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焦がれる刀のシャルーア  作者: ろーくん
静女と勢女

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第142話 風のお嬢様・ルイファーン




―――――サッファーレイ。



 かつてスナドロを討伐した後、立ち寄ったオアシスの集落だ。

 (※「第07話 ひと時は湖畔の食事処で」参照)



「(あの頃に比べると、シャルーアもかなりマシに……)」

 なった、などとリュッグが考え出すのは現実逃避したいから。


 到着するなり集落を囲う簡素な仕切り柵の向こうに、今回の仕事の対象たる人物と、その周囲を固める私兵たちの集団の姿があって、彼はあらためてげんなりした。




「ふむ、なかなかの景観。雰囲気の良いところだ……こんな場所でシャル―アさんと二人で……ブツブツ……」

「おーい、ゴウゴゴー? おーいってばー」

「ゴウゴゴ……妄想世界、旅だった? ……ナー、今のうち。イタズラ……仕込む」

 ゴウ、ムー、ナーがじゃれあってる後ろで、馬車を所定位置に付けるシャルーア。細やかな操馬もかなり慣れたもので、綺麗に四角く覆われた柵の枠内におさめた。


「お疲れ様でした、お馬さん。ここまで運んで頂いて、ありがとうございます」

 よしよしと撫でると、馬がブルルとくすぐったいと言わんばかりに頭を振る。だがシャルーアの手を振りほどこうとはせず、気持ちよさそうに目を細めながら撫でられていた。


 そんな平和な様子の仲間達を羨ましく思いながらも、リュッグは静かに気配を(割と本気で)殺しながら、サッファーレイの集落内へ向かう。


 ……と、集落の門を意味する木の柱の間、1歩内側へと踏み込んだ瞬間。



「ッ! リュッグさまぁ~っ、やはり来ていただけましたのねぇっ!!」

 まったく別の方向を向いてたはずの人物が、ギュルンッと頭を回してリュッグを視認、途端に駆けてきた。


 その走る速度は、砂漠に似つかわしくないエウロパ圏タイプのドレス姿でありながら、お付きの私兵達すら置き去りにするスピード。


 リュッグは身構え、ガードする態勢を取ろうとした。だがそれよりも早く、その人物は間合いの内側に飛び込み、しっかりと抱き着く。


「ッ……、あ、相変わらずお元気そうで……リーファさん……」


 ルイファーン(リーファ)=ヴァフル=エスナ――――――マサウラーム町長の愛娘であり、一陣の風の如く素早い御令嬢だ。

 そして無類のリュッグLOVEな女の子でもある。


「もう、いやですわリュッグさま。ルイファーンと呼び捨てくださいませ。(わたくし)とリュッグさまの間柄でしょう?」

「いや、それはさすがに勘弁してください……」

 何を隠そう、彼女はこのファルマズィ=ヴァ=ハール王国の王族系譜に連なる人間だ。直系ではないものの王家の親戚筋相手に、気安く接しろと言われて出来るわけがなかった。




  ・


  ・


  ・


「なんだかんだでリュッグ殿が連れていかれてしまったな。突風……いや、まるで嵐のようだ」

「あんなに、押せ押せ、なの……見た事、ない」

「隠す気ゼロだもんねー。オープンラバー? でもお姉ちゃん、アレ絶対処女だよね。若い、若いなー、ウンウン」

 あっという間にリュッグを連れ去ったルイファーンの感想を口々に言葉にする3人の隣で、シャルーアが困ったように一言告げる。


「……えっと、この後は私達は、どうすればよいのでしょう??」

 今回は、何せリュッグが指名を受けての依頼だ。そうでなくともこのパーティのリーダ格は彼で、どうするか何も取り決めないままに引っ張られて行ってしまったので、4人はサッファーレイの入り口で思わず立ち尽くしてしまった。




「……失礼、リュッグ殿のお仲間の方々ですね? ルイファーンお嬢様のせいで御迷惑をおかけします」

 まるで今後も迷惑をかけますのでよしなに、と言わんばかりの声をかけながら頭を下げてきたのは、軽装鎧を着てはいるもののどこか執事然とした中年男性だった。


「なんというか、随分と積極的な淑女(レディー)のようだな。こう言ってはなんだが、さすがに面食らってしまった」

「突風少女」

「むしろそこはいっそ、暴風くらい言っちゃってもいいんじゃないお姉ちゃん?」

 ゴウが言葉を選びながら応対する中、ムーとナーは平常運転(マイペース)でブレない。


「ええと……、リュッグ様のお仕事は要人の送迎とお聞きしておりますが、この後はどのようにすればよろしいのでしょうか??」

 一応はリュッグの正式な仲間はシャルーアになる。代表してどうこうするというのは苦手だが、肝心のリュッグが連れていかれてしまった以上、この場で仕事のお話を聞いておくべきは自分だろうと思い、頑張って(たず)ねる。


「ほう、これはこれはご丁寧に御嬢さん。当方におけます、この(のち)の予定と致しましては―――……ッ!?」

 驚愕。わかりやすいほどの。


 先方の執事と(おぼ)しき中年男性は、シャルーアの顔を見てこれでもかというほど驚いていた。


「あ、貴女(あなた)は、アッシアド将軍様の!?」

「? アッシアドはお父様の名前ですが……お父様をご存知なのでしょうか?」

 今度はシャルーアが少しだけ驚いたように、両目を軽く見開いた。






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