第一章以前の現実 パート4
第四の旅「僕の横にあるもの」
「何故俺が付いて来なくちゃ行けないんだ」
無事風咲に確保されてしまった瑛君は、田んぼ道を僕らと共に神に見放されたかのような表情で歩いていた。
「まぁまぁ良いじゃないの、どうせ友達もいなくて暇だったでしょ?」
「暇じゃない、俺には勉強っていう大事な存在がいるんだ」
彼は誇らしげに鞄から英単語帳を取り出す。
「そんなん、もう燃えるゴミに入れちまったわ」
隼人は道中で買ったから揚げを食べながら、とても嫌そうに言った。
「隼人、瑛君は真剣なんだからその顔やめなよ」
「なんだ隼人、お前もいい友達がちゃんといるんじゃないか」
瑛くんは少しだけ元気な顔になった。
彼は見たまんまの天才であり、秀才。学年一位というありえない数字を全てのテストで叩き出すだけでなく、全国でも二桁内には余裕でランクインしている。所謂僕とは住む世界が違い人間だ。
そんな彼が何故風咲に巻き込まれこんな所にいるのかは疑問で仕方ない。風咲も学年五本に軽々と入ってくるので、そこら辺で面識があるのかもしれないが、隼人と仲が良いのは謎だ。だって髪はちゃんと整えているというか、ぞんざいにはしていないものの、黒髪だし、ちゃんと好感が持てる見た目だ。
「皆、仲が良いんだね」
そう言ったのは、そう、明日見さんだ。
「明日見、その発言は誤りがあるぞ」
瑛君は眼鏡をクイッとする。
「そうそう、愛は分かってるねぇ」
「瑛は照れ屋なだけだから気にすんなよ」
そんな彼の言葉を無視するように、隼人も風咲も無理に仲が良いという事で押し通すみたいだ。いや、それって可哀想じゃない?
「へぇ、導衆君って照れ屋なんだ!何だかちょっと意外かも」
あぁ、彼女は嘘に気づかないらしい。
「いや、だから誤りがあると…」
この日常離れしたメンツの中で唯一明日見さんだけが心の救いと思ったのだが、彼女も知名度は段違いだった。まず雰囲気が違う。彼らにもう溶け込んでいる。
雰囲気は多分容姿によるものだろう。多分155cmもいかない身長に似合うボブカットに加え、目が大きく整った可愛らしい顔出し。スタイルも、多分悪くはなく、笑顔の破壊力は抜群といって良い。
(何だ、僕だけが凡人じゃないか)
僕は何も取り得がないことから、心のどこかで拗ねつつも、置いてかれまいとこの四人との会話を楽しんだ。
祖父の家までは後少しだ。