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第17話「ぶっ壊す」

 ユキトはみんなと別れ、宿に戻っていた。


「我ながら良いことができた気がする」


 ユキトはほぼお金を渡しただけだが、物理的にも精神的にもみんなを救ったのは事実である。ユキトはその余韻に浸っていた。だが何か胸に引っかかるものがあった。


「お前ってほんとバカだよな」


 勝手に口が動く。ユキトはどでかいため息を吐く。


「レーギルか……いんだよ俺が決めたことなんだから」

「お前さー……どーせ助けたりしてカッコいいとこ見せたから、あのセシリアとかいう女から告白されたりする……とか考えてたんじゃねぇーの?」

「――考えてなかったと言ったら嘘になる……」

「やっぱバカじゃん」

「少しだけなー考えてたのは。まぁまずこの世界がそんな簡単に行くわけないし……今の今まで奴隷として虐げられる運命を辿らざるおえなかった人達が、急に男だの色恋だのなんか考えられるわけねんだよ」

「見返りは必要ないってことかよ」

「いや……それは無理」

「は?」

「どんなことでも見返りはなきゃやってらんねーよ……」

「あいつらに何要求するつもりだよ」

「要求するのは笑って幸せに暮らしてくれること……かな」

「きも」

「色々やってもまた生気のない顔で生きられたら、俺も自分の行動に疑問を持っちまうからな……みんなが幸せならそれでいいよ。物理的な見返りはいらねぇ」

「お前とはあいかわらず合わねぇわ」


 レーギルはユキトの理解できない発言に言葉を失う。


「つかナギ俺を操って、敵の野郎を殴ってくれてありがとな」

(う……なんで俺だとわかったの)

「んーまぁまず俺ではないし、レーギルはそんなこと絶対しないし……消去法。あと大体ナギが俺を操る時は左手でなんかすんだよ」

(そっか……なんかさ……あの時、男の子が蹴られた時さ……蹴った男をすげぇ殺したくなったんだよ。でその衝動を抑えることができなかった。俺ってなんかおかしいかな)

「まーたしかにそこまでしちゃうのは、おかしくないかっていったら嘘になるかもだけどさ、少なくとも俺なんかよりはナギは勇敢でカッコいいやつだよ。みんなを救えたのもほとんどナギのおかげみたいなとこあるし……」


 自分の胸にずっと引っかかっていたものの正体にここでユキトは気づいた。それは自分は結局何もできていないんじゃないかということである。まず最初にナギが操らなければユキトは見て見ぬ振りをし、あの場から逃げただろう。そしてその後敵を倒したのはレインだ。ユキトはナギとレインが作った救いの形の周りを固めただけに過ぎない。なんでこの程度のことで俺は良いことをした気になっているんだろうとユキトは今までの自分を恥じる。


「何か言い残すことはあるかーヒーロー気取りの偽善者が」


 ユキトは敵に言われた言葉を思い出していた。


(どうしたのユキト)

「――俺はヒーローじゃないからさ……気取ることぐらいしかできないんだよ。でも俺は大事なとこで動かなかった何もしなかった……気取ることすらできてねんだよ。俺が本当の意味で動いたのは自分の身が安全になってからだ。俺も何かしなきゃって……お金を渡すことで繕おうとしだけなのかもしれない。ハハッ……これじゃあ俺がさっき言った笑顔が見たいだのの話はなんだったんだよ……俺はやっぱ嘘つきの偽善者なのか?」


 今のユキトは自分自身のことを信じられていない。ユキトは元から自分のことをあまり好きではないし、自分がせこい人間だと決めつけている。どんどんネガティブになる。


「ちげぇだろ」

「え?」

「ただ繕おう……普通それだけのためにここまでやれねぇよ」

「いや……俺はレインに頭おかしいって言われてんだよ。俺は頭がおかしいんだよ……」


 ユキトのネガティブシンキングに拍車がかかる。だがレーギルはユキトのこの発言であることに気づく。


「あーそうだよ……お前奴隷を助ける時、レインってやつもずっと一緒にいたよな」

「う、うん」

「あいつの前でお前は色々くっさいこと吐いてたよな? 救うならここまでしなきゃいけないだろとか色々」

「あぁ……それがどうした」

「あいつの特性忘れたのか?」

「?……あ……嘘を見抜く的なやつか」

「そう……だからお前の発言が嘘かどうか、あいつにはわかるってことだろ。嘘ばっか吐くやつのために、あんなギリギリまで力は貸さないと俺は思うけどな」

「た、たしかに……それは信憑性あるな」

「お前さナギが始まりだとしてもよー……そっから後はお前が決めお前が成したんだろ? 自分があの時何を思ってあんなことまでしたのか……思い出せよ」


 ユキトは少し考え込む。そして口を開く。


「ただ俺は……あの時……あんな他人を虐げて生きてるようなやつらが、幸せそうに笑って……何も悪くないルーク達があんな顔をしなきゃいけない……そんなのが正しいっていうなら……そんな世界は俺がぶっ壊してやる! ……そう思ったんだ。今の俺じゃお金を渡すぐらいしか、根本的にできることがなかったんだけどな」

「くさいな」

「俺こういうこと思う人間じゃないんだけどな……俺の中で何かが変わりつつある。そんな気がする」

「しらねぇよ」

「ありがとなレーギル……なんか落ち着いたわ」

「勝手にネガティブになって勝手に戻って……あいかわらずめんどくせー野郎だなお前は」

「わり」


 ユキトは胸につっかえていたものが取れ、心が晴れた。そしてユキトは明日の試験のためにもう寝ることにした。

遅くなって申し訳ありません!

読んでいただきありがとうございます!


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