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焦がれる刀のシャルーア  作者: ろーくん
変化に巡る思惑

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第14話 ルクレッグ遊国の憂い



 ラ=クレクーダ=ミルス国―――――通称、ルクレッグ遊国。



 特定の領土というものを持たず、各地に存在する隠れ国民達の意志と納金によって成されている国家にして国家に(あら)ぬ特殊な国。


 言うなれば総本山を持たぬ宗教に似た(てい)の組織で、国王たるミルス21世は供回りと共に各地を転々とする流浪の民であった。





「安定に欠け始めたようだ」

 小さな村の飲食店。

 その席で、様々な情報を総括した一言をミルス王は静かに発する。


「どの国もファルマズィに攻め込もうっていう雰囲気がありますもんねー、熱に差はあるけども」

 王の側近と思しき少女が、隣で両肘をテーブルにつき、ストローからジュースを啜っている。色浅く、白人寄りではあるものの随所に黄色系人種の特徴を残す彼女は、10代中ごろの少女のよう。しかしれっきとした王の片腕である。


「よくない傾向ね。一国が本気になってしまうと、本腰ではない国々も動き出す事も考えられそう…」

 王を挟んで反対側。浅い日焼け色の褐色と、毛先がフワリと外側に広がるミドルの薄緑髪が特徴の、10代後半くらいかと思しき少女が、真面目な表情で集まった情報を幾度も見直していた。


「ファルマズィに何があったかは分からんが、大規模な戦乱に発展する事だけは阻止せねばなるまい。魔物の脅威が増す中、人同士で争い合うなど危う過ぎる…」

 深く憂慮を示してはいるが、そのガタイたるや堂々豪傑たるもの。盛り上がった筋肉は実戦的でワイルドな強さを感じさせる。腕を組んで肉料理の皿を前にする姿は、あまりに似合い過ぎていた。


 しかし、そんな風貌とはかけ離れた慈悲深き心は、領土を有さぬ国家の主として確かな支持と尊敬を国民より得ている――――どこまでも王らしからぬ王、それが今世におけるミルス王という存在であった。


「そーは言ってもどーするんですミルスさまー? いくらミルスさまでも直接どっかの国の軍隊に立ちはだかるのは無謀(むぼー)ですよね?」

「我が国には領土がありませんから、直接各国の王に説いて回るのも難しいでしょう。形あるようでなく、ないようである……それが我が国ですから」

 どのような方法であれ、他国のトップと交渉を持つ事はルグレック遊国には難しい。国家としての格が低く見られがちであるために、せいぜいちょっとした客待遇が関の山で、会えたとしても外交担当の部署の下っ端官僚が精一杯。


 戦争を思いとどまるよう、説得交渉を行うのはかなり厳しい。


「フム、多少遠回りになるだろうが……まずは各国の王に面会できるよう、道を切り拓くしかあるまい」

「えー、それってつまりー…」

「いつも通りに魔物を退治、ですか」

 彼らがどこかに留まることなく各地を転々としているのは、他ならぬ人に仇名す魔物を討伐するためである。

 ミルス王だけではない。ルグレック遊国の民は、各地でそれぞれの生活基盤を持ちつつも様々な形で魔物討伐に貢献している。


 だがそれらは影の活躍であり、遊国の人類への貢献がアピールされるような事は一切ない。ゆえに多くの国は、ルグレック遊国には国としての格はなく、ヘンな集団組織という程度の認識しか持っていない。


 人知れずの活躍――――いかに恰好は良くとも、名を上げる事ができないために、他国に影響力を持てないという悩みが常々ついて回る。

 だが、ミルス王には考えがあった。


「不本意ではあるが退治する魔物を選ぶ。そして名を売った上で、各国王宮に接触してみよう」

「それって…今までと何が違うの??」

「“ 近頃噂の魔物を退治して回ってる3人組が王に謁見を申し入れる ” っていう風になれば、王が謝意を述べようと直々に会ってくれる…ってところでしょ」


 また無茶で強引なやり方をするつもりだと思うと、ため息しか出ない。側近たる彼女は、また王の尻ぬぐいに苦労することになりそうだと、行動前から疲労感を露わにしていた。


 

 


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