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第二十一話 (閑話)日本食ロス

 あれから5日経ち、ケンジも今はもう森のモンスターたちとも遊べるぐらいにすっかり元気になった。不思議なことに森のモンスターたちもケンジにはすぐに懐いた。


 ケンジはモンスターに好かれる素質があるのかもしれない。

 いつもの俺なら可愛いモンスターたちと小さな子供のケンジが仲良く遊ぶ姿を見て心が癒されるのだが、俺は今ある深刻な状況に陥っていた。


 『米食べたい、味噌汁食べたい…』


 俺は激しい日本食ロスに陥っていた。もはや禁断症状に近いこの症状……。この世界にはどうやら日本食に必要不可欠な味噌も醤油もないらしい。


 取り合えず、前の買い物でパンと米などの主食や野菜などと、質は悪いが小麦粉、砂糖、塩、料理用の酒などの調味料は買い揃えることはできた。


 だが、日本食における肝心の醤油と味噌はなかった。


 「はぁ……」


 あー、食べれないと思うと余計食べたくなる。

 あっちの世界では毎日俺は朝は味噌汁に脂が乗った塩鮭に沢庵に艶やかな炊きたての白米を食べていた。


 まさか、異世界に来てチートも授かったのにこんなところで食文化という壁にぶち当たるとは……。


 俺は少し疲れて眠ることにした。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「……殿、氷室殿!!」

 「……っん?」


 どこかでみたようなこの空間…ここは? 俺がそう思っていると懐かしい顔が出てくる。


 「やっと通じた!氷室殿!起きてくだされ!!」


 おっ、この憎らしいほどのイケメンぷりはあのドジッ子イケメン神さまじゃないか。


 「えっと新しい世界での名はポチ殿でしたよね。今回は随分と可愛いらしい名前になられて!」

 「やめろ」


 ニコニコというイケメン神さま。俺はまだこの名前にいまいち納得してないし、それにイケメンが言うと余計腹立つから。


 「で、俺死んだわけじゃないのになんでここにいるんだ?」

 「いや、あの後、無事で異世界生活をエンジョイできてるかと是非ご感想を聞きたくてポチ殿の精神だけお呼びしました」


 暇か、神さま。


 俺は冷ややかな目で神様を見る。あ、ていうか俺すっかり忘れてたけど神さまに言いたいことがあったんだった。


 「そうだ、神さま。俺なんで転生後の姿がスライムなわけなんですか?」


 もうスライムの体が馴染み過ぎてて既に疑問にすら思わなくなっていた。いやー、慣れって怖い怖い。


 「えっ? スライム?? なんのことですか?」

 「……へっ?」


 なんのこっちゃらみたいな顔しているイケメン神様。

 まさか、こいつ……。


 「神さま~?」


 ニコニコと笑顔だが目が笑ってない俺がイケメンの神様に詰め寄る。だらだらとイケメン神さまは額から汗を流す。


 「あ、あれ~? 私、また何かミスっちゃいましたか……?いた、痛いです! ポチ殿!!」


 こいつは一度ならず二度までも。

 俺はイケメンの神様の頭を両手で押し込むようにぐりぐりする。


 「止めてぇー!」と叫ぶ神様を華麗に無視(スルー)し、俺はこの神様をどう料理してくれようかと考える。

 「煮るか、焼くか……いや、茹でやろうか?」と悪い笑みをしながら俺がぼそりと呟くと神様は「す、すいません! お詫びにまた何か二個ほどスキルあげますから!だから、許して~!!」と叫ぶ。


 「えっ! 本当!! じゃあ、発酵となんかこう、純度が悪いものを高くできるスキルとか用意できる!?」


 現金な俺はすぐに手をぱっと止め、イケメン神様に頼み込む。


 「はぁ、はぁ…っ! で、できます!!」


 「いたた…!」と頭を押さえるイケメン神様。


 「よ、要するに【発酵】と【精製】のスキルが欲しいと?」

 「うん! 聞いてくれよ、神様!! あそこの異世界に醤油と味噌もないし、それにこの前村でパンを買ったんだけどそれが石のように硬かったんだよ!」


 この前村で購入したパンが死ぬほど硬くパサパサして酸っぱかった。口に入れた瞬間、俺は南米の戦争で食べていたと言われる保存食用の死ぬほど硬いパン、堅パンの話しを思い出した。


 なんとかスープにつけ柔らかくして食べられるレベルにはなったが正直もう出来たら二度と食べたくない。

 発酵のスキルさえあれば味噌も醤油も作れるしパンだって作り放題だ!


 「確かにあまりあそこの世界はあまり食文化の発展していないようですね…。分かりました!」


 イケメンの神様は「では、ポチ殿。私の目の前へ」と俺を前に立たせると魔法で手に光の杖を取り出す。ようやく神様らしい顔で「いきますよ!」と真剣な面持ちで俺に向かって振り翳すと呪文を詠唱する。


 「熾光と浄化に宿りし聖霊よ…! 我、正義を司る大天使『ミカエル』が命ず! かの者に力と祝福を授けたまえ――!」

 「えっ!? ミカエル!??」


 み、ミカエルってあのよく聖書とかにも出てくる熾天使ミカエル様のこと!?

 強い光と風が俺を優しく包み込む。すると、いつものようにピコンッと俺の頭に『ポチは【発酵】と【精製】を覚えた』と言う文字が出てきた。


 「それでは、ポチ殿!私の用事は大方済んだので、また何かありましたらお呼びしますねぇ~」

 「えっ! ちょ、まっ……!」

 「お元気で~!」


 俺が色々言う前に勝手に通信を切ってしまうイケメン神様。途端に意識が遠くなる。


 ――俺の話しを最後までちゃんと聞けーーッ!!


 俺の叫びは届かず、精神を強制的に元の世界へと戻される。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 「はっ!」


 目を開けると元いた場所にいた。自身の【ステータス】のスキルの部分を確認してみると確かに【発酵】と【精製】が増えていた。

 しかし、あのドジッ子イケメン神様の正体がゲームとかにも出てくる偉大な大天使ミカエル様だったとは……。


 「マジかよ……」


 なんか、あの天使また呼ぶとか言ってたし。まだまだ問題を起こしてくれそう。俺はそう考えただけで、頭と胃が痛くなった。

次回はいよいよ日本食!

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