出会い
ジージージージージージー…
蝉達は短い人生を精一杯生きようと精一杯鳴く。
そんな蝉の鳴き声に余計暑さを感じる。
縁側に座り、クーラーのない居間で、入道雲の流れる真っ青な空を汗を流しながらただ見つめていた。
この家には「僕」一人で住んでいる。
今年の春から騒がしい都会から逃げるようにこの田舎にやってきた。
夢を叶えるために東京の大学に通い、その夢を叶える努力はしたつもりだった。同期は就職していく中、自分の夢は叶わず、お金を稼ぐためアルバイトを点々とする生活を送っていた。
東京にいる理由はもはやなかった。
騒々しい電車の音、立ち並ぶ高いビル、ただ人だけが流れていく騒がしい場所。
疲れた「僕」は貯金を崩して、田舎の安い一軒家を探し、ここににやってきた。
少ない荷物をキャリーケース1つと大きめのボストンバッグを連れて。
ここに来てからというもの、ここは異世界なんじゃないかと思うくらいに、東京にいる時に比べて時間がとてもゆっくり進んでいる気がする。
先の見えない不安と焦りから開放されたような気分だ。今日も特に何をするわけでもなくぼー…としている。まだ家具の揃いきっていない生活感のない部屋は、やはり少し広く感じる。
風呂にでも入ろうか…。
「僕」は縁側から暑さで、重くなった体を動かした。
にゃーにゃー
何処からともなく猫の鳴き声が聞こえた。
キョロキョロ辺りを見回してみる。
無駄に広く作られた庭の茂みが、少しガサガサ動く。ジッと見つめるとシュッと白い子猫が飛び出してきた。「僕」がジッと見つめると、子猫も同じようにジッと見つめてきた。
「僕」は食べていたおつまみの中から小魚を探し、ヒョイっと子猫の目の前に落とした。子猫はビクッとして、そのまま逃げるかと思いきや、ソロソロと小魚に近づいた。
その様子を少しドキドキしながら見守っていると、子猫が小魚を食べた。
その姿を見ただけでなんだか幸福感が生まれた。
続く
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
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