第五章④
「ああ、しまった。ついうっかり、道の溝に、扉を破って開けるための鉈を落としてしまった」
「その声……アルメンダリスさんですか?」
「クラインさん、なるべく声を落としていただけるとありがたいです。」
「ああ、済みません」
声色と少し癖のある喋り方からして、顔は見えないが確かに上にいる人物はアルメンダリスのようだ。
これは本当に助かった。アルメンダリスが来てくれた、という事だけでも精神的にとても安堵できるが、何処まで賢いのか、鉈まで投げ入れてくれた。
大方、この鉈で扉を壊せという事なのだろう。それ以外に、今この場所と状況で鉈を使う方法など考えつかないし、それしかない。
「良かった。昼にクラインさんのところへ向かわせた伝達係が、クラインさんが宿にも船にも居ないと言うので、まさかと思って来てみて……正解でした」
「本当にありがとうございます。ですが、いったい何を伝えて下さるおつもりだったのでしょうか」
アルメンダリスが、海賊に見つかってしまうかもしれないと言う危険を冒してまで、本人自らこちらに出向いてまでクラインに伝えたいこととは一体。
海賊の危険についてはもう充分相互に理解しているから言うまでもないとすると、貨幣の相場か何かだろうか。いや、こんな時に貨幣の相場の話をするとはとても思えない。とすれば、ここから脱出する方法――でも教えてくれるのだろうか。
「はい、実は、海賊の頭領が一般市民に紛れ込んで、ある作戦を練っていると密偵から情報が入りまして」
「それは確かな情報ですか?」
情報に求められるのはいつだって正確さと早さだ。早くても嘘であれば意味が無いし、時には……今回のクラインの失態の様に、自らをむしばむ結果を生むことにもつながる。そして、正確でも遅ければ既に情報が広まりすぎ、効果が薄れてしまう。
その点、ブレヌフはかなり優秀な情報屋だと言える。しかし、今回は情報は確かでも、受け取る側の考えが至っていなかった。供給者と受け手。その両方が賢く、有能で会って初めてその情報は生きて、受け手に利益をもたらすと言うのに。
「確かも何も、貴方が今ここで捕まっている。この事実がその情報が確かな事だと証明してくれています」
自分が捕まったことが、海賊の頭領が一般市民に紛れ込んである作戦を企てていると言う情報の証拠。その言葉が意味する事柄は一つ。
「つまり、私を騙して捕まえたリベルト・ウルバーノは海賊だった……と」
「やはり」
アルメンダリスは、ほう、と興味深そうなため息をつくと、次いで言った。
一年が、遅いようで早く過ぎていきました。
たこ焼き、おいしかったです。
年内には、あと小さいのが一つくらい投稿できればな・・・
と思とります。




