第四章②
出費が多くても、空腹や、安く不味い料理で機嫌を悪くされたり、言葉巧みな演技と話術でとんでもない罠にはめたりさせられるよりは、幾分ましというものだ。けれどすでに時遅し。ネウがクラインに空腹を訴えたときに早く気付いていれば、もう少し出費は抑えられただろうか。
商館の静けさとは裏腹に、酒場ではどこの街と何一つ変わらない騒がしさが保たれていた。
いくつもの海を越えてきた勇敢な、あるいはいくつもの街を襲撃した野蛮な海賊たちの馬鹿騒ぎが酒場に響く中、ネウはよくその小さい体の中に入るものだ、とクラインがつくづく呆れる様な量の肉料理を口いっぱいにほおばっていた。ライサが豆のスープと野菜の多い豚肉のソテーで食事をあっさりと済ませているのだから、なおさらその量が対比で多く見えた。
もし、ネウが普通の町娘の格好をしていて、その見た目の清楚さと可憐さにうっかり哀れな男が目を付けたなら、その男が一夜にして破産してしまうことはこの食いっぷりを見ればわかる。ネウを自分に懐かそうと思うのなら、それこそ湯水のように金をつぎ込まなければならない。
経済、実用的に考えるなら、食費も少なく、かつ料理もできるライサの方が遥かにお勧めだ。尤も、誰にもライサを譲り渡すつもりはないが。
「ゆっくり食え。早く食ったところで料理は増えないぞ」
「あら、そうかしら?」
ネウがいったん、次から次へとテーブルに伸びていた手を休めたかと思うと瞬時にその手を高く挙げ、口の中に詰め込んでいた肉を飲み込んでから周囲の喧騒に負けるとも劣らない大声を発した。
「鶏肉の香草焼き、大盛りをもう一つお願い!」
「あいよお、お嬢ちゃん! 食いっぷりがいいねえ!」
ネウの注文が入り、カウンターの向こう側にいた酒場の店主はネウに向けて厳つい顔でニッコリと笑みを向けた。
どこの店や酒場に行っても、金回りが良く品物を多く注文する客はそれなりに良い待遇をされる。まさに料理を食う量と店員の態度は比例すると言ってもいい。
たった数十分の間に大盛りの肉料理を五品も頼めば、どんな嫌な客だろうと自然に店員の態度も良くなるというものだ。これは海賊にしても同じことが言える。人間、自分に被害が及ばなかったらどんな大悪党にでも料理は景気よく出すものだ。
毎日テストで時間が無いです…




