第四章㉒
「お嬢さん、不思議に思われますか」
「ええ……。海賊達は略奪の限りを尽くすと思っているもので」
普通の商人ならば、当然の疑問だろう。海賊が恐れられ、各国の海軍が総出で海賊討伐に当たるのは、襲撃を食らった沿岸都市に、甚大な犠牲者と被害が出るだけでなく、その年や村とつながる交易路一帯をも襲撃するからである。それは国家にとって、甚大な被害が出るからだ。さらに酷い場合には川を遡って内陸の都市も襲撃することがある。
事実、大昔に存在したというヴァイキングの勢力が、潮の満ち引きを利用して大河を遡り、北のフランドル王国の王都まで攻め入った例もある。
襲撃を受けた都市や村は海賊の容赦ない虐殺と略奪の嵐にさらされ、残るものは死にかけの老人と、燃えて灰になった建物の残骸、そして死体しか残らない。
この町はなぜか破壊されている場所とほぼ無傷の場所に分かれていたが、いずれにせよ海賊は国家にとってマイナスの要素しか生み出さないため、どこの国の海軍も総出で海賊討伐に軍事費を割いているのだ。その一方で、海賊はいつどこに出現するかもわからない。だから実際は襲撃に遭うよりもその防衛費の出費が国家運営にとって大きな損失となっている。
「海賊たちも、それほど馬鹿ではありません。そんなことをするのは、すぐに滅びる馬鹿な連中です」
「というと」
ライサは若干、疑いの目でウルバーノを見ていた。確かに、少し疑問に思う話ではある。
「本当に賢い海賊は、あえて略奪をほどほどにして置き、その都市を支配下に置いて利益を吸収する、「生かさず殺さず」と言った具合に統治するんですよ。全く、支配される側としてはたまったもんじゃありません」
「何故、そんなにお詳しいのですか?」
ライサは、やや不思議そうに目を細めたが、相手に不愉快になるような表情はいしていない。そういった細かい配慮のできるのが、ライサの長所だ。自分も、見習うべきところだ。
ウルバーノは、ははは、と低い笑い声をあげてライサの質問に快く答えた。
「確かに、それでは私がもしかすると海賊どもと手を組んでいて、貴方達を騙そうとしているように思われても仕方ないですな。……違いますよ。単に、あの夜の酒場に通い続けていると、海賊どもの情報が耳に入るんです」
街商人が情報収集の為に毎日決まった酒場に通い続け、どんな噂や話題が飛び交っているかを把握しておくのはごく当たり前のことだ。今この町が海賊に支配されているとなれば、海賊に関しての情報が入って来るのも当然と言える。
「……そういう事でしたか。疑ってしまい、申し訳ありませんでした」
「いえいえ。間違いは、誰にでもあるものです」
ライサはウルバーノの言う事に納得がいき、深々と頭を下げて疑っていたことを詫びると、ウルバーノは表情一つ変えず、にこやかな笑顔のまま応じた。わざわざ謝るようなことでもないと思うが、そこは礼儀正しさが長所のライサだ。自分に少しでも非があれば、すぐに謝り、非礼を詫びる。
テスト終わりました。
化学がヤバそうです。




