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第4話「サニー=フォルリィア」

 ――にい……にー……兄?……兄妹ってことか……つか……助かったのか?……。


 意識が遠のいていく。


「ちょっと……ねぇ!……」


 少女の呼びかけに応えることはなく、ユキトはその場に倒れこみ、気を失った。




 ◇




 静かに目を開く。ここはベットだ。このパターンは2回目である。さっきと違うことといえば部屋に風穴が空いていることぐらいだろう。異世界に来てから起きている時間より気絶している時間のほうが多いんじゃないかとユキトは思った。


「あ! 起きた! ねぇー大丈夫?」


 声のした方に首を動かすと先程の少女が目の前にいる。ベットに手を置き耳をピクピクさせながらこちらを見ている。後ろでは尻尾がフリフリと動いている。


 ――近い、可愛い、近い、近い、近い。


「あ……うん……大丈夫」


 体の傷は全て無くなっていた。心の傷は大丈夫ではないが、その可愛さはそんなのいいやと思わせる力があった。


「はー……良かったー……ほらお兄謝って!」


 目の前の猫耳少女に目を奪われていたが、奥を見るとレインが壁に寄っ掛かりながらこちらを睨んでいる。

 冷や汗が体のいたるところから止まらない。体にしっかりとした恐怖を植え付けられていたようだ。


「……………」


 レインはめんどくさそうな顔をしながら黙秘を続ける。


「おーにーいー……謝って!」

「うるせぇーなー……俺はこいつを試しただけだ」

「試す? なんで?」

「こいつが俺に嘘をついたからだ」


 嘘?そんなものをついた覚えはなかった。まず試すっていってもやりすぎだろ……。ユキトは憤りを隠せない。


「嘘ついたの?」

「ついてないですついてないです!」


 レインがすごい瞳孔で睨んでくる。生きた心地がしない。


「本当に?」

「いや本当ですって……ここまでされてまだ嘘なんてつかないよ!」

「うーーん……」


 少女は考え込んでいる。そして何か思いついたのか、少女は口を開いた。


「ねーお兄……誤作動してる可能性は?」

「俺を機械みたいに言うな……するわけねぇだろ」

「でも私はこの人嘘ついてないと思うよ? 能力に頼りすぎなんじゃない? 必ずしも見抜けるか確証はないでしょ?」


 能力……ユキトにはついていけない話だ。


「まぁーそーだが……おい青髪……」

「は、はい!」

「もう一度聞く、お前は魔法を使えるのか?」


 ユキトは全てを察した。この質問で俺はミスったのかと。実際使えないのは事実だが、ナギは使えてしまう。その矛盾が能力とやらに引っかかったのだろう。ユキトは考えた矛盾しない答えを。


「こ……この今喋っている三坂幸人は全くもって魔法を使えません!」

「…………」


 とてもバカらしい答え方だがこれなら大丈夫なはずだ。沈黙が怖い。


「どーお兄?」

「――嘘ついてねぇ」

「あ、あれー? じゃーさ……ただのお兄の勘違いでさ! こんなこの部屋とかボロボロにしてさ! この人あんな傷つけたってこと?」


 少女には色々溜まっているものがあったらしい。それが爆発する。


「…………」

「いーっつもそう! 1人で先走ってさ! 色々やらかす! この部屋とかどーすんのよ! どう説明するの大家さんに!」

「任せた」

「おい!」


 大変なんだな……とユキトは察した。


「ごめんねー本当に……でもお兄は本当は優しいんだよ! ちょっと荒っぽいとこあるけど」

「あ――いいよ……体もなんか治ってるみたいだし」

「それはお兄が持ってた治癒のポーションを使ったんだよ! 最初から君に使うつもりだったみたいだよーまぁだからってやりすぎなことには変わりないけどね」


 ユキトは最後のとか完全に殺しにきたよねって思ったが、あれはギリギリまで追い詰めて嘘を暴き魔法を使わせようとしたのだろうと都合のいい解釈をした。実際これは事実である。


「私の名前はサニー=フォルリィア! 年も近そうだしタメ口でいーよ! サニーって呼んでね!」

「俺は三坂幸人よろしくおねが……よ、よろしく呼び方は……ユキトで」

「よろしく! ユキト」


 近いというか絶対年下だよな、と思いつつ目の前にのびてきたとても小さい手と握手を交わす。これがあの斧を持っていたと思うとユキトはゾッとした。


「ほらお兄も!」

「え?」


 思わず口にでた。レインと握手するのは怖すぎたからだ。レインはすごく嫌そうな顔をするがサニーが手を引っ張ってきてレインに手を差し出させる。妹には逆らえないのかな……。


「お兄にもタメ口でいーよ! こんなことしたんだし!」

「おい」

「お兄は黙って……はい握手」


 レインとも握手を交わした。思ったより細い手だ。


「よ、よろしく」

「あぁ」

「よしよし! 一件落着」


 まぁ言いたいことはあるが、ここでたて突いても勝てるわけはないし、友好的な関係になった方が絶対いいと感じたので我慢した。それより聞きたいことがユキトにはあった。


「そ、そういえばさ風華さんって人知ってる?」


 サニーとレインはその名にピクッと反応を示す。


「知ってるけどなんで?」

「お礼を言いたくてさ……ほら助けてもらったし」

「なんで名前を知ってるの?」

「え? それは……友達ーというか……知り合いなんだよ」


 サニーはレインの顔を見る。レインは首を振る。サニーは安心したように、


「そっか……フーカさんと知り合いなんだね」

「そう!」

「じゃあ私についてきて」


 やっと会えると安心した。フラれているが2人とも転移したという運命が奇跡を起こすんじゃないかとユキトは期待していた。

区切るところを間違えたと自分でも自負しております。

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