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第2話「厳しい世界」

「風華さん!」


 ユキトはそう叫びながら飛び起きたがそこは六畳ほどの部屋だった。周りには誰もいない。体を隅々まで見渡すと体の傷が癒えていた。


「全部……夢?」

「なーわけねえだろ!」

「うるさいなぁ……希望を持ってもいいだろうが」


 ユキトはあの時生まれて初めて死というものを身近に感じた。正直外に出たくない。このままずっと寝ていたいそんな気持ちだった。だがそんな心を前向きにさせたのは風華の存在であった。


「あ……そうだ……風華さん、風華さんがいたんだよ! 髪色は違かったけど絶対本人だ!」

「他人の空似だろ」

「いやそれはない! 絶対にな! でもなんでこの世界にいるんだ?」

「知らねえ」

「まぁー俺が世界何10億人といる中の選ばれし1人ってことはないと思ってたけど、地球人って結構この世界にいるのかな」

「知らねえ」

「知らねえって……なんかもっと反応してくれよーもっと言葉のベースボールしよーぜ」

(キャッチボールね)

「ごめん」


 ユキトは喋り続けるしかなかった。喋っていないとあの時の痛みが、恐怖が、全身を覆うようなそんな気がしたから。

 しかし喋ることがなくなり生まれた沈黙。そこで無意識にユキトは何があったのか思考を巡らせる。


「黒い狼から逃げて、その後ワニみたいなやつに出会って、逃げようとしたらレーギルが調子に乗ったけど何も起きず、ワニが噛み付いてきて、それがとんでもなく痛くて、でもそいつが切り刻まれて、ナギがなんか風発生させて、何もかも吹き飛ばして、俺背中強打……色々聞きたいことが多すぎるわ!」

「でその後湖に落ちて、お前が風華って言うやつに助けられてここまで運ばれたんだろうなー傷も癒して……つかお前の言い方だと俺ってすごく恥ずかしいやつじゃない?」

「引くほどダサいよ……あんなの俺だったら死んだほうがマシだわ」

「おい……ぶん殴るぞ」

「死んだほうがマシ……か……」

「おい殴らせろ」

「死ってのを本当に身近に感じるとさ……こういう言葉軽々しく使えねぇな……だって生きられるならそんな辱め何回でも受けられるし……まぁこのセリフ言う時本当に死ぬって考えてるやつはいねえだろうけどな」

「……で……結局何が言いたいの?」

「俺にもわからん」

「やっぱ殴る」

「やめて!」


 この一連のトークにはユキトにいつも通りの日常だと感じさせる作用があった。だから敢えて気になっていた非日常な質問をレーギルにしなかった。落ち着きを取り戻すために。ユキトは深く深呼吸をした。そんな時だった。


 ――ドガァァァァァァァン


「うわっ――」


 部屋のドアがすごい勢いで開けられた。ユキトは思わず声を上げてしまった。落ち着ける場所から一転、緊張感のある現場に早変わり。ドアのところに足を上げた白髪の男が立っていた。ドアを蹴り飛ばして開けたのだ。鋭い眼光でこちらを睨んでくる。ユキトは背が高い方だがそれを越す高さがある。ガタイもユキトより断然いい。


「おい」

「は、はい……」


 風華とは会ったというか見たというレベルなので、これが第一村人発見! の状態だ。ユキトは第一村人に色々この世界のことを聞こうと少し思っていたが、その願いは砕け散った。どう考えてもそんなことを聞ける相手ではない。


「お前どっから落ちてきたんだ?」

「え?」

「質問に答えろ」

「が、崖です」

「崖? そんなものあの湖の近くにないぞ」

「え? いやでも……そこに崖がないと辻褄が合わないというか……」

「嘘か?」

「嘘じゃないです!」

「じゃーあそこにあるのか……あるいは……」


 沈黙が流れる。ユキトは不安だった。はたから見てもどう考えても自分は怪しい。嘘じゃないって信じてもらえてるのだろうか。


「おいお前」

「は、はい!」

「お前魔法は使えるか?」


 魔法。異世界に来たら1番キーになるかもしれないレベルの大事な概念だ。ユキトは魔法がどういうものかだいたい予想がついていた。多分レーギルが使おうとして出せなくて、ナギがワニを吹き飛ばした時のやつのことだろう。

 質問の内容がお前ということだったのでユキトは自分自身が使えるか話すことにした。こういうのは使いこなせたと実感したとき初めて使えるというべきだ。そう考えていた。


「いや全く使えないです」


 ユキトがこう言い放った瞬間、白髪の男の血相が変わった。実際この言葉に嘘はなかった。ユキトにとっては。


「そっち側か……」


 ――ドガァァァァァァァンバキッ――パリィン


 白髪の男はいきなりユキトの胸ぐらを掴み、壁に投げ捨てた。右手のみで。勢いが強く、ユキトは壁をぶち破り窓を割りながら外に放り出された。そこは二階だったらしく、体を地面に強打し、勢いに任せてゴロゴロ転がる。体のいろんなとこを擦りむき血が垂れる。ある程度転がったところで勢いが失われ止まった。


 ――痛い、痛い、この世界俺に厳しすぎるだろ……。


 自分が放り出された建物をみると一箇所にどでかい穴が空いている。あそこから空に飛び出したのだろう。そこに人影が見える。白髪の男だ。


「レイン=フォルリィア……生きてぇなら俺を殺してみろよ青髪」

遅くなってしまい申し訳ございません!

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