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焦がれる刀のシャルーア  作者: ろーくん
遊翼なる王

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第25話 地に伏す凶竜 ― アズドゥッハ.その1 ―



 アイアオネの町を出てから3日後、彼らは標的と遭遇していた。




「ぬぅん!! ……ほう、この私の拳をかわす(・・・)か、分かっておるではないか」

 ミルスの剛拳をアズドゥッハは、這いつくばっていた状態から身を起こしてそのまま大仰なバックステップで回避。そして憎々しそうに睨み返していた。



「シャルーア、絶対に離れるな! 何ならしがみついていろ!」

「はい!」

 リュッグは、事前に提された作戦には正直あまり乗り気ではなかった。何せリュッグとシャルーアは安全な後方で防御に専念し、ミルスが最前衛を務め、フゥーラがリュッグ達の前、ラージャはミルスのすぐ後ろという布陣。

 たいして職の誇りなどにこだわらないリュッグでさえ、プライドを逆撫でられるような気分を覚える。


 加えて不安も大きかった。



「(確かに今の攻撃は、当たればそれなりのものだろうが…)」

 ミルス達の実力が分からないのだ。


 任せて欲しいと自信たっぷりに言っていたが信用に値しない。そもそもアズドゥッハ討伐に赴くこと自体、リュッグは反対だった。なので…


「シャルーア、いつでも逃げ走れるようにしておけ。劣勢即撤退だ、いいな」

 ミルス達を見捨てる覚悟で逃げの態勢を取る。

 そもそも理由は分からないが、アズドゥッハ討伐は彼らの目的。こうして付き合ってついてくる義理はリュッグ達にはない。


 なので冷酷だが、見捨てることを前提とした上でリュッグは武器を構えていた。


「問題ありません、リュッグ様。あの敵に対し、ミルス様が遅れを取ることはまずないでしょう。ご心配は杞憂におわりますよ」

 フゥーラは自信たっぷりにそう言う。確かに見た目には強そうだが、彼の実力のほどがたとえアズドゥッハよりも高いものだとしても、傭兵目線から言えばそれは何の意味も持たない。

 強力な妖異(ヨゥイ)ほど戦闘能力の優劣など些細な要因にしかならない。なぜならそういった相手は、強さよりも経験がなければ対処しきれないものだから。


 ここは競技場でも道場でもない。大自然を舞台とした生死に全力を傾ける場だ。仮にミルスがアズドゥッハを凌駕する実力があっても、それを悟った敵は一目散に逃走する。

 なので強力な妖異(ヨゥイ)を倒しきるには絶対的に経験が必要になってくるのだ。


「(分からない…彼らの自信満々な態度は一体何なんだ?)」




 ・


 ・


 ・


 シュゥバッ!!


 特徴でもある長い尻尾が、まるで長剣のように振るわれ、襲い掛かる。しかしミルスはそれを避けることなく……


 ガッシッ!!


 掴んだ。


「なるほど、かなりのスピードだ。しかしっ」

 そしてそのままぶん回す。


「おおおおおおおッ!!!!」

 その姿は確かに豪傑めいた容姿によく似合う。だが立てば巨大熊にも匹敵する体躯の魔物を猛烈に振り回すのはさすがに異様で、アズドゥッハの他の仲間たちも驚愕し、恐れるようにミルスから距離をあけた。


「逃がさぬっ、フンッ!!!」

 散々に回された後、放り投げられたアズドゥッハの身体が仲間達とクラッシュ。うちの一体にその鋭い尾が刺さった。


『ギャァァァァアアァッ!!!』

 苦痛の咆哮。それが引き金となったのか、アズドゥッハ達の表情がみるみる変わっていく。



 ササササッ


 態勢を立て直したかと思うと、ミルスに対して3匹。横に回り込むように2匹が迂回し、後方にいたラージャやフゥーラ、リュッグたちをも狙える位置につけた。


「やはり素早いっ、それにこの地面で怖ろしく静かな動きをするっ」

 辺りは荒れて岩石転がる剥き出しの大地。これでも砂漠と呼ばれる環境の一種だ。この地面をあそこまで静かに素早く移動するのは人ではまず不可能だろう。


 リュッグはそう判断し、想定以上にアズドゥッハが危険と判断。自分の腰側面あたりを掴んでるシャルーアの肩に手を置き、いつでも彼女を担ぎ上げて走りだす準備をする。


 そして逃走を気取られぬよう、用意してきたボーガンを構えて表向きは攻撃の態勢を取った。


「ラージャ。右の方、いける?」

「もっちろん。じゃフゥーラは左のよろしくー」

 そう言葉を交わし合った二人の少女。次の瞬間、ラージャが言葉通りに右へと飛び出した。


「なっ!!? 何をやっているんだっ、死ぬ気か?!!」


 当然リュッグは驚く。彼でなくとも同じように叫んだことだろう。しかし、その叫び声がラ―ジャの耳に届くころには、彼女は右側に展開していたアズドゥッハの元に到着。そして―――


『グガガァァッ!!!』


 アズドゥッハがものすごい速度で立ち上がり、中腰気味の態勢から少女に噛みつこうと口を開いた。


「ほいっと!!」


 ザクッ!!


 しかしそこに、ラージャは何やら手で握れるほどの太さと長さのある針のようなものを、アズドゥッハの口内に突き刺す。


『ギギャァオオオッ!??』

「これでよしっ、キミはもうおーしまいっ!」


 …ビシュゥリッ!!


 ごく一瞬、アズドゥッハの全身から放電のような現象が生じたかと思うと、その目がグリンと回って地面に伏した。


 倒れたアズドゥッハの1頭は口から泡を吹き、目の周囲から薄っすら煙をあげている。

 再び動き出す気配は微塵もなかった。



「……あれは、何をなさったのでしょう??」

「わ、分からん。俺にも何をしたのかサッパリだ…?」

 リュッグとシャルーアが唖然としていると、反対からもう一頭のアズドゥッハが突進してくる。


「なるほど、なかなか頭も洞察力もありそうですが、貴方の相手はこちらです」

 遮るように、フゥーラが割って入る。


 しかしアズドゥッハは勢いを殺さず、そのまま彼女へと襲い掛かった。






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