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第20話「錯綜する心」

 時は少し遡る。


 闇市(ブラックマーケット)のとある店で金髪の男があるものに目を奪われていた。


店主(マスター)これをどこで?」


 その男はあるものを指差しながらそう店主に問う。


「あぁこれは今日、お得意様のツレの方が持ってきたものでしてね。スマホというものらしいですよ……すいませんがそちらは非売品になります」

「……これを持ってきたのはどんなやつだった?」

「ふーむ……たしか青い髪の方でしたね。あと真っ黒の珍しい感じの服を体に纏ってました」

「青髪か……ありがとなーまた来るよ」

「はいよー」


 金髪の男は店から出て歩き始める。すると広場の方が何か揉めているようだった。


「おいタツキ! 起きろっておい! いつまで気絶してんだよ!」


 黒髪の男2人が、倒れている男の顔を叩いて起こそうとしていた。


「――フワッ……タケルにタカシ……何がどうなってんだ……イタタ」

「お前殴られただけのくせにいつまで気絶してんだよ、マジで」

「ごめん……タカシ」

「はー今日は最悪の一日だぜ」

「あれ? 奴隷達は? おい! どーなってんだよタケル! タカシ!」

「うるせぇなお前、何もしてねぇくせに喚くなや……」

「ごめん……でも本当に何があったの?」

「――学ラン姿の青髪野郎が邪魔してきやがったんだ」

「どーゆー状況だよ」

「俺が知るかよ」

「その話俺にも聞かせろ」

「は?」


 黒髪3人が声のした方向に振り向くとそこには金髪の男が立っていた。


「なんだてめぇ……こっちは今イライラしてんだよ……殺されたくなかったらどっかいきな」

「――お、おい! タカシ! やめろバカ!」

「え?」


 タカシとタツキはぼけっとした顔をしているが、タケルはブルブルと震えていた。


「イチカさんですよね……?」

「なんだ……知ってるやつがいるのか……なら話は早い。起きたことを全て話せ」

「は、はい! わかりました! おいタカシわかったか?」

「イチカ……? 誰だよ」

「おいタカシ! 今そんなこといいからとにかく起きたことを全て話すぞ!」

「うるせぇなタケル……はいはいわかりましたよ、話せばいんでしょ話せば」


 そしてタケルとタカシはイチカに起きたことを包み隠さず話した。


「学ラン姿で青髪の男か……お前らはなぜ同志だと思い話しかけなかったんだ?」

「いやー最近は学ランもこっちでも売ってたりしますし、何よりタツキを殴り飛ばした時、すごい魔法を使いこなしてたんですよ……それに加え青髪ですし」

「……そうか」

「どうしますか?」

「どうする?……か……まぁお前らはまずボスに自分らの失態を伝えにいくんだな」

「……ウッ」


 3人が恐怖に顔を歪める。イチカは3人の肩をポンと叩いた。


「クソッ……あいつさえいなければ……青髪……殺してやる」

「おい待て殺すな……タカシと言ったか」

「うるせぇーな……まずお前誰だよ……金髪とか調子に乗りやがってよー」

「はーこれだからガキは」

「あ? お前今なんつった?」


 タカシはイチカを睨みつけ喧嘩腰になる。


「おいタカシやめろって! おいタツキ止めるの手伝え!」

「邪魔だどけ!」


 タカシは抱きついてくるタケルとタツキを振りほどき、懐から銃を出す。


「今言ったことを訂正しろ……さもなくば撃つ」


 イチカは深いため息を吐き呆れ顔で、


「お前よくそんなんで今まで生きてこれたな……周りの2人のおかげか」

「殺す」


 ――バキューン


 銃声が鳴り響く。銃弾はイチカに一直線で向かっていく。だがイチカはそれをまるでそこにくるとわかっていたのかのようにひらりと躱し、タカシの顔面に渾身のパンチを決めた。タカシは吹き飛びまた壁にめり込む。タケルとタツキは唖然としながらその状況を見ていた。


「す! すいませんイチカさん! うちのタカシが本当にすいません!」

「まぁ……殴れたしこれでチャラな」

「は、はい! ありがとうございます! ……ですが本当にあの青髪はどうしますか?」


 イチカは少し考え込んでから、


「別に殺しに行くとかはしなくていいだろ……時間の無駄だし」

「そうですか……」

「まぁ次邪魔した時は……」

「時は?」

「現実をわからせてやればいい」

「わ、わかりました」

「じゃあもう行くわ」

「はい! お疲れ様です!」


 イチカは3人の前から去っていった。


「なぁタケル」

「なんだタツキ」

「俺すげぇ頭とか下げちゃったけどさ……あの人何者なの?」

「……幹部」

「か、か、か、幹部? あの人が?」

「そうだよ……逆になんで気づかないんだよ」

「気づくも何もだってあの人金髪だし」

「イチカさんだけ許されてんだよ」

「なんで?」

「噂によるとボスより強いから」

「嘘だろ……」

「真偽はわからねぇ……でもさっきの動き見たろ? 人間技じゃねぇよ」

「まぁ確かにな」

「そんなことよりボスに失態を伝えに行かなきゃ……」

「ウエッ」


黒狼(コクロウ)の桜』これが4人の所属する賊の名前である。これを構成するは黒髪の人間達。だが例外が1人だけいる。その名はイチカ。幹部の中でも一目置かれる男である。そのイチカはユキトの話を聞いて昔のことを思い出していた。しょうもない自分の昔のことを。


「奴隷のために体を張ったってわけか……まだそんな偽善者がこの世にいるんだな……ハハッ……ほんと……虫唾が走る」


 イチカはすごい形相でそう吐き捨て歩みを進めた。


 世界は広い、だからその偽善者と交わることは一生ないだろう。だがもしかしてが起き、交わってしまったとするならば……その男の全てを否定し、全てを殺すとイチカは心に深く刻み込んだ。

読んでいただきありがとうございます!

次回から二章 冒険家適性試験編が始まります!

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