第四章㉕
事務机の下から取り出した上質な羊皮紙には、金貨や銀貨の交換比率がこまごまと書かれており、ウルバーノはそれに目を通すと、クラインに確認を要請した。銀貨四枚で金貨一枚。これも、ウルバーノの言った通りの交換比率だ。
「では……海賊金で十三万九千百二十五枚になります。……いやはや、大金ですねえ」
「お褒め頂き、ありがとうございます」
海賊金は一枚一枚が親指の爪程の金の粒だから、一枚当たりの重さは大した重さではない。だが、これが十三万枚を超えると、その重さも相当なものになる。今のところは羊皮紙に書かれた数字の羅列だが、クラインが契約に賛同すれば、この文字は瞬く間に額面通りの金貨になる。そう考えれば、その数字にさえも重みを感じられた。
「これに比べれば、リモーネ金貨十五枚なんて、大した金額ではないでしょう?」
「ええ。なんでも、この金額と比べてしまってはどんな大金でも色褪せてしまいます」
そう言いながらクラインは懐から綺麗に輝く金貨を十枚取出し、ウルバーノのしわに覆われた手に乗せた。普通の商取引なら、金貨十枚も出せば大抵の商品は満足するまで購入することができる程の金額だ。
「確かに本物のリモーネ金貨のようですね」
「私が偽物を出すと思われましたか?」
「偽物を手渡されたことも、幾度となくありましたから。まあ、今となっては見ただけで分かりますがね」
貨幣が、見ただけで本物か偽物かが分かる人間なんて、そう多くはいない。尤も、たいていの偽造貨幣は子供でも違いが分かるが、ごく少数だけ、まるで本物か、それ以上に出来の良いものが出回っていることが少なくない。それさえもウルバーノは見極められると言い切った。
そして、ウルバーノは立ったまま一枚の紙を引き出しから取出し、事務机の上に置いた。その紙は立派に金で縁取られており、金額の項と名前の欄、そして最も重要な判子の場所が空白になっていた。
ウルバーノは机の上に置かれていたインク壺に羽ペンの先を少し浸すと、自分の名前と金塊の値段、つまり海賊金を金塊として売った時の金額、リモーネ銀貨にして五十五万六千五百枚、金貨では千百十三枚にも上る金額を書いた。
「では、ここに失礼ですがご署名と商会の判を」
「ええ、でもその前に少し確認させてください」
クラインはインクが渇ききっていない紙を手に取らず、机の上に置いたまま、食い入るようにしてその紙を注意深く凝視した。何せ、この紙が金貨千百枚を失う事にも、手に入れることにもなるのだから、いつもより慎重に見ざるを得ない。上から下へと一単語も見落とすまいと視界を通らせ、遂に最後の部分、自分の名前と商会の判を押す部分に入った。
ここに判を押して名前を書けば、ウルバーノの署名とクラインの署名、商会の判の三役がそろい、この紙が金貨千枚以上の価値を持つ金塊へと変貌する。
剣道の大会に行ってきました。
最近、はまっている本があります。




