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焦がれる刀のシャルーア  作者: ろーくん
生命の石と情熱の刃金

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第114話 お仕事.その9 ― アイアオネ鉱山2 ―



 調査隊が坑道を進行していたその頃、鉱山の入り口付近ではリュッグの指示の下、調査拠点の設営が進んでいた。




「照明塔はやや鉱山から離れた地面、広範囲を照らすようにするんだ。ヨゥイが接近しても発見しやすいし、戦闘になった場合も戦いやすくなる」

「オッケーだよー。こんくらいー?」

 リュッグの指示で身の軽いラージャが、高さ5mの照明塔の上でライトの角度と向きを調節している。



「デカいの、その柵はもう少し前じゃ。こういうのはな、ちぐはぐに設置するんじゃよ」

「? しかしそれでは隙間が出来てしまうのではないか? 魔物にすり抜けられてしまうだろう」

「はっはっは、こんな木柵程度じゃあ、たとえ隙間なく配したところで、魔物を防ぐことはできんわ。簡単に破壊なり飛び越えなりされてしまう……あえて隙間をつけておけば、魔物はその隙間を狙って入ってくる―――それがどういう事なのか、わかるじゃろう?」

「! 木柵はあくまで障害物、防ぐというよりは誘導か。こちらが迎撃しやすいように敵の動きを制すると……これは気づかなかった、なるほどな」

 ゴウとスラーブが、鉱山入り口を大きくぐるりと囲うように、木柵を設置。



 そして……


 ダァンッ、ダッダァンッ!


「銃声? ラージャ、どっちだ?」

「んとねー……あ、あれかなー? たぶん南東の方だよー。砂煙の中に人影みえるしー」

 双子で傭兵をやっているムーとナー姉妹。彼女らが鉱山周辺の巡回を行っていた。





「戻った」「戻りましたー」

 長身な銃を背負った小柄な影がキャンプに帰ってきた。

 二人とも20代後半……だが、中学生と言われても信じてしまいそうなほど若い。ラージャと並ぶと中学生の仲良しグループみたいに見えるほどだ。


 そんな少女のような二人の手は、サソリっぽいものを掴んでいる。


「ほお、アローシェイプを仕留めたのか。さすがだな」

 アローシェイプ―――パッと見は人間の胴体くらいあるサソリ。だが砂の中に本物の足を隠した、四足歩行の魔物だ。

 サソリを装って獲物に近づき、間合いに入ると急加速してそのサソリのような尾で獲物を突き刺す。

 その際のスピードと形状が弓矢のように見えることから、この名で呼ばれている。


 リュッグも昔、何度か討伐依頼を受けた事があるが、そのスピードに苦労させられた記憶があり、やや苦手意識をもっている魔物だ。



「動き、直線的。捉えるの余裕」

「お姉ちゃんは距離さえベストなら、どんなに速い魔物もイチコロだもんねー」

 妹の言葉に姉は力強く頷き、ドヤ顔っぽい表情を浮かべた―――といっても、ほとんど表情に変化はない。


 姉のムー。物静かで表情がほとんど変わらない。だが姉妹の主導権はしっかりと握ってるような感じだ。

 妹のナー。無口で対外面がやや苦手な姉に代わり、積極的にコミュニケーションを取る姉のサポート役。


 二人ともやや赤みのある褐色肌で、生まれはファルマズィ=ヴァ=ハールよりも南の方だという。

 姉妹以外に身よりがない天涯孤独で、一桁年齢の頃から魔物を倒して生計を立てているというなかなかハードな人生を送っている。


「(だが顔立ちや容姿がいい。どこぞの貴族崩れっぽいが……ま、ワケありなんだろうな)」


 二人の主力武器は、この辺では珍しいマッチロック式の長銃身ロングライフルだ。ただし正規品ではなく二人の魔改造品で、なんと銃身は最大3mもあり、途中で中折れして持ち運ぶように出来ている。

 しかも後装式(ブリーチローダー)に改造されており、現在、世界のどこを探しても二人の銃と同じものはどこにもないというほどオリジナルな2(ちょう)となっている。


「(この辺じゃ銃を使うヤツはほとんどいないし、珍しいタイプの傭兵だ)」

 銃器の類はかなりデリケートな武器で、このファルマズィ=ヴァ=ハールはもちろん、周辺各国のように砂漠地帯の多い環境下では運用が難しい。


 理由は砂だ。ちょっとした風でも砂ぼこりが舞い、簡単に銃の隙間に入り込んでしまう。


 万全な環境であっても火薬への着火が不安定で、不発率の高い武器―――その不確実性ゆえに魔物という脅威を相手にするには、命を預ける事のできない相棒として不人気なのだ。


 しかしこの姉妹は、その銃を魔改造した上で傭兵としてやっていけるだけの技量と運用を実現していた。




「……リュッグ」

 クイクイと姉のムーが何か言いたげに服を引っ張る。そして ” んっ ” と言いながらアローシェイプを差し出してきた。


「? 俺にくれるのか?? ムーが仕留めたんだろう?」

「大丈夫。私はナーのが、ある。今日の、晩ごはん……精が付く」

「あ、ああ…、じゃあ皆で美味しくいただこうか」

 そう言って受け取ると、いつも無表情なムーがニヤァと嬉しそうに(?)笑った。


 何度か仕事を一緒にしたことはあるが、いまだにムーは掴みどころが分からないと、リュッグは後頭部をかく。



「(ま、頼もしいからいいんだけどな……シャルーア達の方は大丈夫か?)」

 坑道を隅から隅まで調査するとなると短くとも2日はかかるだろう。拠点となるキャンプを張ったのも、時間がかかると踏んだからだ。


 リュッグは妖異を警戒しつつも、今回のまだ慣れていない仲間たちとの交流をどうしたものかと、頭を悩ませた。






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