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2話


辿り着いたギルド、看板を見ると字が読めてしまった。‥‥ってか、日本語?いや、文字は蚯蚓で見えて居るけど、頭では日本語として理解している。後で理由を誰かに聞いてみよう。女神も言っていたし、誰かは答えてくれる筈。


赤煉瓦造りの建物で、入り口が1つ。総合ギルドと書いてあり、コッソリ覗くと受付に男性が1人居るだけで、悲しいくらいに閑古鳥が激しく鳴いて居る。



「あの、すみません」


「はーい、こんにちわー。3日振りのお客さんだねぇー。異世界の服着てるとかちょーお金持ちぃ」


「‥‥‥無一文です。ここで身分証の発行が出来ると聞いたのですが‥」


「? 出来るよー。でも身元保証人必要だよー?後、異世界の人なら健康保険証か、免許証の提示でだぁいじょーぶ。まぁこれは言わなきゃいけない規則だから許してねー?」


「‥‥免許証なら」


「へ?」



受付の兄ちゃんはそれはもう、どうしようも無い位にチャラかった。俳優やアイドルでも通用するイケメンだが、ゆるゆるな喋り方でチャラい。チャラ男。大事な事は何回でも言うぞ。


保険証か免許証、これは地球でも身元を簡単に証明する物だからな。免許証は顔写真もあるから簡単だ。不携帯は許さん。そう言えば財布に入れて居たのを思い出し、メッセンジャーバックをごそごそ漁る。


お、財布あった。財布の中身も無事、と。未だに驚いて固まって居るチャラ男がいる受付の上に、財布から取り出した免許証を提示。まだ使い物にならなそうな雰囲気。どうするか、と悩んで居ればギルド奥から小さな少女が出て来た。



「レオ、さっさと仕事するのです。このヒヨが居るからにはレオの昼行灯は許さないのですよ!」


「っ痛、あ?あぁ!するよ、するする!お、お預かりー。作業に時間掛かるから座っててねぇー」


「あ、はい」



俺を一瞥するなり、少女はチャラ男の側に寄ると何かをしたらしく、痛がってたけどそのお陰で漸く対応して貰えそうだ。慌てて俺の免許証を受け取り、何か箱の様な物に入れて居た。


説明を受けるに、魔法道具(通称、魔具)と言うヤツらしい。解析したりする、詳しくは良く分からん。時間が掛かる様なので、お金が欲しい旨と同時に財布から一円玉を取り出す。



「い、異世界の硬貨なのです!一円なのです!」



食い付いたのは先程の少女。名前をヒヨリと言い、8歳。父親が異世界の出身で、寝物語に話して貰った異世界の事が大好きらしい。生粋の異世界マニア。特に地球、繊細な技術力を持つ日本が大好きらしい。


次いでにチャラ男はレオナルド。歳は25。ヒヨリの両親と家族ぐるみの付き合いをして居て、暫く預かって居るのだと言う。いつもはギルドの受付はして無いらしい。ぶっちゃけると結構どうでも良い。



「ふぁぁぁ。この世界には無い繊細な技術っ!この世界には無い鉱物で作られた硬貨っ!ヒヨの目は真実だと判断するのです」


「地球、日本出身で、これは一円玉だねー。良し、後はカード作るだけだよぉ。免許証は返すね、色々あるから席外すよー」



魔具から免許証を取り出して渡されたので、いそいそと財布にしまう。レオナルド‥、レオは一円玉と何かが書かれた紙の様な物を持ち、ヒヨが現れた扉の奥へと消えて行く。


扉が閉まりきるその瞬間までヒヨの視線は一円玉に釘付けで、最早執念を感じる。キラキラ表情を輝かせた可愛らしい女の子、だけどな。目だけを見ると歴戦を潜り抜けたハンターだ。



「ヒヨの目は真偽眼なのです。真実の祝福を頂いたので、ヒヨの目を誤魔化すのはエミエール様を誤魔化すのと同じなのです!」


「な、成程‥‥」



その後もヒヨの熱弁は終わりを知らない所か、逆にもっと熱くなれよ!状態。勢いに若干引き気味になりつつ、世界の事なども話して居るので大事そうな場所はちゃんと聞いておこう。


ここは俺にとって異世界のラ・エミエール。女神エミエールが創った世界。来る時に話した人な?世界の中心には生命の大樹と言う、生きとし生けるもの全てが還る大樹があるらしい。


生命の大樹にはエミエールの遺骸が埋め込まれており、愛しい世界の安寧の為に日夜奮闘してるらしい。それはもう、ブラック企業も真っ青な働きっぷりの様だと。‥‥これ位かな。他は専門用語が盛り沢山使われて居て全く良く分からなかったので、右から左に聞き流しておいた。



「ヒヨちゃん、これ」


「ちっ、違う異世界の硬貨なのです!」



暴走して良くは分からなかったけど、世界についてちょっとは分かったので財布から五円玉を取り出してヒヨの前に置く。すると彼女は瞬時に反応し、叫ぶと瞬きも惜しむ程眺め出す。



「これはヒヨちゃんにあげよ。話し楽しかったし、貰ってくれる?」


「はい遠慮な‥‥、え?!えぇぇぇえっ!凄い価値なのですよ?」


「俺には五円の価値しか無いけどね。それに、ヒヨちゃんならこれを大事にしてくれそうだし」


「た、確かにヒヨは売ったりしないのです。でも、でもぉ‥‥」


「涎出てるよ。‥‥五円玉には謂れがあって、色々な人とのご縁がありますように‥‥って聖域にいる神様へ捧げるんだ。また会える様に、御守りとして受け取って欲しいな」



あ、あれ?これ、結構恥ずかしい事言ってない?そんなのは後の祭り、とても大切そうに五円玉を両手で包み込む様に持つと、可愛らしい笑みを浮かべる。


喜んで貰えて何よりだ。ヒヨが幸せそうに笑うもんだから、俺の方までほっこりとした気分になる。そしてレオが手にトレーを持って帰って来た。中身は名刺を一回り大きくしたカード、色とりどりの石、南京錠の様な形をした物。



「お待たせー。ちょっとお金の計算に手間取っちゃってさー‥、ん?どうしたのヒヨヒヨ?」


「へ、変な風にヒヨの名前を呼ばないで欲しいのです!レオには何でも無いのですよ。しっし!」


「そー?えーと、このカードは総合ギルドカードになるよー。身分証明だけじゃなくてぇ、冒険者ギルドと商人ギルドに入れちゃいましたー。事後承諾ねー」


「え?」


「でもぉ、素材の買取りupとか大きい冒険者ギルドは格安で宿提供してるし、損は無いんだよー」


「‥‥まぁ、そうか」



名刺みたいなのはギルドカードだったのか。免許証に酷似して居る。顔写真の部分が空白だったので首を捻ると、そこに親指の指紋を付けて終了だそうだ。


名前、年齢、出身地、加護、祝福、冒険者ギルド在籍、商人ギルド在籍‥‥、その隣に迷宮ギルドって言うのがあったが、それは特殊な条件を満たさないと在籍する事は出来無いらしい。その条件を満たすのはかなり難しい様で、万年在籍者不足らしい。知るか。



「‥‥この、女神の加護って言うのは?」


「この世界に来る時、女神サマーの声聞いたっしょー?その時に与えてくれた筈だよぉ。言語と文字の自動翻訳してくれる加護だね。異世界人しか持って無いレアな加護だねぇー」


「ふむ、成程な。じゃあ、レオは加護無いのか?」


「そうだよー。まぁこの世界の住人ってだけで、女神サマーに気に掛けて貰えるからねぇ、貰ってるも同然かなー?」



言語と文字の自動翻訳か、通訳になったら安定収入が見込めるか?やらないけど、多分。ってか本当に女神は働き者だ、本当にこの世界が大好きなんだな。存在だけが崇められる日本とは大違い‥、ってか一緒にしちゃいけないか。


祝福は協会で聞くから良いとして、次は色とりどりの石と南京錠か?これが一円玉の値段だとして‥、通貨価値がさっぱり分からないからどうとも言えない。さっさと聞こう。



「この石、通貨だよな?」


「そうだよー。通貨は日本と同じ1、5、10、50ってなっててー、単位は(ミュ)。可愛いでしょー?んー、物価は大体日本の半分だったかなぁ」



それはまた随分と可愛らしい通貨単位で。通貨の色別での価値を教えて貰いつつ、一円玉の収入は800万M。一般家庭が4年働かなくても良い値段らしく、銀行に行くのを勧められた。終わったら直ぐ行こう。


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