第五話「母の叫び(歓喜)-2」
あけおめです。
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2017/02/11
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急いで地上に出た。
日差しに目を細めながら、母さんを探す。部屋を見回すと、ドアの隙間から母の姿が見えた。
「かーさん」
「え…リディル…!?」
話しかけると、なぜか目を見開かれた。俺は首をかしげる。
「リディル…どこから出てきて…?」
呆然と呟かれたその言葉は、俺の耳に入ることはなかった。
「かーさん、どうしてさけばれたのですか?」
俺が問うと、そうだ、と何か思い出したような顔になり、続けて母はにっこりと俺に笑いかけて言った。
「そうそう、リディル! とっても良いことがあったのよ!」
「ちょっと母さん…あまり動き回らないでよ」
いつの間にか、姉が近くにいた。いや、ただ単に気が付かなかっただけだろう。母親が一人ではしゃいでいるのは、ちょっと…。
騎士団の仕事は、今はお休みだと、彼女が三日前に帰ってきてそう言った。もちろんその日はパーティだった。
「あのね、今度、ヒルが少しだけ仕事を休めることになって、旅行に行くことになったのよ!」
思わず目を見開いた。
父さんの仕事がどんなものなのかは知らないけど、よく忙しいって言ってたから、それなりに大変な仕事のはずだ。
「ほんとうですか? たのしみです」
俺がこう言ったのは、この世界に興味を持っていて、いつか外の世界を見てみたいと思っていたというのもある。
が、本当の理由は、最近父さんが忙しく、母さんが少し落ち込んでいたからだった。
あんまり構ってもらえないとこうなると最近わかってきた。
ちょとでも元気になってもらいたかったから、明るい知らせは助かる。
「よかったですね、かーさん」
笑顔でそう言っておく。俺も嬉しいしな。
「…」
どこからか視線が飛んでくる。
その方向を見ると、姉がじっと、俺のことを見ていた。
「!」
すぐに、姉は視線を外す。
思わず、ぶるりと震えてしまう。
だって、その視線は、疑っている目だったから。前世で嫌いだったものの一つでもある。
いや、『嫌い』ではなく、『恐怖の対象』なのだろう。
何を、疑うのかは問題じゃない。疑われるのがもう問題だ。
……あれ、言っている意味わかんなくなってきた。
姉の所業に半ば呆然としていると、目の前に母さんの手が伸びてきていた。
思わずそちら、母さんの方向を向く。
「…ぐ」
「! ああっ、ごめんね!」
母さんにぎゅっとされ、呻いてしまう。意外と力が強い。
「うふふ、うふふふっ」
俺を離した母さんが立ち上がり、笑いながら歩いて行った。
途中で、がんっとどこかをぶつけた母さん。いくらなんでも喜びすぎじゃないかなあ?
「だから、落ち着いてってば…」
姉が溜息をついて、母さんを追いかける。
姉の動き回るな、とは、どうやらそういうことらしい。
姉の意味りげな目線を気にしつつも、俺は旅行の妄想を始めた。
◆◇◆◇
びゅううっと、強い風が吹き、髪とドレスがバサバサと音をたてる。
「…怜人」
そう呟いた金髪の少女は、空を見上げた。
彼女の長い髪の毛が揺れる。
空は雲一つない快晴で、少女の心をそのまま表しているようだった。
「元気でいてね」
少女は微笑んだ。
少女の名は、アリスト・テレスィア・マリアーゼ。
マリアーゼ王国第一王女であり、後に勇者リディル・レインハルト率いる勇者パーティの魔法使いになる少女である。
話がまとまらない。。。