第6話「異次元キューブ」
ユキトが恐る恐るサニーの方を見ると顔が赤面している。
「いや……これは違くて……その……」
どうやらあの発言は出した、のではなく出てしまうタイプだったらしい。ユキトここで刹那の思考。
「え? わーすごーいゴブリン達みんな死んでるー何が起きたんだ?」
ユキトは自身が認める、人生で1番クソな猿芝居をうった。それが最善だと思ったからだ。秘密を知ったからには〜的な展開がないとは言い切れない。それを聞いて、サニーはもしかしてユキトは見てなかったのではないかと思い、目をキラキラさせながらレインの方を見る。「レイン……頼むから空気を読んでくれ」とユキトは神に祈った。
「あー俺が目隠ししてたからな……うん」
ユキトを超える猿芝居。ユキトは目というか耳抑えなきゃ意味なくねというツッコミを飲み込んだ。
「はー良かったー……絶対見たらドン引きさせちゃうからさー」
「まぁ助けてもらったのとさっきのでチャラぐらいだよ」
「え? 今なんて?」
「いやーなんでもないです……はい……」
「そっか」
あっぶねー自爆するとこだった……とユキトは胸を撫で下ろす。
その時レインはゴブリンの死体を漁っていた。ユキトはゴブリンの死体を見ないようにしていた。グロすぎるからだ。先程から何度も吐き気を催していたがなんとか耐えていた。
「しょっぱいもんしかもってねぇな」
レインはそういうとバックから正方形の物体を取り出した。見たことないような物質でそれは構成されている。その異質さは目を惹くものがある。
「なにあれ?」
「異次元キューブだよ」
「異次元キューブ?」
ユキトはなにが起こるのかと身構える。レインが右手に力を入れると、異次元キューブは手から少し離れ空中を浮遊する。
「『開』」
レインがそう言い放つと異次元キューブは異次元への扉を開いた。何もなかった空間に黒い世界への扉が現れたのだ。黒というのは正しい表現ではない。原理がわからないものというのは興味深くもあり、畏怖の対象でもある。ユキトはあの中には絶対に入りたくないと思った。
「おい青髪」
「はい!」
「死体全部ここに入れろ」
「なんでですか?」
「死体このままにしとけねぇだろ」
「は……い」
ユキトは心の底から嫌だったが涙を飲み、見ないようにしながらゴブリンを扉の中にいれていき異次元へと送る。サニーも手伝ってくれた。全てのゴブリンを入れ終わった後ユキトはせめてもと、手を合わせた。
「『閉』」
レインがそういうと異次元の扉は閉じ、ただの正方形の物体に元通り。レインはそれをバックに戻す。
「あーやって持ち運ぶんだよ!」
「そうなんだ……」
ユキトはあるゲームで、どんなに荷物が多くても主人公が使うバックは小さいままなことを思い出した。それを元に、あのキューブはたくさんの持ち物を収納するための用途に使われるものなんだと推測した。
「結構時間くっちゃったね……町に急ごう」
「あ」
「うん」
ユキトは時間というワードを聞いた時不安に襲われた。上を見上げると太陽が光輝いているがこれが本当に太陽なのかユキトにはわからない。違う恒星なのか、誰かの魔法とかいう異世界チックな話にも発展しかねない。いつも自分を照らしていたものが、全く違うものかもしれないと想像しただけで、いいようのない不安と恐怖に襲われる。ユキトは考えることを放棄した。
「あとどれくらい? はぁはぁ」
「もう少しだよ! ユキトは着いたらまず服を買わなきゃね!」
「たしかに……この服どう?」
「引くほどダサいよ」
「ぐふっ―」
ユキトの心に100のダメージ。ユキトはずっと学ランを着ている。それは異世界の情景に合わなすぎている。ユキトの学ランはユキトが気絶している時、合計2回にわたりレインが洗濯し乾かし傷を修復し着せるところまでやっている。全て魔法で行う。レインには汚いものを見るとキレイにしたくなるクセがある。ユキトはこのことを知らない。なんで俺の学ランこんな綺麗なんだろうと思っているアホである。
そうこうしているうちに目的地の町ルーグに着いた。町の情景を見てユキトは初めて、良い意味で異世界に来たんだなと実感した。
寝過ごしてしまいました。本当にすいません!
明日も遅くなりそうです。