第16話「頭がおかしい男」
2人は元奴隷達を連れて来た道を辿り、宿まで戻る。その途中町の人からは憐れみの目が向けられる。ユキトは心が痛かった。宿に着くとみんなでユキトの部屋に入る。
「おいどーすんだよこの状況……」
ユキトが泊まった部屋は4人用の部屋だが12人もいるとキツキツだ。そしてこの状態にみんな頭の上にハテナを浮かべている。そこでユキトは口を開いた。
「一人ずつ風呂に入ろう」
「え?」
あまり口を開いていなかった人達も思わずそう声を漏らす。
「お前何言ってんだ?」
「え……? いやほら! まずは体を綺麗にした方がいいと思って……いや! 監視カメラとかつけてないよ! ほんとだよ!」
「そんな心配誰もしてねぇよ」
「レインは何が言いたいの? まずは風呂って言ったじゃん……あーそっか俺らいたらなんか緊張しちゃうよな……外で俺らは待ってるから、風呂から上がったらこれ着て出てきてください!」
ユキトは1人ずつに借りた服を配った後、レインを引っ張って部屋の外に出る。レインはユキトの謎のテンションの高さに動揺を覚えた。
「お前風呂ならよー大浴場とかでいいだろ」
「それだとさ、なんかあった時守れないじゃん」
「は?」
「いやだって俺らは女湯行けないだろ? そこでなんかひどいことがあったとしても俺らは何もできないじゃん……だがしかしこのスタイルならそんなことは起きない」
ユキトは自信満々にレインの顔を見る。
「それ俺がいること前提じゃねーか……俺もう付き合う義理ねーし帰っていーか」
「うえっ……だめ」
「なんでだよ」
「頼むよ……明日から俺のこと見捨ててもいいから今日だけは……今日だけは力貸してくれ!」
「はー」
「お! それはOKの合図」
「殺すぞ……これからの予定は?」
「みんなが風呂から上がったらみんなの服を買いに行く、そしてみんなの住む場所を確保する……って感じかな」
「お前そんな金どこにあんだよ」
「ふっ――レイン忘れたのかい?」
「お前――まさか……」
「そのまさかさ俺には今、奇跡的に金貨が10枚ある」
「はっ……なんで他人にそこまですんだよ」
「やるなら徹底的に、だよ……救うってならそこまでしなきゃだめだろ……ちょうど10人いるし1人1枚だな」
「フッ……お前頭おかしいな」
レインは笑いながらそう答える。
「お前全部金あげちまったらお前の分はどうすんだよ」
「あ」
「あ?」
「やべっ……考えてなかったわ……うーん……お釣りが多分出るはずだから、その中から少しだけ貰おう」
「救いようがねーほどバカだな」
「あ……あのー」
ドアが開く。ドアを開けたのはさっきユキトが手を握った女性だ。
「終わりました」
「お、おっけー……よしっ服を買いに行こう」
◇
そしてユキト達は服屋に行って服を買い揃えた。ユキトもちゃっかり異世界っぽい服を購入。その後はみんなが住む家を探し、いいところが見つかった。どうやら10人で一緒に暮らすらしい。ここでレインは大事な用事があるとどっかに行ってしまった。流石に付き合わせすぎたし、しょうがない。
「本当にありがとうございます……これ残ったお金です」
「いやいやいらないよ」
「え……いやダメです……受け取ってください」
「いやいいって……10人で暮らすとなれば色々大変でしょ? 俺お金にあんま困ってないし(レインとかに助けてもらってたからだけど)」
「……このご恩は一生忘れません」
「あ……ありがとう」
その女性は嬉しさのあまり涙を流していた。ユキトは感謝されることに慣れていなかった。だから対応に困る。
「あの……私……セシリアって言います」
さっき手を握った女性がそう言い放つ。するとみんなが一斉に名前を言い始めた。
「えっーと……セシリア、トーマス、コルトン、ゴードン、ブランドン、ルーク、オーブリー、マドレーヌ、マケイラ、ステラ……ね……覚えた」
「あのー……あなたのお名前をお聞きしてもよろしいですか?」
「俺? あー俺はミサカユキト……よろしく」
「よろしくお願いしますユキト様」
みんながユキトのことを様付けで呼ぶ。ユキトは傲慢かもしれないがこう呼ばれるのは嫌だった。平等でいたかったからだ。
「様はやめてくれ……普通にユキトでいいよ……あとタメ口で頼む」
「え……そ、それは無理です」
「普通になんつーかみんなと友達みたいな感じになりたいんだよ……そ、そっちが嫌だったら全然いんだけどさ」
ユキトは豆腐メンタルである。ここまでして嫌われるはずはないのに、嫌われているんじゃないかとか考えてしまう男である。これを察したのが黒髪の男に蹴られていた男の子ルークだ。
「よろしく! ユキトお兄ちゃん!」
「お! お兄ちゃんときたか……いいぞよろしくな! ルーク……怪我大丈夫か?」
「うん! お兄ちゃんのおかげで大丈夫!」
「よかった」
ユキトは孤児院でお兄ちゃんと呼ばれまくっていたので、年下の男にお兄ちゃんと呼ばれるのは慣れていた。ユキトはあの時、体を張ってよかったと心の底から思った。
遅くなってしまい申し訳ありません。
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