第21話「転送魔方陣」
「ふぁーぁあー」
盛大にあくびをする。ユキトは朝が苦手である。体が重い。
「なーんか変な夢見た気すんな……まぁいいや」
ユキトはそんなことを言いながらベッドから降り身支度を始めた。手が震える。なんといっても今日は大事な試験だからだ。
(緊張してんの?)
「――ナギか……そりゃな。落ちたら無職なわけだし……冒険家が職という分類に入るかは知らんけど」
(まぁ今の状態は無職だけどね)
「な」
「はー試験程度で緊張とか情けねーったらありゃしねぇ……そんなの一発ドカーンと合格するに決まってんだろ俺いるし」
「おいレーギル操るな! 体力減るだろうが!」
(はいはい)
「あ! そういえばだけどよ……試験中お前ら俺操るの絶対禁止な」
(は……なんで?)
「お前らの力は未知すぎる……そしてお前らの力で合格したとしてもそれは俺がしたとは言えないからだ。今日のは俺の試験なんだ」
(――はー……何言ってんだか。自分の力を過信しすぎてないか? 今までお前が生きてこれたのは俺やナギ、周りのやつらのおかげだぞ)
「そんなのは誰よりも俺が1番わかってんだよ……だからこそだ」
(頑固な野郎だな。温室育ちのユキトくんには無理だって……わからないかなー……お前が落ちたら俺も困るんだよ。だよねから駄々こねんな)
「お前の事情なんか知るか。俺の道は俺が決める。たとえ落ちることになったとしてもな……お前らが俺を操り俺には絶対にできないであろうことをした瞬間、それが俺がリタイアを宣言する瞬間だ」
(チッ)
(まぁまぁ喧嘩しない喧嘩しない……しょうがないよレーギル。この体はユキトのものなんだから)
(――はいはいわかりましたよ)
「助かる」
何度も言うが客観的に見たら、ずっと1人で喋り続けている変態である。
「えーっとレインにもらったナイフとポーションを入れてっと……あとイヤホン。学ランは入らねぇよな……どうしよ」
(捨てれば?)
「――いやバカバカ……学ランはここまできたら引くほど愛着あんだよ……まぁ手で持ってけばいっか」
こうして二泊した宿に別れを告げた。外に出るといつもより日が自分を照らしている気がした。
◇
そしてギルドに着いた。
「早く来すぎたかな……ゲッ……」
思わずユキトは難色を示す。ギルドに入ろうとすると、ギルドの外まで行列が続いていたのだ。ユキトは仕方なくそれに並ぶことにした。ユキトの中ではこれから待つであろう時間を想像し憂鬱になりながら、できればこのまま試験が始まらないでほしいと想像するという矛盾の心が生まれていた。そんなユキトの心はよそにみるみる行列は解消されていき、ユキトは受付の目の前まで来ていた。受付には前もいたルリが立っていた。
「お名前は?」
「ミ、ミサカユキトです」
「あー……あなたでしたか……私のこと覚えていますか?」
「ル、ルーグの名物ルリさんですよね」
「わかってますね! はい! これを受け取ってください」
ユキトは紙と輝く石を手に入れた。
「あの……これは?」
「紙に書いてあるんでそれを読んでください! 後ろ詰まってますので!」
「あ……はい」
テンションどーなってんだと思いながら、ユキトは横に避け壁に寄りかかる。そして紙を見るが、相変わらず何が書いてあるのか全く読めない。
「レーギルーヘルプミー」
レーギルはダルそうにしていたが読み上げてくれた。
「ふむふむ……つまりこの石を持ってあそこの転送魔方陣ってやつに乗れば、俺が今回組むパーティーメンバーがいる待機部屋に転送されるってわけか」
(そう)
「すげぇ技術だな。そしてルール説明は待機部屋でってわけか」
(そう……もうそんなのいいから早く乗れよ)
「でもあの魔方陣なんか怖いんだけど……安全なのかな」
(はー……)
「呆れんな!」
色々な人がその魔方陣に乗り残像のように消えていく。これを見てユキトが感じたのは興奮などではなく恐怖だ。
「仕組みがわからねぇって恐ろしいもんなんだな」
(――お前よくその心持ちで試験受けようだの自分の力で受かるだの言えたな……)
「そこまでは言ってねぇよ……まぁ乗るか……」
ユキトは一歩を踏み出し魔方陣の上に乗った。すると心配してたのがバカらしくなるぐらい一瞬で、違う場所に移動した。その瞬間の感覚は少しGが体にかかったという感じだ。
「ふー……やってみたら何事もそうでもないものだよな……ウッ」
ギルドはガヤガヤしていたのでユキトの独り言は煙のごとく消えていっていたが、静かな密室ではそうはならない。転送してすぐ目の前にいた
赤髪の男とピンク髪のツインテ女がこちらを見ている。ユキトの試験は気まずい空気から始まった。
読んでいただきありがとうございます。
二章が始まりました。面白くしたいと思っています。




