第112話 拾われた石達の謎
アイアオネ鉱山の件を町長に伝えたナーダ達は、一度リュッグらと合流した。
「……と、言うわけで何ともきな臭いことでな。本腰を入れて調査すべきだと我は判断したのだ」
ミルスの話を聞いてリュッグは考える。3人の罰という形で出向いた鉱山だが、思いのほか問題が根深そうだ。であれば、この件はもはや罰だなんだと言ってはいられない。
トボラージャ町長も改めて判断を下すはずだ。
「それで、その持ち帰った怪しい宝石というのは??」
「フゥーラに調べてもらっておる、あ奴が一番の博識でな。それに未知の調べものに対する造詣が深い、心配はいらんぞ」
ちなみにシャルーアは、ナーダに付き添ってもらってゴウが持ち帰った石をマルサマに見せにいっている。
そのゴウは、次の調査のための必要な買い物に出ていた。ただし再び暴走しないよう、マレンドラ経由で案内人とう名の監視同行の上でだ。
そしてラージャはフゥーラの付き添い。未知のものを調べる時は、万が一を考えていつもラージャが付き添っているらしい。
「魔物の巣と化していた鉱山に、生命エネルギーとやらがまるでない最深部……か」
それだけを聞けば、その最深部に魔物を惹きつける何かがあったのかとも思う。
だが最深部には何もいなかった。なら魔物達はむしろ忌諱してそこに近づかなかった可能性の方が高い。
「どうやら本当に有望な鉱山のようでな、町長は頭を抱えておった。町の経済を支える大きな原資として見込んでいるのであろう」
しかし現地に赴き、異様さを直に感じたミルスだからこそ、報告の際には危険であると説いた。
どのみち魔物が巣食っていた理由も判明していない以上、鉱山での鉱石採掘は再開不可能だろう。
「……で、さらなる調査をする事に決まったと?」
町長からすれば、町のためにも有望な鉱山を諦めることはできない。最低でも魔物が巣食っていた原因究明と安全確保は必須だろう。
鉱山が使えなくとも、いつそこから魔物が出てきてはアイアオネ一帯を脅かすとも知れない。
これもどのみち放置できない話だ。3人が行った時よりもより綿密な探索と調査が求められる。
「ウム。そこで次はリュッグ殿にも参加してもらいたいのだ。腕っぷしには自信があるが、我らだけでは一筋縄ではいきそうにない」
「ふ……む……」
事がことだけに、次は正式な仕事として町長が提示することだろう。リュッグとしては参加するに異論はない。
彼が考えるのは、その際の陣容をどうするかだった。
一方その頃、マルサマの鍛冶場。
「コレは……どこでこの石を手に入れよった??」
マルサマが珍しくふざけずに、真面目な顔で持ち込まれた石を注視していた。
「この町の北東にある鉱山だ。一緒に潜った1人が、何気なく落ちていたモノを回収したのだが……貴重なモノなのだな?」
あの息をするようにセクハラするマルサマが、マジメに石を観察し続けている。それだけで持ち込んだ石が普通でないことは明らか。
ナーダも注意深く石を見た。
「ヴィウム鉱、という非常に特殊な石じゃ、コイツは純度が低いがの。伝説に聞くオリハルコンやアダマス、ヒヒイロカネには聞き劣るが、コイツも伝説に負けず劣らずな一品には違いないモノじゃといえば、その価値のほどは分かってもらえるじゃろうて。……ふむ」
するとマルサマは何やらブツブツと呟きはじめる。そして石を両手で持ち上げると、炉の中へと入れた。
「あの、何かの材料になさるのですか??」
シャルーアとしては、あくまで石について聞きに来たので勝手に使われると、預かってきた身としては困るため、マルサマがそのまま炉に入れてしまったことに困惑する。
だがマルサマは、すぐに石を炉から出す。
表面がドロリと溶け、余計な付着物が全て焼き取れた石が姿を見せた。煌々と赤く輝く石は、高熱に燃える石炭のようにも、神秘的な宝石のようにも見えた。
「これがヴィウム鉱の本来の姿じゃ……近づくでないぞい。この石はの、エネルギーを蓄積し、限界に達すると一気に吐き出すという厄介な特性を持っておる。……で、じゃ。ハッキリと明言させてもらうが、この石を加工できる者はおそらく、今はもう世界でワシだけしかおらん」
シャルーアは首をかしげる。だがナーダは察した。
「石を自分に預けろってかい? 扱い難しく、危険性もある。そしてどうにかできる者はスケベタマゴただ一人だけ……」
「もちろんタダでとは言うつもりはないぞい。だがの、扱えぬ者が半端に弄ぶには危険すぎる鉱石なんじゃよコイツは。溶かそうとただ炉に放り込んだままにすれば、それだけで大惨事になる代物じゃからのう」
ナーダとしては異論はない。そもそもゴウが気まぐれに拾ってきた石だ。
だがアイアオネ鉱山の中にあった以上、鉱山の産物と見なせるので、実質的な所有者はトボラージャ町長になる。
権利のない人間がここで勝手に決めることは出来ない。
「トボラージャ町長に伺い立てるまで預かっておいてもらう、っていうのが今のところは筋だね。とりあえず何に使う気でいるのかくらい教えてもらえるかい? その方が町長にも納得してもらえるかもしれないからね」
「シャルーアちゃんの刀の材料にする」
「! 私の……ですか?」
マルサマは真剣だ。その意志を理解したナーダはやれやれと肩をすくめた。
「だ、そうだよシャルーア。とりあえずアンタの口から町長にお伺い立てる事にしようか。話はそれからだ、町長の許可が出るまでその石、預かっときなスケベタマゴ」
こうしてナーダとシャルーアは、今度は町長の屋敷へと出向くことになった。




