第10話「ルーグの名物」
「あ……ごめん……レイン」
静寂が場を支配する。立場が逆で、衝突したのがユキトなら痛みで叫びながら地面を転げているだろう。それぐらい勢いよく衝突した。
「なん…でだ……」
「え?」
「なんで外に出てんだ」
「え……それは……」
ユキトはそういえばレインにも外に出るなと念を押されたということを思い出す。ここで発言を間違えたら、また壁とハグするはめになるかもしれない。脳をフル回転させる。
「ギルドに用事があって……」
安直な答え。脳をフル回転させる意味などなかった。
「お前冒険家なのか?」
「いやこれからなろうとしてる」
「適性試験か……今年の申し込みは今日までだったか」
「え? ちょっと待って今日まで?」
「あぁ」
「それ遅れたら次いつ?」
「一年後」
「……急いでギルドに行くぞ!」
思わず生意気な発言をしてまう。レインの目が痛い。だが今日の申し込み日に間に合わない=一年間無職ということになる。それだけは避けねば。
「あのーできれば……場所教えてもらってもいいですか!」
「……あ」
「あざす!」
レインはそっぽを向き歩き始めた。
ユキトは、ついていけばいいってことか? と理解しついていくことにした。
外に出てからもレインは後ろを振り向くことなくただまっすぐと歩き続ける。ユキトは少し離れて後を追う。ユキトはギルドに着いた時、後ろに俺がいなかったらどんな反応するんだろう……という意味のない妄想をする。するとレインは急にこっちを振り向いた。咄嗟に身構える。
「ここ」
レインは指をさしながらそう言い放つ。その方向を見るといかにもギルドっぽい見た目の建築物があった。宿から5分と経たない場所だ。
「おーありがとう! レイン」
「まぁ俺も用事あるし」
「そっか」
レインがギルドのドアを開ける。それに乗じてユキトもギルド内に入る。するとそこは外とは別世界。うるささで。ガヤガヤガヤガヤっといった感じだ。人がとにかく多い。
ギルド内に居酒屋みたいなものがあり、笑い声、怒号色々なものが飛び交っている。2人はそこを無視し、受付に向かい歩いていく。
受付は三つあり、3人の姉妹が一つずつ請け負っている。その3人の顔は驚くほど似ている。違いは髪型と色ぐらいだろう。2人は真ん中の受付へと向かう。
「ギルド長はいるか?」
「あ! レインさんじゃないですか! お帰りになられていたんですね」
「あ? お前誰だ」
「えー? ルリですよ! ほら! ルーグの名物。ギルド受付嬢3人姉妹の次女のルリです! 何回もお会いしていますよ?」
「あー知らん」
「そ……そんな……ギ、ギルド長ならあちらに……」
「どーも」
レインはルリがさした方角に歩いていく。ルリは悲壮な表情をしている。ユキトは話しかけるのを躊躇する。
「ご用件は?」
「え?」
「ご用件は?」
レインに対してと態度がまるで違う。まぁそんなもんだろうとユキトは心を落ち着かせる。
「冒険家になりたくて……」
「あ……じゃあこちらの紙を埋めて提出してください」
「ありがとうございます」
ユキトは紙を受け取った。そこで重大な問題が発生した。それは文字が全く読めないということである。
「話通じるなら文字も読めるようにしとけよ!」
とユキトは小声で世界に語りかけた。ユキトは受付から離れイスに座る。紙を再度見るが驚くほど読むことができない。
「どうしよ」
「お困りのようだね」
「その声はまさか! レーギルさん! まさかあなたは……」
「文字……読めるよ」
「神様、仏様、レーギル様ありがとうございます」
「苦しゅうない」
これからを考えると文字が読めると読めないでは雲泥の差がある。だからこのような頭のおかしい行動も謎のテンションで取れてしまうのだ。レーギルの活躍により申し込み用紙を埋めることに成功。無事受付に提出した。
「はい……大丈夫です。エントリーありがとうございます。試験は明後日になります。試験の内容はその日の発表となります」
「明後日……」
「はい。何か問題でも?」
「いえ……大丈夫です」
明日服とかなんか色々買おう……そうユキトは心に決めた。
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