第六十一話 ケンジの作戦
「ポチッー!受けとってぇぇッーー!!」
『ケン……!』
俺はケンジが投げたそれを目でとらえ、受け取るため走る。
ケンジが必死な思いで投げたのだ。それなのにここで受け取らないわけにもいかないでしょ?従獣魔としては。
「ウィル、止めるんだ!」
『……行かせない!』
「ガォッ!!」とウィルは俺に立ちはだかり、パンチを繰り出す。だが、俺はボールのように身を丸くしウィルの股をくぐり抜ける。
ギルもすぐにケンジが何か投げたと気づき、ケンジが投げたものを潰そうと、持っていた剣に雷を纏わせ槍へと形を変形させ天に向かって投げつける。
雷属性魔法(大)――!
「雷を纏うし槍よ、的を射て……雷光の槍ッ!」
『やべぇ…!』
それと同時に俺はケンジが必死に投げた何かをキャッチするため大きく飛び跳ねる―――!
『届けぇ!』
そしてギルが投げた雷の槍がぶつかり、爆風が巻き起こる。
「なっ…!!」
『俺の攻撃があるにも関わらず自ら飛び込んでいった…!』
スライムが取った行動に魔法を投げつけたギル自身も驚いていた。
「そんな……!ポチィッ!!」
ケンジは叫んだ。
俺の体はぽとりと地面と落ちる。
『……ウィルたちの勝ち』
ふふん♪と得意気な笑みを浮かべるウィル。ギルも勝負あったかとフッと安堵の溜息をつく。だが……雷に打たれたはずのものがうにょうにょと波を打つように動き出した。
『いったた……!』
まるで下敷きを触ろうとした時にバッチと静電気で手をはねられたような感じだったな~。俺、あれ嫌いなんだけど……。
何とか俺は破壊される前に自分の体を盾にしケンジが投げてくれた物を受け取ることができた。
けど、見た目より青年の雷は思ったほど痛くなかったからよかった。
「ポチ……!はぁ~、よかったっ……!」
ケンジは安堵の声を上げる中、敵チームであるギルもウィルは信じられない光景に圧倒されていた。
『……!!うそ……アイツ、ギルの魔法が効いてない…ッ!?』
「なっ…!?俺の魔法をまともに喰らっても立っていられるなんて…!」
二人共も俺がまさか立ち上がってくるなんて予想もしてなかったのか驚愕していた。
『あのスライムは一体なんなんだ…!?』とギルは俺を凝視す一方、俺はそんなこと気にせずケンジが投げてきた物を確認する。
『ん…?これは……』
ケンジが投げてきたものはマーリンのところで買った魔法道具の一つ、『臭い消し玉』だった。
こんなの持ってきてたのか……ケンの奴。
『でも、これで俺に一体どうしろと……?』
マーリンからの説明によると煙が出ると一定周囲の匂いを消す力があるという品物であったが結局一回もまだ使ったことがなくお蔵入りとなっていた。
それを確かに俺は昔ケンジにこれがどういうものかを説明したことはあった。
だが、何故ケンジがこれを俺に渡してきたか意図が全くわからなかった。
『よそ見をするなぁ!』
「ガォウッ!!」
『うおっ!』
ウィルは不機嫌そうな声で俺に猫パンチを繰り出してくる。俺は咄嗟に攻撃を避けた。
『まだ倒れてないんだったら、今度こそ倒してやる…!』
「グルルルゥゥ……!」
唸り声を上げ俺と対峙してくるウィル。
『ウィルの鼻がある限り、お前はウィルから逃げられない…!!』
そして、俺はそんなウィルの言葉を聞いてピンッ!とあることを閃いた。
『そっか……!そういうことか……』
何となくケンジがこれをくれたわけがわかった。俺はひっそりと心の中でほくそ笑んだ。
さぁ、こっからが本番だ……!




