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焦がれる刀のシャルーア  作者: ろーくん
地に逞しき傭兵たち

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第135話 お仕事.その12 ― 軍隊蜥蜴 ―




 アーミーリザード。



 1匹が人間とほぼ同等の大きさで赤茶色のブツブツした肌の、二足歩行で行動可能な蜥蜴(トカゲ)の妖異だが、その生態は変わっている。


 通常は普通のトカゲと同じ四足歩行で生活しているが、武具で武装したリーダーがいると(・・・)と、他の個体がそれについていくようになり、武具を入手するたび、二足歩行化する。


 そうして武具を獲得するごとに数を増やし、いつしか軍隊のように化すことから、アーミーリザードと呼ばれるようになった。


 本来、1匹でトカゲ(ぜん)としてい活動している時はユーズド・リザードと呼ばれ、" アーミーリザード ” とは主に、現象的な意味合いで用いられる事も多い。





「トカゲの軍隊化……。稀によくあるとは聞くが、この目にするのは初めてだな」

 ゴウとて魔物との戦闘経験は豊富だ。有象無象、大なり小なり様々な魔物を屠って来た。


 しかし目の前の、ある意味壮観な軍容には素直に脱帽、賞賛したい。何せ、その一糸乱れぬ行軍模様には、鍛え上げた自分の直軍(ちょくぐん)にも勝るとも劣らない練度が感じられた。


 たかがトカゲ、されどトカゲ――――――これは油断ならぬ敵だと緊張する。


「(さて、この強大な相手にどう戦うというのか?)」

 何故かリュッグ達はさほど気負っていない。むしろリラックスしているくらいだ。

 どんな秘策があるのかと、ゴウは目をしかと見開いて、戦いを一部たりとも見逃さぬようにと注視した。




「距離……600……。ナー、ボルト位置、2番……も少し、引き付け……」

「りょーかいっ。400くらい、お姉ちゃん?」

「ん。仕掛けの射程、考えるに……それ、打倒…」

 二人は、自分の銃の銃身横の留め具(ボルト)を外した。そして別の穴へと入れ直し、そのまま後ろへスライドさせる。


 ジャキッ


 複雑な金属部品が擦れ合う音と共に、二人の長銃身は10cmほど短くなった。かわりに火縄の受け皿である火皿が少し前にスライドする。


 有効射程を落として威力に重点を置いた調整のようだが、どういうギミックなのかは当人以外にはよくわからない。



「……リュッグ。仕掛け点火、15射目、同時……よろ」

「分かった、15射目だな?」


「……シャルーア、弾と火薬の補給……私よりナー優先……おけ?」

「はい、かしこまりました、ナーさんの方に優先ですね?」


「……おけ?」

「? ええと、はい、大丈夫です」


「シャルーアちゃん、そこはオッケー! って返すんだよー」

「そうなのですか? ええっと、オッケー、です」


「ぐ……。じゃ……ナー、そろそろ」

 ムーの仕切りで戦闘準備が整い、謎のこだわりを経て全員が文字通り火蓋を切るのを待つ。


「……一番先頭まで距離450、対象2匹。お姉ちゃん、左と右どっちがいい?」

「右」

「じゃ、私は左ねー。……430……420……410…―――ってぇっ」



 ダダァンッ!


 ぼぼ同時に姉妹の銃が火を噴いた。


 弾は間違いなく二人が狙った獲物の、鎧に覆われていないところを貫く。一番先頭を進んでいた2匹が砂漠へと沈んだ。


「次…戸惑ってる、横の」

「おっけー!」


 ジャキジャカンッ! キンッ、キンッ……ジャコンッ!


 どこがどうなってるのかまったくわからないギミック音が蠢き、銃の一部が開く。


 中から弾支筒(だんしとう)と呼ばれる、真円球ではない特殊形状の弾(ライフル弾)を、発射まで後ろから支える金属筒と、爆ぜた火薬の微かな残りカスが排され、新しい弾と火薬が装填される。双子は再び射撃態勢に入った。


「……火薬、弾支筒の中なら、楽なのに……」

「あー、それいいねー、装填楽になりそー」

 などと気楽な会話を混ぜつつも、二人は既に次の獲物に照準を合わせていた。



 タァンッ! タァンッ!!


 さらに2匹が倒れる。


 仲間が倒れていく様に戸惑う個体が多い中、何匹かはその原因を発見したとばかりに、こちらを見て奇声をあげていた。


「気付いた……距離、300まで、もう2匹……」

「あいあーい! ……ほいっと」


 タタァンッ!!


 合わせて6匹の被害を出して、ようやくアーミーリザードはリュッグ達を認識。攻撃せんと一気に駆けだしたが、そこで彼らのボロが出た。




「(なんと。あれだけ整然としていた進軍が、こうも簡単に乱れるとは)」

 アーミーリザードは軍隊ではない。あくまでそう見えるだけの群れだ。


 鎧や武器を扱おうが、別に軍隊として機能するように動けるわけでも、そんな知能があるわけでもない。


 そして何より……


『ギシャァアア!』

『ヒシャァアッ!!』


 タタアァンッ!!


 彼らは遠距離戦に滅法(めっぽう)弱かった。剣や槍、盾や鎧なら見様見真似で扱えても、銃はもちろんのこと弓矢ですら満足に用いることができない。


 とりわけ、大きな音はするのに遠くにいて、それでいて仲間を殺していく敵というのは、彼らからすれば非常に危険かつ恐怖する相手―――遠距離から一撃で倒せるほどの銃という武器は、アーミーリザードにとって最大の天敵であった。


 しかし、それでもまだ数の利が向こうにはある。対してリュッグ達の射手はムーとナーの二人だけ。どれだけ次弾装填が早かろうと、群れを狩り尽くす前に詰められてしまう距離。

 この時点ではまだ、アーミーリザードに分があった。


  ・

  ・

  ・


 タッタァンッ!!


 ジャキッ、ガシャコン! キキン!



「……5秒後、15射目」

「! こっちはいつでもいいぞ」

 リュッグは火のついた松明を、仕掛けの起点に近づけた。


「3……2……1」

「よし、ここだな!」

 シュバッ……ジジジッ


 火が導火線を走る。子供が砂場で作ったような、盛り上がった砂の山脈に突き刺さってるモノの尻に向けて火花が迫る。


 ダァダンッッ!!


 ボッ……シュバババババババッ!

 ヒュルルルルルルルル~~~~……―――パパパパパパァンッ!!


 それは火薬で飛ぶように細工された筒弾(つつだま)だった。二人の射撃とほぼ同時に、長さ15cm程度の円柱状のもの50本ほどが一気に乱れ飛び、アーミーリザードの群れに飛び込んで()ぜていく。


『イッギャアァア!??!』

『ギャオオオッ、ギャオオオオオンッ!!!』

 爆ぜた筒弾の中身は、刺激物と火の付きやすい調合の火薬を混ぜ合わせた粉。それがリザード達の身体へと降り注いでいき、アーミーリザードの群れは一気に大混乱に陥った。


 そこへムーとナーが、ニヤリとしながら容赦なく射撃を行う。


 ダンダァンッ! ダダンッ、ダァンダァンッ!!


 弾が金属と擦れあうよう、わざと狙いを鎧に定めて撃つ。すると発した火花が、舞い散るor付着している先ほどの粉に引火し、小さいながらも連鎖的な爆発と火をあげ、アーミーリザードをさらなる大混乱へ導いた。



「おっけー、狩り放題……たーいむ」

 総勢300匹はいたアーミーリザードの群れは1匹、また1匹と削られていき、やがてどこへともなく逃亡しだす個体も出始める。


 リュッグ達は、敵を危険な距離まで近づけることなく退ける事に成功した。






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