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焦がれる刀のシャルーア  作者: ろーくん
地に逞しき傭兵たち

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第138話 覚悟ある双子




 デミグリレイは微塵も油断していない。

 ムーを抱えたまま、リュッグ達のテント群を睨んで温かな岩の上に座っている。



「ムーを捕まえた理由は不明だが、すぐさま殺そうという様子もない。意識を向けずに素知らぬフリをしてるんだ」

 そう言ってリュッグは、焚火にかけていた串に刺した肉をゴウやナーに手渡していく。


 真夜中の食事―――それは腹を満たすためだけではなく、その様子を見ているヨゥイが、何かしら反応や行動を起こすのを誘う目的もあった。


「そうは言ってもなかなか難しいな。日の出まであと5時間ほどだろう?」

 手元の懐中時計を確認しながら、ゴウはとりあえず串焼き肉にかぶりつく。

 

「日がのぼったって、すぐにあったかくなるわけじゃないから、大丈夫だよー」

 ナーも串焼き肉をほおばる。こちらは完全に脱力していて、愛銃すらテントの中に置きっぱなし。

 デミグリレイに隙があれば即射撃、という選択肢はないらしい。


「デミグリレイは真正面からやり合ってもまず勝てない。腕力、握力、膂力(りょりょく)が桁違いだ。ゴウさんやミルス殿ようなタイプでも、真っ当に力で対抗するのは危険なほど、パワーのあるヨゥイだ。覚えておくようにな」

 次の串焼き肉をシャル―アに渡しながら、その危険性を講義するリュッグ。


「はい、ありがとうございますリュッグ様。いただきます」

 シャルーアは受け取ってすぐ、しかし丁寧に口に運ぶ。

 ナーが結構口周りを汚してるのに対し、まるで汚さずに気持ちがいいほど肉を消し去っていくシャルーア。その対比が面白くて、リュッグはつい笑みをこぼした。



 ・

 ・

 ・


 ク~ゥ……

 

「……おなか、すいた……」

 かなり遠くだが何とか見える距離。何かは分からないが仲間が食事をとっているのを、ムーは羨ましそうに眺めた。


「(……デミグリレイ、……私、餌……?)」

 お腹がなっても空腹をうったえても食事が出てくるわけもなし。

 退屈なので、この妖異が自分をさらった理由を考えはじめる。


「(餌……、殺さない……なぜ?)」

 食べるためであれば生死は関係ない。むしろ殺してしまった方が暴れられる心配がなく、運ぶのも楽なはず。

 妖異が人間を殺さないで捕まえる理由として他に考えられるのは―――


「(―――繁殖……なら、シャルーアちゃんのが……)」

 スタイルでいえばそっちを選ぶはずだ。

 しかし、相手は人間ではなくヨゥイ。その繁殖相手の好みのほどは人の感性と違ってる可能性も高い。

 それに獲得の確実性を優先した結果、さらうときの状況で最も適していたのがムーだった、という理由もあるかもしれない。


「(……んー……、あと、……お持ち帰り、距離……)」

 あくまで餌のつもりなら、もし住処(すみか)まで距離がある場合、すぐに殺してしまうとその分、肉が早々と腐ってしまう。


 ヨゥイとて食べるなら美味い方がいいだろう。持ち帰った時に腐臭がたってるものを食べたいとは思うまい。


「(……巣で、絞められる、……おおぅ)」

 想像して恐ろしや~と身震いするものの、表情に恐怖心は微塵もない。


 過酷な過去と、傭兵という命の軽い仕事を考えれば、こういう最後もありえると覚悟して生きている。

 なので彼女は今、自分が置かれている状況に対しての恐怖心は、まるでなかった。




『グフ?? グブブッ、グフー』


 ベタッ……グイグイ


「……ぉおう? あったかー…」

 どうやら身震いが冷えからくるものだと勘違いしたらしいデミグリレイは、右わきに抱えていたムーを、首根っこを掴む形にかえて岩に押し付けた。温めてくれてるらしい。


「(……死なれる、困る……? ……じゃ、嫁ルート…か…)」

 仮に獲物が死んで腐っても飢えるよりはマシだ、ヨゥイなら食べるだろう。なのでわざわざ死なないよう、過度に気を使う必要はない。


 だがムーが冷えてると思ったデミグリレイは、彼女を岩に押し付けて温めようと試みている。

 そこまでして生かす理由があるとしたら、餌よりも繁殖目的の可能性が高くなる。



「(デミグリ、アレって……どんなだろ……)」

 押さえつけられてる岩の上、ムーは頭だけ少し傾けてデミグリレイの股間部を伺う。

 普段は露出していないようで、特に雄々しいモノは見受けられない。


「(……限界、脚の太さ、まで……ぅーん……)」

 仮に、たとえ馬並みだったとしても特に思うところはない。もし実際に襲われたとしても、たぶん泣き叫びすらせずにあっけらかんと受け止められる自信がムーにはあった。

 アサマラの兵産院での経験が、皮肉にも役立っていることにちょっとだけ腹がたつと、彼女は頬をぷくーっと頬を膨らませる。



「(ま……それは、最後の最後……の、話……。―――……ん、そろそろ?)」

 ムーとナーは一卵性の双子姫だ。見えず聞こえずとも何となく互いに感じ合うものがある。


 ナーの精神状態に火が入ったことを理解したムーは、どうやら仲間達が自分を助ける算段をつけて動こうとしていると察して、本当に小さく微笑を浮かべた。





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