を下げて感謝を述べた。


「いえいえ、妙な輩は我々にお任せくださいどうぞ何の心配なく、この町をご堪能いただければ幸いですゆえ」

 ニコリと紳士的な笑顔と礼儀を尽くす兵士は、軽く会釈をするために上半身を傾斜させる。そこへタイミングよく……


 ブルンッ


 頭を下げていたシャルーアが逆に上半身を起こした。その勢いで彼女の豊かな胸が大きく揺れ上がってきた。

 身長差と視線の角度が、兵士の両目にその動きをバッチリと収めさせる。加えて比較的近い距離で露わになった褐色姫の美少女たる顔立ちが添えられ、強く魅せられた。


「っ! ………な、なるほど、良からぬ者どもが声をかけるのも分らぬでも……ハッ!? い、いえ何でもありません、では我々はひとまずこれにて失礼!」

 兵士はつい顔が真っ赤になったのを誤魔化すように、勢いよく挨拶してシャルーアから離れていった。


 ……そして、もとより距離をあけて尾行気味に護衛していたとはいえ、ここで彼女から大きく離れてしまったことは、彼らの任務からすれば大きなミスであった。




 ・


 ・


 ・



――――――とある路地裏の細い通り。


「あの……どちらへ行かれるのでしょうか??」

 シャルーアの腰と肩に手を回し、押すようにして半強制的に移動させる男は、背の低い壮年の、いかにも醜い雰囲気の男だった。


「ひひっ、なぁにここじゃあ何だからよぉ。落ち着ける場所にご案内してやろうってぇのさ」

 褐色……というには色悪く、灰色じみているその肌は一見すると病人っぽい。

 しかし卑しくもギラついた(まなこ)は生気に満ちていて、いかにも狙った獲物は逃がさないといった風な破廉恥(ワッファ)漢だ。


 その名をドレサック。この国のみならず周辺諸国でも指名手配中の犯罪者であった。



「(カラダに触れても嫌がらねぇ……どれ)」

 平然と、まるで当たり前のように男の手がシャルーアのお尻を掴む。服の上からではない。服の隙間から入り込ませてこれでもかと揉み込む。


「……? あの、何か……??」

「あーあー、気にすんな。別に大した事(・・・・)はねぇ……そうだろぉ?」

「あ、はい。そうですね、大した事(・・・・)ではないです」

 男にとって幸いだったのは、シャルーアが行き過ぎたセクハラ行為にさえ、嫌悪感を抱かない性の価値観の持ち主だったこと。


 お尻を撫でまわし、その艶やかな柔肉を揉み込すらしたところで彼女は怒ったり叫んだりしない。


 男女の交流の域として当たり前のことだという認識を持っている以上、本番以外のあらゆる卑猥な行為は、シャルーアには取るに足らない行為であり、良くて挨拶などと同じレベルで、男女交流の一環としか考えない。


「(こいつぁとんでもねぇ温室育ちだぜ、ふへへ、久しぶりに極上の獲物だな)」

 この町でも名うての痴漢……それも指名手配されているほどの重犯罪者でその魔の手にかかった女性は数知れない。


 そして彼は、自分が徹底的に楽しんだ後にはその女性をアサマラ共和国に売っぱらって大金をせしめるという非道まで行っている者―――そのド外道の牙がまさに今、シャルーアに突き立てられようとしていた。




 しかし彼にとっての不幸は、シャルーアが傭兵の助手として活動し、傭兵ギルドに出入りしているとは知らなかった事……



 ムニュ


 それは、男がシャルーアの豊かな2つの実りも確かめようと掴むのとほぼ同時だった。


「…!? お、おい、アイツは指名手配の!!」

 シャルーアを見失って大慌てで探している兵士達とは別に、町を巡回していた別の兵士達が路地裏の二人を見つける。


 何よりシャルーアの身体に手を入れている男の風貌を見て、彼らは迷いなく一気に走り出した。完全に犯罪者捕縛モードの兵士達に、ドレサックはしくじったと慌てだす。


「おい、娘っ、こっちだこっち! さっさと来いっ」

 路地裏を今来た方向に戻ろうとする男。だがシャルーアはそのまま兵士達に少しでも近づこうと歩いていく。


「(くっ、なんだぁ!? コイツも力はねぇが、オレ様も非力な方だ、無理矢理引っ張ってくのは無理か! ……もったいねぇがこれ以上コイツにこだわってる場合じゃねぇなっ)」

 手を放そうとした。お尻を揉んでいた片手は簡単に抜ける、が――――


「な、なんだぁ?? 乳から手が…は、離れねぇっ、何かくっついてっ???」

「あなた様がどういった御方かは存じません。ですが " 指名手配 " というものでお顔を拝見しておりました。兵士の方々がお探ししていらっしゃったようですよ、さあ参りましょう」

 シャルーアは、あくまで男が犯罪者だという認識はない。そもそも指名手配が何なのかも理解はイマイチだったのだ。

 それは、善悪云々はともかくとして、とにかくその指名手配の顔の人間を探している他の人がいるということ―――いわゆる尋ね人を探すシステムだと彼女なりの理解をしていた。

 なのでシャルーアにドレサックという男が悪人であるという意識は今もこれっぽっちもない。むしろ兵士の皆さんのところにお連れするのは善行で、彼にとっても良いことなのだろうと本気で思っていた。



 ……そして、オキューヌが別れ際に与えた特殊なブラが効を奏していた。


『強く掴まれると表面が破けて粘着する―――ま、小難しい説明はいいか。とにかく一人で町ん中をウロウロするならソレ付けときな。もしかすると面白いモノが釣れるかもしれないからね』


 男の手は、胸を思いっきり揉んだ状態のまま離れない。互いに非力な人間なれど、僅かにドレサックがシャルーアを引っ張り引きずるカタチで懸命に逃げようとしている状態。


 しかし遅々とした逃走は、迫る兵士達を振り切ることなど不可能。

 

 町の治安の目をかいくぐって犯罪を続けてきた悪名高き痴漢はこの日、あっさりと捕まることになった。







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