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過去の怪我、そして眼鏡。その続き

作者: 原田うらん

直接付き合ってほしいだとか好きだと告白をしてしまったら、会話をしなかった期間の私たちを埋めるのが困難に感じられて、とりあえず幼馴染に戻ってもらうことにした。


一息つき机の上に置かれたプレゼントの中からまだ開けていないものを手に取り開けていいか尋ねた。

ああ、と間の抜けた声が返ってくるとすぐにセロテープを剥がし包装紙を取る。

正方形の透明なプラスチックの箱の中に薄紫色をしたトレーシングペーパー程の薄紙がくしゃくしゃの状態で敷き詰められ、その紙のクッションの上にリボンの形をした小さなピアスがちょこんと乗っていた。


可愛い、と感情が漏れ声になって発せられる。


「ピアス穴が開いている事を知っていたの?」


校則では禁止のピアス穴を開けていると知っているのは仲のいい友達だけのはずだけれど。


「いつか開けると思っただけだよ」


少しの間の後そう告げられたのが本当かはわからないけれど、そういう事にしておこう。

ピアスを取り出し身につけ、満面の笑みを浮かべお礼を言うと顔を背けながらぎこちなく返事をされた。

10年あまり話していなかった間にできた距離感を縮めるのに時間がかかるのは仕方のないことなのかもしれない。

これは縮めたいと望むだけで実行しなかった罰でもあるのかもしれない。


「その眼鏡に似合う格好良い男になってもらわなくちゃあげた甲斐がないってもんよ」


冗談めかして言うと雅人は顔に戸惑いを浮かべる。

仕方のないことだろう。

お世辞にも陰気ではないと言い難い彼は、きっと流行やそういうものに無縁で生きてきたのだから。

私と仲が良いままだったら違っていたのかもしれない。そ

の未来を、私は見てみたかった。


「期待はしていないけれどね」


ううん、と曖昧な返事をする彼に本当に期待をしないことにした。



次の週の月曜日、学校に着くなり廊下で智子と話していると階段側からざわつきが聞こえ顔を向ける。


角から現れたのは――雅人だ。


髪を切り顔がはっきり見え清潔感あふれる彼は、プレゼントしたばかりの眼鏡をかけている。

それはやはりよく似合っていると我ながら思いながら目で追い続ける。

彼を見た女の子は言う、

「格好良い」と。


彼の変化はここから始まる。

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