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焦がれる刀のシャルーア  作者: ろーくん
先んじる色は囲う手段

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第189話 リュッグと進化した子供達




「間違いありません、それはママですね」

「そ、そうですか……」

 さすがのリュッグも少しだけ引き気味に話をする。彼以上に顔を引きつらせているのはオキューヌの兵士達だ。


「(本当に大丈夫なのか? 会話が出来るといっても魔物……だよな??)」

「(分からん、分からんがとりあえず敵意はなさそうだ、今のところは)」

「(オキューヌ隊長も平然とはしているがお顔は真面目なままだ)」

「(もし相手が急変したら即座に対応する気でいるのだろう)」

「(我々も気を抜かぬよう、常に注意していよう)」





――――――場所は砂漠のど真ん中。少し丘になって隠れるようにくぼんでいる中に、小さなオアシスがあった。


 そこで暮らしていると(おぼ)しき謎の魔物達5体。通りがかったリュッグ達に物凄いスピードで迫ってきたかと思えば、とても丁寧に歓待してきた。


 全身が薄黄緑じみた灰色。だが姿形は比較的人間じみている亜人―――というよりも……


「(あっちの2体は、なんだかシャルーアに似ているような……?)」

 メス(?)と思われる2体は、その身体つきや顔立ちが完全ではないものの、どことなくシャルーアに似ている。もしこれで肌や髪の(・・)色まで人間のそれであったなら、本当に親子と言われても納得できそうなくらいに。


「(それにこっちの3体も、特定の1人の男性っぽい姿をしているが……擬態か? それとも遺伝? ……いや、シャルーアがもしも彼らの親ヨゥイに捕まって繁殖に利用されたのだとしても、時間的に生まれて成長するのが早すぎるな)」

 ほんの2~3か月で14~16歳ごろの人間と同等の姿まで成長する亜人型のヨゥイなど聞いた事がない。



 リュッグ達は知らないことだが、彼ら5人―――あの|タッカ・ミミクルィゾン《真似をする怪人》の子供達は、シャルーアと別れた後、さらに進化していた。


 しかもそれは、本来の|タッカ・ミミクルィゾン《真似をする怪人》の成長とは異なっていた。

 特にその姿は明らかに人へと寄る進化であり、従来の|タッカ・ミミクルィゾン《真似をする怪人》とは違う、かなり人間に近しい容姿へと変化していた。




 そしてそれは、シャルーアから受けた影響によるものであり、また彼らのシャルーアに対する敬意の念がその容姿の変貌に現れていた。

 もっとも、それだけではこうも人に寄った姿には成長しないだろう。彼らはそもそもからしてその生まれ自体、人間が関わっている。


 先祖の|タッカ・ミミクルィゾン《真似をする怪人》が代々、子を成すに迷い込んだ人間を利用してきた、その遺伝子がここにきて、シャルーアという外的刺激によって彼らに突然変異的な変化をもたらしていた。



「改めて、自己紹介をしましょう。俺はザーイムンといいます」

「ムシュラフュン、言う。よろしく、お願いする」

「母の仲間、俺、歓迎。ルッタハーズィだ」

 オスの3体は多少の違いはあれど、1人の同じ男性を模してバリエーション化したような姿をしている。その男性とは他ならぬジャッカルであった。


 彼らが “ 母 ” と慕うシャルーアと繁殖行為をしていた、実父が殺した男性を彼らは覚えていて、“ 母 ” を慕い尊敬するがゆえに、その相手をしていた者の容姿になることを深層意識で望んだ結果、ジャッカルに似たものへと少しずつ変化し、今に至る。



「私はアンシージャムン、よろしくね人間さん♪」

「エルアトゥフって言います。よ、よろしくお願いします」

 メス2体の容姿はリュッグ達には一目で分かる。シャルーア似だ。


 同じ女性である彼女らは当然、敬愛する “ 母 ” のようになりたいと願った。結果、やはり親子ほどの違いはあれど、とてもよく似た、型を取ってそのまま写したような体型や顔立ちをしている。


 もしこれが、シャルーアが行方不明になってから数年が経過した後での遭遇だったなら、彼ら5人は本当にヨゥイとシャルーアの子だとリュッグも思ったかもしれない。


「(しかしヨゥイに “ 母 ” と慕われるとは……一体何をしでかしたんだ、シャルーアは??)」



  ・

  ・

  ・


 ともあれ、リュッグ達にとって彼らに遭遇したのは悪くないことだった。


 |タッカ・ミミクルィゾン《真似をする怪人》達が知る限りの事ではあるが、シャルーアがどうしていたか? どこへ向かったかなどの事情が判明した上に、砂漠の横断途中、オアシスで休息を取れるのも非常にありがたい。



 さらに、その代価は意外なもので済んだ。


「まさか魔物に服を作ってやることになるとは思わなかったよ、人生何が起こるかわかんないもんだね」

 オキューヌが肩こったと言わんばかりに、手にしたコップの底で自分の左肩を叩く。焚火の前の、丸太を横倒しにした椅子に腰かけた。


「まぁ、あのままというわけにもいかないですからね」

 彼らは器用だった。いや、その言い方は無礼だろう。何せ彼らの技術は、普通の人間と同等のものがある。下に見るべきではない。



 オアシス湖畔に建てられている小屋は彼らが建造したもので、地面の砂を掘り、岩や泥で地盤を固めた上で、ヤシから切り出したと思われる木材を組んで作られている建築は大したもの。

 何故か遠目から見ると、引く馬のいない大きな馬車の荷台のような形をしている奇妙な外観を除けば、砂地の上にこれほどしっかりとした建築を行うのは、並みの妖異には絶対に不可能な高度な(わざ)


 ただ、彼らの知識は偏っていた。


「服の作り方を知らない、っていうのが意外だったねぇ。さすがに素っ裸で応対され続けるのは目のやり場に困るわな、ハハハッ」

 何せオス3体は、体格に大小の差はあれど基本は筋骨隆々で、人間以上の生殖器を当たり前のようにブラブラさせてる。


 そしてメス2体も、豊な胸を惜しげもなく揺らしながら股も隠すことなく放り出して、普通に行動している。

 人に近い容姿なだけに当然リュッグや兵士達も目のやり場に困った。




「ムーとナーは平然としてましたけどね。あの二人は何でも面白がるところがあるので、たまにその性格が羨ましく思いますよ」

 リュッグは知らない。あの双子は男女の裸体など見慣れている地獄のような環境で暮らしていたことがあるということを。


 双子姉妹はシャルーア同様、異性だろうが同性だろうが全裸や生殖器を眼前にしたところで動じることなどない、哀しい過去を持っている。


 二人の性格が、その暗い過去を感じさせないだけだった。



「ま、軍でも男女平等だからね。基本的にウチのヤツらも女兵士の裸とか普段から見慣れてるはずなんだが……」

 訓練の後の着替えや汗を流す風呂場など、古い軍事施設は全て男女共用だ。新兵時代ならともかく、それなりの年数軍人やってる男どもが、異性の裸で今さら動じるものではない。


 ましてや相手は肌の色の違う裸族のような魔物―――それに動じるだなんて、上司としてオキューヌは情けないと軽く憤慨する。


「まあ、最低限とはいえ、隠すべきは隠せるだけのものを与えましたし、彼らも喜んでましたから、とりあえずこの場の安全は確保できたということで、今夜は旅の疲れを癒すことにしましょう」

 リュッグはコップの中身を一息に飲み干す。


 何とも言えない妙ちくりんな奇縁に遭遇したことでどっと力が抜け、このところの疲れが出た気がした。

 とりあえず危険はないと分かった今、とにかく1晩しっかりと睡眠をとりたい。




 ……それは油断。


 遺伝子を継いでいないとはいえ、リュッグとの関係を知らないとはいえ、シャルーアを “ 母 ” と慕い、その容姿すら彼女に似る彼女ら(・・・)




――――――翌、早朝。


「あ、起きた? お疲れー、リュッグさん。さすがママーのお仲間、全然目ぇ覚まさなかったねー」

「お、おはようございます。ねえアンシージャムン、確か朝起きた時()人間の男はする(・・)んじゃあなかったかな?」

「おおー、そういえば。少なくともママーとあの男はしてたねー。エルアトゥフもよく覚えてた、えらい! ということでもう1回ずつ(・・・・・・)やろう」

「はい、私も頑張りますっ」




「……、……~~~?!! いや、違うから、頑張らなくていいっ!!」

 リュッグは、自分の左右にひっついている2体を引っぺがすように飛び起きた。




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