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焦がれる刀のシャルーア  作者: ろーくん
砂援疾走

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第124話 お仕事.その10 ― 岩を転がす巨虫 ―




 目的の町まであと20kmほどのところで一行は大物に出くわす。




「まさかここで “ 岩転がし ” とはねっ!」


 ゴロゴロゴロゴロッ、ドガシャアッ!!


 ナーダ達が避けた巨大な岩は、岩山に激突して砕けた。




「スーカラッド……デカい個体だ、6mはあるか?」

 リュッグは一つの岩山の上を睨む。いくつも切り立った岩山が並んでいる中の1つに、そのヨゥイはいた。



 スーカラッド――――――いわゆるフンコロガシとかスカラベと呼ばれる甲虫に似た魔物で、岩を転がす習性がある。


 山などの高い位置を好み、下から岩石をまとめながら球体状にしつつ、山や崖を登ってその頂上に岩玉を貯める。

 そして、近くを通りかかる者めがけて岩を落とす攻撃で獲物を捕らえる。

 当然人間もエサにしようとする危険な魔物だ。


 虫のスカラベと習性は似ているが、大きさはけた違いで見た目にも異なっており、甲虫であこと以外、その外見はまるで似て非なるもの。


 岩玉の狙いの付け方は見事で、小回りがきかないとよけきれない。

 馬車などの乗り物で遭遇した場合、特に危険な相手として認識されている。




「ふむ、間合いを詰めるには高低差も含めて遠すぎるか。あそこまで届くような遠距離攻撃が出来ねば対処不可能に近い……まことに厄介だな」

 ミルス達に関わらず、この砂漠の多い地域に暮らす者の大半は、戦闘スタイルが近接寄りだ。

 銃火器の類は砂漠の細かい砂でトラブルを起こしやすいため、用いる者が少ない。かといって切り立った岩山の上では弓矢や投擲の類は届かないし、届いたとしても相当な威力がなければ甲虫の硬い殻を貫通できない。


 スーカラッドは、非常にいやらしく、面倒なヨゥイであった。


「……だが、今回はラッキーだな。攻撃はあの二人に任せておけばよいのだろう?」

 次々と転がってくる岩を軽々避けながら、ゴウはスーカラッドの姿を睨み続ける。


「ああ。こっちは馬車に狙いがいかないよう、引き付けてるだけでいい。ムーとナーの腕なら時間さえ稼げれば十分のはず」

 リュッグはチラリと、他の岩山の上を順番に見た。


 この辺りは高さ20~40mほどの切り立った岩山が乱立しているので、スーカラッドから射線が通らない岩山の陰にジャスミン、シャルーア、フゥーラ達が馬車を隠して待機している。

 

 ミルス、ナーダ、リュッグ、ラージャの4人がスーカラッドから見える位置で動き回り、注意を引いていた。


 そして……


「! どうやら狙撃位置についたらしいな……ラージャ、ヨゥイの注目を引いてくれないか」

「おっけー、任されてー! <逆雷>(ルラァドゥン)!!」

 リュッグに促されたラージャが、2本の短い棒を両手に持って振るい構える。その瞬間―――


 ピッシャァアッ!!!



 地上から空に向かって雷鳴が走った。


『!???!?!?』

 次の岩を転がし落とそうとしていたスーカラッドは、凄まじい閃光と音にビクリとして、ラージャのいる辺りに視線を向けたまま何事かと動きを止めた。






――――――とある岩山の上。



「オッケーお姉ちゃん。脇と頭、どっちがいい?」

「脇」

「じゃ、私が頭ねー、ほいっと」


 ターンッ、ターン!


 二人の魔改造ロングレンジマッチロック式(原形なし)銃が火を噴いた。


 銃声はラージャの放つ電撃の音で和らげられ、ターゲットのヨゥイは二人にまったく気づかない。


 直線距離でおよそ150m。完全な死角からの狙撃に、脇と頭の殻の隙間を銃弾で貫かれ、スーカラッドは岩玉の傍で倒れ、動かなくなった。



  ・


  ・


  ・




「銃という武器はすごいのですね……驚きました」

 スーカラッドを始末し、事後処理を終えて再び馬車が走り出す中、普段受け身なシャルーアが珍しくムーに話しかけていた。


「ムフン……」

 数少ない銃使いとして褒められたのが嬉しいのか、ドヤ顔で鼻息ひとつ()きながら胸を張る。シャルーアに比べるとボリューム不足な小ぶりだが、堂々たる揺れっぷりを披露していた。


「狙い、正確なら、一撃必殺……」

 とても嬉しそうに語るムー。初めてみるかも知れない一面に、リュッグは珍しいものを見たと言わんばかりだ。


 町まであと少しという事もあって、街道の往来が増えてきたので先行偵察の必要もなくなった。馬車の荷台には今、ジャスミン、シャルーア、リュッグ、ムーとナーが乗っている。



「この国でムーとナーほどの銃使いは他になかなかいないからな」

「リュッグさん、褒めても何もでませんよー、エッヘッヘ~」

「リュッグも、銃、使えばいい。……仲間」

 姉妹は二人してカモンカモーンとジェスチャーする。彼女らは相当に少数派(マイノリティ)な傭兵だ。やはり銃仲間は増えて欲しいのだろう。

 

「いや、俺は二人ほど上手く運用できる自信がない。砂漠じゃ扱いが大変だしな。簡単に壊してしまいそうだし、満足に持って歩くことすら出来る気がしないよ」

「でもリュッグ、すでに銃、もってる……股間にビッグガン」

 そう言ってムーはニヤァと笑った―――リュッグは彼女が、オヤジギャク(下品)を平然とのたまう娘だというのを思い出す。


「? リュッグ様は銃をお持ちでしたでしょうか??」

 シャルーアが不思議そうに首をかしげた。普段から傭兵仕事の荷物を整えたり運ぶのを手伝っているだけに、銃器のようなものがあっただろうかと不思議に思ったようだ。


「い、いやシャルーア、それは違―――」

「男は皆、股間に銃、持ってる……」「つまりですねー、お姉ちゃんの言う銃っていうのはですねっ、男の人のおちんち―――ふむぐうぐぐっ」

 リュッグは慌ててナーの口を塞いだ。


「(そうだった……この二人は……)」

 ムーとナー。この双子の傭兵は、姉のムーが下ネタオヤジギャクを、そして妹のナーが平然とそれを解説して周囲の反応を楽しむという、厄介な趣味を持っている。

 はっきりいって、純粋なシャルーアには教育的によろしくない姉妹だった。


 しかし、残念ながら今回は手遅れらしい。


「ほぁー……銃と形容するのですか。勉強になります」

 勉強してしまった。リュッグが深いため息と共に後でちゃんと言っておかないとと思った直後、爆弾は投下された。


「確かにリュッグ様はとても大きな銃をお持ちでした」

「!」「!」「!」「!?」

 その一言でムーとナーがキラリと輝くような好奇の目を、ジャスミンがほほうと感心したような視線をリュッグに向けた。


 シャルーア以外の荷馬車内の女性陣が振り向く頭のスピードたるや、良い暇つぶしのネタを見つけたことを物語っている。


 ……そこから町につくまでの間、リュッグにとっての地獄の、女性達にとっては面白おかしい痴話タイムが始まってしまった。





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