第十五話 異世界での初バトル
さてさて……。あいつらを一泡吹かせるためにも、まず戦う相手のモンスター情報ぐらい頭の中に入れておこうかね?
俺はスキル【鑑定】を使った。これがあると物のレア度や相手のステータスなどの情報を調べることができる便利なスキルである。俺は主に薬草や茸など食べられるものかそうではないかを調べるために使っていたのたが、戦闘に使うのはこれが初めてだ。
俺は早速悪ガキ三人組の従獣魔を調べた。まずのティプという子供の従獣魔を調べた。
《モンスターNo.3赤蜥蜴》
*Lv 10 *名前 ベロア
HP 181/181
SP 56/56
攻撃力 81
防御力 32
姿は蜥蜴というかイグアナに似ており、サイズは普通のイグアナより少し大きい。赤く分厚い皮膚に爬虫類のようなギョロリした琥珀色の瞳が目の前にいる獲物を捕らえたのか二つに裂けた舌をちらりと見せ舌舐めずりをする。
ほうほう、見た目的はこいつが一番強そうだな。だがまぁ、よくRPGとかに序盤に出てきそうな雰囲気のモンスターだな。後の二人のモンスターもそんな感じだった。
そして同じく、背中に小さな鳥のような羽をつけた色が鮮やかな蛇とまだ小さく可愛らしい玩具の騎士が俺に立ちはだかる。
《モンスターNo.10飛毒蛇》
*Lv 8 *名前 ガラ
HP 169/169
SP 55/55
攻撃力 73
防御力 24
《モンスターNo.7赤ちゃん騎士》
*Lv 9 *名前 ナイト
HP 172/172
SP 49/49
攻撃力 54
防御力 45
この三匹は完全に俺のことを格下だと思っているのか取り囲みティプの従獣魔、赤蜥蜴は自慢の大口を大きく広げ挑発をしてくる。
まったく、飼い主がこうだと従獣魔もこうなるのかね? はぁー、やだやだ。
俺は異世界が抱える現代の子供と従獣魔の教育の現場にひっそりと溜息をつく。子供が悪いことをしているなら大人がそれをちゃんと叱ってやらなきゃらない。無論、主が間違ったことに力を使おうとしているのにそれを制止せず、寧ろ力を貸そうとする従獣魔も同様である。
――さて、この自分たちの立場を勘違いしている従獣魔たちにそろそろ教えてやろうかねぇ? 本当の上はどっちかってやつを!
俺は自分にかけていたスキル【隠密】を解くと同時に直ぐに俺から溢れ出す気配にやられたのか従獣魔たちの体はガダカダと震え上がらせ始めた……。俺は従獣魔たちの顔を覗いてみると従獣魔の顔色は完全に青褪めっていた。
従獣魔たちは恐怖で体が動かず「おい、どうしたんだよ!」「はやくやっちゃえ!」という自分たちの主の命令など最早、耳に入ってこなかった。
絶対的な力の前では地べたに這いつくばり恐怖に体を震わせ、大人しく絶望が立ち去ってくれることを願うことしか出来なかった。
主に比べ、まだこの従獣魔たちの方が賢いようだな……。
直ぐに己の立場を理解し、自分たちが重大な勘違いしていたことに気付いた。
その額には面白いぐらいに冷や汗が大量に吹き出しており、まるでどこかで見たギャグ漫画みたいだなと俺は呑気思い出す。先程の威勢の良さは何処へやら。
ここでおじさんの俺の悪い癖が出る。従獣魔たちに聞こえるよう突然大きな声で『わぁっ!』と軽く悪戯に近い感じで驚かせるつもりでやったつもりだったのだが……。
バタン、ビタン! っと俺の周りを囲っていた従獣魔たちが次々と気絶していった。
『ありゃま』
やり過ぎたな、こりゃ。
まだまだ従獣魔としての日が浅く、経験のない幼い従獣魔たちには俺の『威嚇』は少々刺激が強すぎたのか、三匹共に白目を剥き口から泡を吐いていた。中には失禁している従獣魔もいる。
でも、俺ちょっと驚かせただけだぞぉ……?
「あーっ! 俺たちの従獣魔が!」
「な、なんなんだ! あのスライム……!!」
「くそっ!」
そういうと自分たちの気絶した従獣魔たちを運び、村に逃げ帰る悪ガキたち。ケンジは目を輝かせていた。
「凄いよ! ポチッ!! 三人分の従獣魔をたった一匹で倒しちゃうなんて! ポチって強いんだね!」
『まぁな』
さて、家に帰るか。俺たちは今度こそ森にある家に帰った。
でも、初バトルが威嚇で終わりってどうなのかな?異世界的にさ。