第19話「別れ」
「はー何も羨ましくねぇだろ……うるせぇだけだ特にサニーとか寝相も悪いし」
「ちょっお兄……」
「昨日なんか俺のベッドに入ってきたし」
「お兄! 」
サニーは赤面している。部屋の構造上ベッドは4つで離れたとこにあるから、寝相が悪いとかいう理由でベッドに入ってくるなんて状況はありえない。ユキトは全てを理解した。
「まぁ兄妹だとしても別に俺はそういう感じになってもいいと思うよ」
ユキトは小声でそうサニーに耳打ちする。
「い……いや……違くて……」
サニーは耳まで赤くする。
「つかレインは嘘見抜くって特性あるくせに鈍感なのかよ……どーなってんだ」
「あ? なんか言ったか?」
「いや……なんでもない……鈍感キャラのテンプレセリフ言うな(小声)」
ユキトは他人のそういうのに鋭い方である。だが自分のこととなると大体予想が外れる。自分のこと好きなのかなと思った人が、自分のことを好きだったことは人生で一度もユキトにはなかった。
「でも私達は兄妹だから……」
サニーは寂しそうな顔をしながらそう答える。ユキトは少し焦る。
「でも本当の兄妹じゃないだろ?」
「え?」
沈黙が場を支配する。これはユキトがずっと思っていたことだった。だがこれは失言だったかと焦る。
「なんでそう思うの」
「いやだってレインにはサニーみたいな耳も尻尾も生えてないし………」
沈黙が続く。そんな時レインが口を開いた。
「――ミミトシッポハソウテンカノウナンダ」
すごいカタコト。ユキトはレインの嘘の下手さに愕然とする。
「ソウソウ! オニイノイウトオリ」
「ヘ、ヘーソウナンダ」
「ソウソウ」
1ミリも隠せていないが、隠したいことらしいのでユキトはこれ以上聞かなかった。そんな時だった。
「サニーーー」
聞いたことのない声がした。みんなは声のした方を見る。そこにはフーカさんと髪の長い女性がいた。2人はこっちに近づいてくる。
「君誰?」
髪の長い女性がユキトにそう話しかける。近い胸がでかい。ユキトは赤面する。
「え……わわ私はミサカユキトというものです」
急な私口調。ユキトは女性が苦手である。なので巨乳で美しい人を目の前にして普通に喋れるわけがなかった。目も合わせることができない。女性が苦手だのコミュ障だのとうたいながら、異世界に来たら普通に喋れるという最強の仕様はユキトには働かなかったらしい。ユキトは完全に異世界デビューに失敗していた。
「君……今私のこと見て胸でかすぎ! って思ったでしょ?」
「え?」
ユキトは混乱した。確かにそう思ったが、初対面の女性に胸のことについて話すなど、そんなヤリチン主人公みたいなことユキトにできるはずがなかった。
「いやいやいやいやいや思ってないですって」
ユキトはすごい速さで首を横に振り否定する。するとその女性はレインの方をみる。レインは首を横に振る。
「ねーもう一度聞くけど……思った?」
その女性はそうニヤニヤしながら聞いてくる。ユキトは「レインめ!」と叫びたい気持ちを抑えながらプルプルと小刻みに震える。
「お、思ってしまいました……はい……レインめ!(小声)」
ユキトがそう言うとその女性は腹を抱えて笑いだす。その場から逃げ出したいぐらい恥ずかしい。その女性は笑いすぎて涙目になっていた。そして一通り笑い終わると前に手を差し出す。
「君……面白いね。私の名前はアフィシナンテ=レヴェンテ……よろしくね」
「あ……ミサカユキトと申します……よろしくお願いします」
2人は握手を交わす。手がすごく柔らかい。美女の手を触る……ユキトはとても緊張していた。それが相手にも伝わるほどに。
「そんな緊張しなくていいよ……ユキトひょろくて全く私のタイプじゃないし、恋だとかそういうことも起きないからさ」
ユキトはレインの方を見る。レインは首を縦に振った。ユキトは膝から崩れ落ち絶望を覚える。それを見てレインとアフィシナンテは笑いだす。
「ユキト……アフィさんは思ったことを口に出しちゃうエルフだからあんま気にしない方がいいよ」
「グフッ……サニーこれ以上俺の傷をえぐらないでくれ……エルフ?」
ユキトは急いで今まであまり見れていなかったアフィシナンテの顔を見る。すると耳が尖っていた。まぎれもないエルフである。ユキトは変な意味でなく普通に興奮した。そんな時だった。膝から崩れ落ちていたユキトに、フーカが近づいてくる。短いスカート……中が見えてしまいそうだ。
「ねぇフーカさん……あのさ……スカートどんどん短くなってない?」
「……別にいーでしょこれが1番動きやすいんだから」
「だからってその短さはエロすぎるって! そんなんじゃユキトとか興奮しちゃうよ!」
「そーなの?」
「――いやいやいやいやしないですって本当ですよ本当! これはレインに聞くまでもないですよ!」
なんでここで俺に振るんだとサニーを恨んだ。
「まぁここでお兄を見るのは酷すぎるからやめるけどさー……フーカさんとにかくその短さはやめた方がいいって……嫌ならせめてパンツの上になんか履いて」
「風で膜を張ってるから中は見えないようになってるよ……だから履いたら動きづらくなるじゃん」
「むー」
ユキトは驚愕した。じゃああのスカートの中にあるのは生パンツだと言うのか……と。ユキトの視線は一点集中になる。ユキトはそんな自分の顔を叩いた。命の恩人を目の前にして俺は何をやっているんだと。まだ色々あって、感謝も伝えれてなかった。ユキトは立ち上がった。
「フーカさん……」
「何?」
「あの時助けていただきありがとうございました! あなたがいなければ俺は今ここにいないです」
「……」
沈黙が場を支配する。心臓の鼓動が鳴り止まない。そしてフーカが口を開いた。
「告白はまだしないの」
「え……はいまだです……告白!? しないですよしないです!」
ユキトはとても焦る。そういえばレーギルがそんな感じの失言をしたのをユキトは思い出す。この場もなんとか誤魔化した。
「またね」
「またねユキトー」
「またね試験がんばー」
「またねです! みんなの旅の安全を祈っています」
ユキトは手を振り続けた。こうしてユキトはみんなと別れた。と思ったら真横にレインがいた。
「うわっ――どうしたんだよレイン……」
するとレインはユキトにナイフを差し出した。ユキトはとてつもなくビビる。
「あ」
「え?」
「これやるよ」
「あ、ありがと」
「無くしたら殺すからな」
「うへっ」
「あとこれ」
レインは手に紫の液体が入ったビンを持っていた。
「なにこれ」
「俺特製の治癒のポーションだ……怪我した時その場所にかけろ」
「あ、ありがと」
「あとな試験のことだが……」
「うん」
「危険を感じたらすぐリタイアしろ……お前は雑魚だ。自分の実力を見極めてそれ以上のことをしようとするな、わかったか」
「おう……了解」
「――じゃあな」
「うん! ほんと色々ありがとな」
「あ」
こうしてみんなと別れた。そしてユキトは宿に戻った。どうやらフーカさんが今日までの宿泊代は払ってくれていたらしい。ユキトは感謝を胸に明日に備え寝ることにした。だが1つユキトの中で引っかかるものがあった。それはあの黒髪の3人はどーなったかということである。レインがボコってから放置したまんまであった。ユキトは銃を奪わなかったことを後悔していた。銃。
「銃か……そういえばあいつらの戦い方原始的だったよなナイフ振り回したり……あいつらも転移してきたのか? ……いやそんなわけねぇか……」
ユキトはそんなことを思いながら深い眠りについた。
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次の次の話から二章が始まります。




