第四章⑬
ネウは、少し考えるような難しい顔をしてクラインに反論した。
「どうしてよ。両替商ができることって言ったって、せいぜい異なる通貨を両替することくらいでしょう?」
「ええ、そうですね」
ライサも、ネウの反論に応える。
ネウの反論は尤もなことだ。両替商は名前の通り、異なる通貨の両替をする商人の事だ。両替商が貨幣の両替以外にできることは少ない。
「リモーネ銀貨は銅貨二十枚、って相場は変わらないし、銀貨を銅貨に、銅貨を銀貨に、っていう両替を何回繰り返したって銀貨は増えないわよ? そんなので増えたら、錬金術もいい所よ」
「それは、「同じ勢力の勢力下で行った場合」だろう?」
「同じ勢力下……じゃあ、「海賊たちの勢力下」と、「西方諸国の勢力下」の違い?」
そう、ネウの言う通り、同じ領土内ではいくら貨幣を両替しても増えはしない。同じ両替所でそんなことを何回も続けていれば、相手の両替商が嫌な顔を向けてくるのは目に見えている。
クラインはこほん、と咳払いをしてネウの疑問に答える素振りを見せた。ここは、ネウに一つ、自分が経験を積んだ商人であることを見せつけられるいい機会だ。
「まず、ここに四枚のリモーネ銀貨がある」
「まあ、あるわね」
クラインは、ペンを置き、机の上に四枚のリモーネ銀貨を一列に並べた。ネウとライサはそれを食い入るように眺めた。
「リモーネ銀貨四枚は、海賊銀に両替すると、海賊銀十二枚になる」
「でも、価値は同じなのよね?」
「ああ、海賊銀とそのほかの貨幣は重さで測るから、必ずとも等しいとは限らないが、価値はほぼ等しい」
海賊銀は、リモーネ銀貨などの銀貨を勝手に鋳造して円形に固めた粗悪な銀貨のため、重さを量って両替する。クラインは海賊銀十二枚を並べ、次にまばゆく光る海賊金を取り出した。
「次に、両替してできた海賊銀十二枚を、海賊金に換金する。これも重さで測るために多少の誤差はあるが、価値は変わらない」
「銀貨を金貨に換金するのね」
「すると、海賊の占領地での金と銀の比価は一対四だから、海賊金三枚になる。海賊金は純金で出来ているために、金塊と同じ価値を持つ」
海賊金は、銀の含有率の違うさまざまな銀貨を鋳造して作った粗悪な海賊銀とは違い、ほぼ純金で出来ている。いわば金塊だ。金塊であるために、海賊の占領地から持ち出してもばれることはない。
海賊銀の場合は、わざわざどの海賊がこの銀を作ったか、と、ご丁寧にもくっきり記してあるので、海賊の占領地以外では使えない。何故海賊が銀を粗悪に、金を純度の高いものにするのかと言う問いは、銀は海賊同士の小さな取引に、金は大きな取引や平時の貿易、敵対勢力の買収などに使うから、という答えで返すことができる。
合宿から何とか生きて帰ってきました。




