十八話 見直しました!
また、まただ!
ちょっと執筆するつもりが気付けば一時間以上経ってて、次話投稿をクリックしている…!
昨日と同じ現象だ! どうなってるんだ!
「マノアです!
至らぬ点ばかりかも知れませんが、よろしくお願いします!!」
早朝、僕はセシカさんの家の庭の一角で大声で挨拶していた。
目の前には大勢のメイドさん達。これだけの人数を目の当たりにしたのは小学校の全校集会以来だ。
…まあ、似たようなものか。
この集まりは僕の顔見せを目的としたものだ。その為に使用人全員が業務を一時中断して集められている。
「現在手違いでメイド服を着用しておりますが、彼は男性です。間違いのないようにお願いします。」
え? 男?
嘘? あの旦那様が?
でも、あの人が言うならそうなのかも…
男の娘ぉ!?
ざわつくメイドさん達。
それは驚くだろう。執事さん以外の使用人はお父様の意向で全員女性だったのに、突然男性の使用人を雇われたのだから。
ここから見れば分かる。年齢差はあれど、確かに使用人が女性しかいないことが。
一面のメイド服の使用人。そこに混じる白いコック服の人も女性だった。そう言えば昨日すれ違ったコックさんも女性だったっけ。
「短い間の付き合いになるかもしれませんが、彼も今日から我々の仲間、温かく迎え入れてください。
それでは、解散!」
キビキビとそれぞれの持ち場へと戻って行くメイドさん達。
その中で一人、立ち止まっているメイドさんが居た。
「今日は彼女にマノアさんの案内をして頂きます。
リスリー、今日はお願いします。」
「あたしはリスリー、よろしく。
えーっと…マノアで良いんだよな?」
「はい、よろしくお願いします。」
なんだかだるそうだ。やる気あるのかなこの人…
「はー、このでっかい屋敷を一人で案内か…執事さん、交代とかねーの?」
「ありません。それより、なんですかその態度は?」
「いつものことだし、そこは水に流してくれよ執事さん。
んじゃ、近いとこから行くか。まずは庭だ。でっかい。以上。」
「リスリー?」
「冗談、ちゃんと説明する。
執事さんも仕事があるんだろ? あとは任せて行け。」
「本当に大丈夫なんでしょうね…」
とは言いながらも、仕事があるのは本当のようで執事さんは去っていく。
正直僕も不安だ。この人に案内が務まるのだろうか。
「じゃあ、今度こそ真面目な説明だ。
この屋敷の庭はかなりでかい。
迷路みたいな花畑とか、ちょっと開けたグラウンドみたいなところとか色々ある。グラウンドではたまにお嬢様とか旦那様とかが鍛錬してるんだ。」
「花畑ですか…!」
「花が好きなのか?」
「はい!」
実を言うと、僕は花に限らず植物が好きだ。
お店にも観葉植物を置きたいと思ってるんだけど、お店のことでてんてこ舞いだからちゃんと育てられるのか不安だから置いていない。枯らしちゃったらショックだし…
「へー、じゃあ行ってみるか。
お前が見てる間、サボれそうだし。」
…余計な一言が無ければ、素直に嬉しかったんだけどなぁ。
まるで僕がサボる口実に使われてるみたいで嫌だ。ちょっと見たらすぐに次のところに案内してもらおう。
スタート地点が庭の一角だったので、そのお花畑にはすぐに辿り着いた。
「わぁ…!」
すごくきれいだ。
色とりどりの花達の真ん中にはテーブルと椅子があって、その近くには噴水が見える。
一度ここでお食事をしてみたいものだ。
「じゃ、あたしは休憩…」
「…次、グラウンドお願いします。」
「え? まだ休めてないんだけど。
花、好きなんだろ? もっと見てても良いんだぞ?」
「隣で先輩がサボっていなければそうさせて頂いていたんですけどね。」
「……はいはい、分かった分かった。」
この人の仕事に対する態度は、どうも好きになれそうになかった。
「この階には執務室や応接室がある。旦那様のお仕事中やお客様が居るところに不用意に入って粗相をしないようにな。
前に掃除で入ろうとしたらお客様が、なんてことがあったからな。掛けてある札を見ればそこは分かるようになってる。まあ、まれにひっくり返し忘れてってこともあるけど。札が返ってなくても聞き耳を立てて、誰か居ないかって調べるように癖をつけておけ。」
最初の態度からはちょっと意外だったけど、この人…リスリーさんは真面目に案内をしてくれていた。
不真面目な人だと思っていたけど、認識を改める必要がありそうだ。
「はー…マジしんどい。まだ半分くらいか…」
前言撤回。そうでもなかっ…
「…え? ここまで歩いてまだ半分なんですか?」
あれ? あの広い庭を一回りした後、屋敷に入って結構経ってたはずだけど…
足がちょっと疲れてきたくらい歩いたのに、まだそれだけ?
「ああ、しかも半分ってのは庭込み。屋敷の案内はまだまだ続くぞ。
うんざりするだろ?」
…うんざりはしないけど、ちょっとだけリスリーさんの気持ちが分かった。
確かに、これはしんどいとも言いたくなる。僕も最初からこれだけ歩くと聞かされていれば気分が落ち込んでいただろう。
「だから急いで案内してたんだよ…あたしとしては珍しくな。」
…もしかして、最初わざとサボるとか言ってたのも急いで案内するため?
いつまでも一か所に留まっていたら、案内が終わらなくなるからあんなことを?
「あ、そろそろ飯だな。
食堂はさっき通ったトコだ。覚えてるよな?」
「はい、さっきの階段を下ってすぐですよね?
…これも、計算の内なんですか?」
「さあてね。
じゃ、飯食いに行くぞー。」
………ただの怠惰な人かと思ってたけど、とんだ食わせ物だ。
僕はリスリーさんに畏敬の念を抱きながら、使用人用の食堂へ行く彼女に付いて行った。




