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焦がれる刀のシャルーア  作者: ろーくん
未亡嫁のあとさき

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第178話 シャルーアちゃんの一人旅




「皆さん。ここまでのお見送り、ありがとうございました」

 シャルーアは馬車を止めて降りると、整列した|タッカ・ミミクルィゾン《真似をする怪人》達に向き直り、深々と上半身を折り曲げた。




『かかさま……ぐすん』

 次女エルアトゥフ。


『俺、泣かない。母のこと、忘れない』

 三男ルッタハーズィ。


『かあさん……元気で、やる。約束』

 次男ムシュラフュン


『ママー、気を付けてね』

 長女アンシージャムン。


『俺達のことは心配いりません、皆で力強く生きていきます!』

 そして長男ザーイムン。







――――――砂漠遭難64日目、昼14:00頃。




 シャルーアは、ますます言葉流暢に先日名前をつけてあげた―――心なしか顔つきに人間味まで宿り始めた彼ら、|タッカ・ミミクルィゾン《真似をする怪人》の子供達と別れた。


 場所は、オアシスから西の街道沿い。


 万一にも騒ぎにならないよう、街道から遠く離れた場所で別れたのに、|タッカ・ミミクルィゾン《真似をする怪人》達は地平線の彼方で豆粒のような影にしか見えないほど遠ざかっても、シャルーアに手を振り続けていた。




「一人になってしまいました……」

「ブルルッ」

「クスッ、そうですね。お馬さんも一緒でしたね」

 |タッカ・ミミクルィゾン《真似をする怪人》達との生活は、シャルーアに良い変化を多くもたらした。


 偽りとはいえ、親子関係の庇護者の立場にあったことで、動物や自分より下位の弱い立場(小さな子供など)に対しては、明らかな微笑みを見せるようになっていた。


 以前はよく知った者相手ですら、その喜怒哀楽の変化を表情がほとんど変化しなかった彼女。まだ不十分とはいえ、感情が多少でも豊かになったことは、人として成長したと言えた。




「では、ここから北へと向かってみましょう、よろしくお願い致しますね、お馬さん」

「ヒヒーン」

 シャルーアがオアシスから旅立つにあたり、西の大街道を選んだのには理由があった。


 先に到達できたのは東の大街道だったが、シャルーアがこれまで立ち寄ったことのある町や村の位置を考えると、東の大街道より西の方が知っている町が多いと思ったからだ。



「ええと……こちらがムカウーファ、こちらがサーナスヴァルで……やはり、現在位置がわかりませんと、地図を見てもあまりよく分かりません……」

 ジャッカルの忘れ形見とも言える荷物群の中にあった、ファルマズィ=ヴァ=ハール王国の大まかな地図。道なども書かれておらず、ある程度大き目の町が点々と記されているだけの簡素なもの。


 だが、地理の手がかりが他にない。シャルーアは現在地におおよそのアタリをつけて、自分の知ってる町や村を探して、大街道を北へと向かった











――――――砂漠遭難65日目、夕17:00頃。



『シュルルルルル……ッ』

 その日の日没間際、遭遇した大蛇を相手に、シャルーアは武器を構えていた。


「(確かこの方は―――)」

 リュッグの教えと過去の経験を思い出す。



 サーペント・エーク。


 はるか昔、歴史に名を残す探検家エークが発見した蛇の魔物で、蛇というよりはドラゴンのような恰好のいい頭部をしているのが特徴。


 体長は12m、太さは直径1mとシャルーアから見れば相当な大物だ。


 砂漠環境では珍しいその青基調なまだら模様ゆえ、とても目立つ反面、天敵が少ないことで知られる。

 その理由は、いかなる生き物に目をつけられたとしてもまず負けないほど、純粋に強いから。


『シュルルルル……ッ』

 蛇同様に卵生ではあるが、実は哺乳類という変わった生態を持っており、それでいて一度に無数の卵を産む。

 本来は見かけ次第、1個大隊が組まれて討伐殲滅に当たるような強敵なのだが……



「(このまま、じっと……)」

 シャルーアは頑張ってサーペント・エークを睨み続けた。睨むという行為に不慣れな彼女の表情はなんとも迫力が足りない。だがリュッグの教えを信じるなら、これが今、彼女が取れる最善だった。


『シュルルル……』

 やがてシャルーアに睨まれ続けたサーペント・エークは、ふいっと頭を明後日の方へと向けて、いずこともなく去っていった。




「はぁ、はぁ……本当に “ にらめっこ ” でしのげました……」

 サーペント・エークは獲物に遭遇しても、しばらくじっと見つめ続ける。相手が戦闘態勢を維持したまま自分を警戒して緩むことがないと認識すると、まるで興が削がれたと言わんばかりに戦闘を行うことなく去る。


 もちろん繁殖期や飢餓状態にある場合はその限りではないが、とにかく武器を構えてじっと睨み続けていればやり過ごせる、というのがサーペント・エークへの対処法としてリュッグに教わったやり方だった。


 まさしくその通りだったことに、シャルーアは安堵して刀を鞘に戻した。






――――――砂漠遭難66日目、朝9:00頃。



「……ごめんなさい、えいっ!」


 ザンッ!


『ギャオオッ!! …………』




――――――砂漠遭難66日目、昼13:00頃。


『ギャッギャッ!』


 ブンッブンッ!


「えい、えい、はぁはぁ、はぁ……とてもすばしっこいおサルさんです……えいっ」





――――――砂漠遭難67日目、早朝3:00頃。


『フーッ、フーッ』

「サイさん、こちらに突っ込んでくるようでしたら、手加減はできません」






――――――砂漠遭難67日目、昼15:00頃。


「ん……しょっ、確かあそこで消えましたから……この辺りに隠れてる…はずっっ」


 ドスッ


『!? オォオオオッ!』





  ・


  ・


  ・


 道中、大小さまざまな妖異に遭遇しつつも、シャルーアはこの2ヵ月余りの生活で培った経験とリュッグの教えを頼みに、順調に街道を北上し続けた。






 そして―――――砂漠遭難69日目の昼14:00頃。



「! あれは……町、でしょうか?」

 ついに、人の気配がありそうな人工建造物群の影を街道の先に見据えた。





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