第十四話 悪ガキ再登場!!
『ゴホン! 非常に不本意だが、もう決まってしまったものは仕方がない。じゃ、今度は俺が少年の名前をつけてやる』
「うん!」
っと言っても森にいるモンスターたちの名前も見ての通り、どうやら俺は冷静に自己分析した結果――あまりネーミングセンスがある方ではない。
俺があいつにあげられる名前があるとしたら……。あれしかないな。
『よし、今日からお前はヒムラ・ケンジだ!』
俺は生前の名を少年にあげることにした。こいつになら授けてもいいと思ったからである。
「ヒムラ・ケンジ? 変わった名前だね?」
『これは昔、俺が使ってた名前なんだ』
大切に使ってくれよなと俺が言うと嬉しそうに「うん!」と返事をするケンジ。
『よし、ケン。俺の家に帰るぞ』
なんか自分の名前を呼び捨てで呼ぶのも変な感じがしたので、俺は“ケン”と呼ぶことにした。
「うん。ねぇ?ポチのお家ってどこにあるの?」
『ちょっと歩いた森の中にある』
「モンスター、怖くない?」
『全然! 森のモンスターはむしろ村の人間より皆優しくていい奴らだぞ』
えっへん!と何故か俺が自慢気に語ると「そうなんだ」とケンジは素直に話しを聞いてくれる。
こいつはやっぱりいい奴だな。
俺は特に誰かの下につくつもりは微塵もなかったが、従獣魔になるなら主をケンジを選んで良かったと思う。俺の力なんて知られたら世の中、悪用しようとする奴の方が圧倒的に多いからな。悲しいけども。
森の方に行こうと俺たちが足を向けたその時、「おい!」とどこかで聞いたことのある声が俺たちを止める。嫌な予感、後ろを振り返ってみると例の悪ガキ三人組がいた。
しかも、ご親切に自分たちの従獣魔も今回連れてきている。
「やっぱり!あれやったのお前だろ!」
「え、えっ? なんのこと?」
「惚けんな! お前がその従獣魔に命令させて、俺たちに変な液体かけたんだろ!」
あっ、ヤバい。どうやら、こいつはケンジが命令させて俺にやらせたと思い込んでるらしい。いーや、まいったな。俺が喋って説明するわけにもいかないし……。
俺がそう悩んでいるとも知らず話しはどんどんと先へ進む。
「お前、従獣魔いねぇとか下らねぇ嘘つきやがって!」
「でも、ティプ君。アイツの従獣魔見ろよ、雑魚モンスターのスライムだぜ?」
ふむ、あの偉そうな悪ガキAはティプという名らしい。
「本当だぁ~! 捕獲ランクFの雑魚じゃん! 俺たちの従獣魔で楽勝に倒せるよ」
『ハハハハハ!!』と後ろの二人は何が可笑しいのか高笑っている。
「おい、捨てられっ子。俺たちの従獣魔と戦えよ」
「でも、僕戦うなんて……」
「なんだよ、逃げんのかよ」
『いいじゃないか、ケン。受けよう、この勝負』
そう言ったのは俺だった。勿論、俺の声が聞こえるのはケンジだけなのでぎょっとした目でケンジは俺を見て囁くように話しかけてくる。
「な、何言ってるの……!? 相手は三人分の従獣魔で、しかもポチはその、スライムじゃないか……! 絶対かないっこないよ!」
『いいから、お前の従獣魔を信じろよ』
俺はやる気満々で青い体を弾まし、悪ガキたちの前に出てやった。
さて―――異世界での初バトルだ!
次は初バトルです。