第四章⑯
「ウルバーノは、「明日の昼までに考えておいてくれ」と俺に半日の猶予をくれた。それまでに俺はウルバーノにこの取引を受けるか受けないかを決めないといけない」
「まあ、貴方がその取引に失敗して旅を続けられないようであれば……」
「待て、まだ取引に失敗するだなんて言ってはいないぞ」
ネウはある程度、馬鈴薯の熱が冷めたのを確認すると、薄汚れた土色の皮の中にまるで黄金の様に眩く光って湯気を放つ芋にかぶりついた。その時のネウの顔は、まさに満足と言ったら、の代名詞のような表情で、口をもごもごと動かして咀嚼し始めた。確かにクラインも何回か北の貧しい土地に馬鈴薯を運んだことがあるが、ここまで嬉しそうな顔をしながら食った奴はネウを除いてほかにいない。
少し腹が空いているので、クラインにはそれがネウの表情と合わさってなおさらおいしそうに見える。
「冗談よ。でもね、提案を受けるようだったら、これだけ覚えておくといいわあ」
「なんだ」
ネウは、口からほうっと白い湯気を出しながらさっさと一つ目の馬鈴薯を食べ終えて火のすっかり消えた竃の中からもう一つの芋を取出し、また綺麗に二つに割ってそのうちの一つを口に含んだ。
「余計な事を口にしない事」
「ああ」
ネウが一体どんなことを言うのかと身構えていただけに、その短い文章にとんでもない裏があるのではないかと疑ってしまう。だが、表面上だけだったとしても、ウルバーノと交渉する際には、それさえ口にしなければネウの検閲に引っかからないというわけだ。なら、安心できる。
「物は試しというし、ウルバーノの言うとおりあんな簡単な方法で大金を手にできるなら、悪い話じゃあない。乗ってみようか」
「そうですか」
ライサは、クラインの決断に笑顔を以て答えた。クラインの決断に満足してくれたようだ。
万が一、騙された時にはネウに命令してウルバーノを脅すかして損を帳消しにしてもらうか、或いは賠償金として莫大な金をもらうのもありかもしれない。
しかしネウはさして面白くなさそうに夜の星空を見上げ、ぽつりとつぶやいた。
文化祭大変ですね。




